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Partner light  作者: しんる
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Partner light5

安定とは

あまりにもろいもの

平和になれば

すぐに誰かが崩す

 

Partner light #5


誰とも言えぬ

誰かが

何もかも

崩し去ってしまう

強力な力は

忌み嫌われ

強力な力によって

崩され去る


「きゃぁぁぁぁ」

誰かの悲鳴が賑やかな夜の森に響く。女の子の声だった。

「いってみましょう」

あんずと真珠がそっちに向かって走り出す。

「森を抜けるんじゃなかったのかよ!」

走り出した二人を止めるように俺は声をかけたが。

「誰かが魔物に襲われているかもしれないのですよ!」

そう言って止まらなかった。しかたねえ、ついてくか。俺は二人の跡を追いかけすぐに追いついた。

「先に行ってください」

「へいへい」

仕方なく俺は先を急ぐ。

ふたりからもうだいぶ離れたと思う。

「こっちであってんだよな?」

かなり不安になって俺はぼそりとつぶやいた。だって違うとこだったりするとしゃれになんね―じゃん。

「!」

俺は剣のグリップに手をかけ後ろを振り返る。何かがいた気がした。

耳をすます。聞こえてきたのは殺戮の音と下卑た声だった。

その方向に向かって俺は静かに、できるだけ音を立てないように歩み寄った。

見えた。

そこにいたのは何人かの男とそして耳の長い華奢な体つきの少女だった。

「覚悟しな、お嬢ちゃん」

男のひとりがそう言いながら手にした刃物をちらつかせた。そして少女は震える。やばいな。

俺は声をかける決心をした。

「その人数は大人気無いんじゃねえか」

俺の存在に気がつき男たちは俺のいるはずの場所を見た。しかしそこにはもう俺はいない。俺がいたのはエルフの少女の隣となっていた。

俺はクレイモアを抜く。それを見て男たちは俺に向かいなおす。

「兄ちゃん、こういう事に顔突っ込まないほうが良いぜ」

「そうだぜ。ま、もう遅いがな」

そして男たちは下卑た笑いを発する。

「雑魚ゴロツキがいい気になってるといたい目に会うぜ」

その俺の言葉を聞いて男たちは笑うことをやめ俺に向かって刃物を突き出す。

「雑魚だと!てめえ、殺してやる」

相手の刃物を剣で受け止めずつ俺は藍の髪を持つ少女に言う。

「そこを絶対動くなよ」

少女はこくんと頷いた

俺の剣が相手を少しだけ傷つけていく。心を持つ人間相手にはこれで十分なのだ。なぜなら

「・・・これは・・・心をきる剣!」

そう。俺が使う必殺技は心を切り相手の心理を揺るがし、殺戮をさせない剣なのだ。

「しばらく眠ってな」

男たちはごろごろと倒れていった。

「あなたは?」

おびえた目で少女は俺を見た。俺はしゃがみこみ少女に目線を会わせた。

「ソラス・エイプリル。敵になるつもりは無いよ」

それで信じてもらえるとは思わないが、俺はできるだけやさしく言った。

少女は眠っている男たちを見る。

「死んだの?」

少女は俺の服の裾をつかんで、おびえた目で言った。

「死んだわけじゃないよ。無理やり眠らしたんだ」

「よかった」

そのまま少女は目を閉じ、すとんと眠ってしまった。俺は少女をおぶり真珠とあんずがくるであろう方へと歩き出した。


ふたりとはなんとか合流できた。

「君名前は?」

「レンフォード。レンって呼んでください」

そいつは一向に俺の側を離れようとしなかった。ん?れんふぉーど?

「まさか男の子か?」

「はい。そうですけど?」

後ろのふたりを振り返る。二人も驚いていた。

俺達はそのレンの村へと向かっていた。最初に村が襲われたらしい。そしてそこにいた長老が殺されたとたん魔物達が強暴になったらしい。その長老が結界をはっていたという事らしい。

村の前まではこれた。ただ中に入るのは難しそうだった。

「そんな・・・」

正直、これほどまでになっているとは思わなかった。村を覆うのは生きたもののいないことをあらわす静けさと、魔物達の残した瘴気と、死人の残した瘴気と怨念だった。

俺は村へと走り出そうとするレンを止めた。

「放してください。・・・はなして!」

俺は首を横に振った。入ればそこに待つのは死か、狂気である。

「いやだ・・・」

レンは泣いていた。おれは何も言えなかった。多分、ダブらせてしまったのだ。俺の知るほかの少年を。その少年が泣き果てた末に出した答えの冷たさを。その道だけは選んでほしくない。

俺はレンをぎゅっと抱きしめていた。

「俺が選ばせない」

小さくつぶやいた俺の声にレンは気がつかなかったのかもしれない。

空が少し明るくなっているのが確認できた。


それは唐突に始まった

突然村は騒がしくなった

そして伝ってきた最初の恐ろしいことは

――長老が殺された――

皆になんとも言えない緊張が広がっていく

戦えるものは皆戦った

ここを渡すわけにはいかないのだ

一族の奥義が見つかってしまうから

世界を混沌の海へとまねき入れる

‘あれ’が

大人達の緊張は

最年少であった7歳にしかならないレンにも

掴み取れた

大人達は

子供を守ろうとし

必死になって戦った

そして

あいつらが来た


「やつらは、力を封じたぼく達を、怨んでいたんです」

レンは泣きながら少しずつ話していく。何があったのかを思い出すのはつらいことであった。

「だから総攻撃をかけたのか」

真珠の言葉にレンは頷いた。うつむいたまま、こくんと。

「ぼくは、村にいた、お姉さんと、森の外を向かって、逃げて」

その先はわかっていた。

俺達が聞いたのはその女の人の悲鳴。レンは必死になって走っていたが男たちに追いつかれて、俺がレンを助けた。その間に村は死んでしまっていたのだ。

俺はレンの肩に手を置いた。レンは俺の手を胸に持っていきそのまま泣いていた。


森の終点が見えていた。

レンが走り出す。

「ねえ、すっごく明るいよ!」

「レンは森の外に出たことが無かったのですの?」

あんずの質問にレンは頷いた。

あのあと急いで森をぬけることにしたのだ。かなり急いだのだが2日もかかってしまっている。その間にも魔物は出てきたがすぐに片付いた。

「ねえねえ、あの建物はなに?」

「あれは城壁だ。中に大きな街がある」

「まち?!」

早く行こうとしてレンは走り出そうとする。

イケナイ。

「レン。止まれ!」

「なに?」

真珠とあんずは何かおかしいと思ったのか、すぐにレンを止めた。

「・・・。誰だ!出て来い!!」

グリップに手をかけ俺が空に向かって大声で言った。

ばさばさと、鳥が羽ばたいていく。そして

「さすがですねぇ。えっと、いまは・・・ソラス・エイプリルでしたねぇ。その子は預けますよ、今は」

声だけが響いた。

俺はこの声を聞いたことがある気がした。

まだこの中の誰とも会っていない、遠い昔に。

誰だったかは

思い出せない。

いや

「思い出したくない・・・?」

いつのまにか俺はつぶやいていた。


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