Partner light4
この世界は
とてもとても不思議だ
たくさんの生き物が
必死になって
Partner light #4
一生を
一日を
一刻を
生きている
不思議な力が
満たされ
まわる
摩訶不思議なこの世
エルフだそうだ。
耳の長い、ってもウサギじゃね−ぞ。神秘的で美しい種族だそうだ。俺は合ったことねえからしらねーけど、そいつらを見たことがある奴らは口をそろえてこう言う「あれは幻だったのかもしれない」と。ん何すごいもんなら一生に一度は見てみたいじゃねえか。見る機会は
「今しかねえ!もがっ」
「ああ、そうだな。とりあえず静かにしろ」
俺が大声出したとたんに真珠が口を押さえる。
またもや俺は森の中にいる。今回は迷子ではない。この森は通り道なのだ。先ほど出てきた町から次の街まではこの森を通るしか道はなく。
そしてここは神秘的な生き物の住処だ。
もがもがと騒ごうとする俺の口を押さえたまま真珠は立ち止まる。
「真珠さん、どうかしましたの?」
あんずが振り向きながら真珠に問いかける。真珠は森の奥のほうを見ながら唇に人差し指を当てる。静かにしろ、らしい。
真珠のこういう事に対する感は結構当てになる。森で暮らしてた人ってすげー。
あんずもそのことに気付いたらしく口を閉じる。
しばらくの間そのままだった。
すっと真珠が俺の口から手を離す。
「・・・行った」
「行ったて何がだよ?」
真珠はゆっくりとさっきまで見ていたところを指す。俺とあんずもそこを見る。
「人ではない、人型のもがそこを通った」
「エルフか?!」
俺はじっとそこを見る。そこには誰もいない。
「フェアリーですの?確かにこの森にはフェアリーもいたはずですが」
真珠を見ながらあんずが言った。フェアリーを見たものは幸せな気持ちになれるらしい。見りゃよかったぜ・・・・そんなこんな考えてるとまた真珠が口を開いた。
「ちがう。ゴブリンだ」
『・・・』
ちなみにゴブリンとは醜い魔物である。
「むしろ見なくてよかったと思っていますわ・・・」
「同感だ・・・」
あんずのつぶやきに俺は答える。きっとうんざりとした声だったであろう。
「・・・おまえたちにとってはゴブリンなど雑魚だろう?」
俺たちがうんざりしているのを見ながら真珠は不思議そうに言った。
「雑魚だからこそ戦いたくねえんだよ」
あんずがこくこくと頷いているのが見えた。
ちなみにこの森には旅人が通りやすくすために魔物の力を封じる結界とやらがあるらしい。これで戦わなくてすむぜ。
「・・ああ」
真珠はぽむと手を叩き、つづける。
「最近、動物愛護団体が賑やかに動いているからか?」
「・・・あれは愛護すべき動物に見えるか?」
「ねずみですら愛護する時代であろう?そういうのも愛護しているのかもしれんぞ」
ねずみのほうが、ずっとましだって。
俺は深く溜め息をついた。それを見ながら真珠が言った言葉は
「急がんと日が暮れるぞ」
だった。
「結局もう夜じゃないですの!」
西日が入り込んでくる森はもう十分暗かった。
「街を昼から出たのが間違いだって」
きつい口調で怒っているあんずをなだめる真珠の横で俺はつぶやいた。
「そんなこといまさら言ってももう遅いぞ、四月」
「わかてるよ・・・」
もともとこの森は1日では抜けられないから途中に休憩場があるはずだったらしい。そこまでもつけず今日の日は完全に落ちたのであった。
あんずはキッと俺をにらみつける。
「・・・野宿ですの?」
「今から歩くか?」
暗い森を歩く恐ろしさはあんずも知っているだろう。ついでに俺はこの前の『魔の森』でいやと言うほど味わった。方角はいまいちわからないし、魔物は出てくるしで大変だった。魔物というやつは夜活発になり、火には寄ってこないものである。
「野宿ですか・・・」
「私は野宿が好きだぞ」
真珠はさっさと荷物おろしている。
「森育ちだからな、おまえ」
俺も荷物を下ろす。つづいてあんずも。
この世界には魔法というものが存在している。
目の前で壜から出て明るく光るものもそのひとつである。マジックアイテムと呼ばれるそれは壜に魔法がかけられており、壜の口に火を近づけると燃えつづけるという代物である。
他にも見た目よりたくさんの物が入る革袋などがある。
その火で茶を沸かし、携帯食料を食べる。このあたりの旅人はみんなそういう手を使う。
事件が起きたのは、明日の朝は早く起きるからと言って早めの時間に火をつけたまま寝て、だいぶたったときだった。
「・・・四月、あんず」
真珠が小さく俺とあんずを呼んだ。俺も気がついていた、そのかすかでしかないが確かな殺気には。
俺は抱え込んでいた剣の柄に手を伸ばした。いつも野宿のときはすぐに反応できるように剣を抱え込んだまま寝る。
殺気の持ち主が近づいてきているのがわかる。真珠は戦いに使う光を都合よく集めるための玉を、あんずは色鉛筆を、俺はクレイモアの柄をぎゅっと握る。
そして静かに立ち上がり構える。
そこに出てきたのは醜い姿をした魔物達であった。
「火を焚いているのになんで?!」
あんずが確かめるために後ろを振り返る。
その間も俺はシースから抜き放った鉄の刃を魔物達へと向ける。
「・・・新月か!」
真珠がちゃきりと光で作られた弓を構えつつ言った。
「ちぃ!暦なんて気にしてなかったぜ!」
新月の夜の魔物は危険。知っている人は少ないらしい。実際あんずはわかっていないようだった。
「新月の夜というのは魔物の力が増すとき、うかれて物を壊し、人を喰う」
「ということは・・・」
「雑魚も突っかかってくるんだよ!」
その雑魚としか思えない魔物達が俺達めがけて爪を振り下ろす。しかしそれにはあまりスピードも鋭さも無く力だけだった。俺は冷静に右によけその爪の持ち主の首を薙ぐ。
ちらりと横を見ると真珠は光の矢で、あんずは手にした緑色の色鉛筆から発せられた風によって魔物達と戦っていた。
真後ろからの拳を俺は華麗にかわす。さっきまでいた場所を黒いこぶしが通過する。そこに交わって茶色いこぶしが俺が避けたほうと逆から飛ぶ。
「みえみえだ!」
茶色いほうにも剣が届くため、確実に2匹ともの首を取れるよう集中して剣を横にふりきる。
とたん斧が横から飛んでくる。俺は身をそらしぎりぎりでよける。
「くそっ!数が多い!!」
俺ははき捨てるように言った。雑魚も多いと厄介な相手となる。
「四月!こっちだ!!」
真珠の声がする。俺は相手していた奴を切り倒し真珠の声がするほうへと走った。
「走れ」
そっちに俺が走るのを見てそこにいた真珠とあんずも走り出す。すぐに俺は追いついた。
「どうするんだ」
俺が真珠に問いかけると真珠は無言で右手をもといた場所、魔物達がうろつくほうへと差出す。
「光よ!」
真珠の右手から光球が飛び出す。それは魔物達を直撃した。
「走れ。ただの目くらましにすぎん」
俺達は走りつづける。
走りつづけた先にあったのは争った跡が大量に残る、無残な、生きた人のいない、宿であった。
「こんなになるなんて・・・」
ほうけたようにあんずがつぶやいた。
「魔物と言うのは、こんなに残酷なの?」
俺の服の袖をつかんであんずはつぶやくように言った。
「違う・・・」
「真珠?」
「奴らは浮かれているのだ」
「何に浮かれているのですの?」
「それは・・・」
真珠はわからないというように首を振る。
「そう言えば・・・」
俺が言葉を発し、真珠とあんずがこっちを見る。
「この森は旅人が通るために魔物の力を押さえてたんじゃねえか?」
「ああ、結界を使っていたらしいが」
不思議そうな顔で真珠は俺に答える。
「その結界のおかげで楽に通り抜けできるのですわよね」
あんずの問いに真珠は頷いていた。
「その結界がもしも崩れたら?」
「まさか・・・」
ふたりも気付いたらしい。
「結界が壊され、魔物達が本当の力を取り戻した・・・?」
「だから浮かれていたのか!」
重い空気が流れた。
「一刻も早くこの森を抜けたほうが良いですわ」
あんずが歩き出そうとする。
そしてすぐに。
「きゃぁぁぁ」
だれかの叫び声を聞いた。




