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Partner light  作者: しんる
3/20

Partner light3

大きな街

大きな二つの勢力

どちらが正しいのかなど

誰も答える術を持たない


Partner light #3


何が正しいかなど

個人が決めること

決め兼ねたものには

他人による勧誘の的

人に流されるな自分を高く持て

それは

正しいのか

正しくないのか


「はーはっはっは」

俺は勝ち誇ったように笑った。後ろで小さな声で俺の悪口を言った真珠も今日は許してやるぜ。はっはっはー笑いが止まれねえ!!

でっかい街に入った俺らは酒場に直行したのである、もちろん俺の意見によって。そこで博打をしかけられたのだ。もちろん乗らない俺様じゃねえぜ。そしてもちろん大勝利中。

「俺に勝とーなんざ100年早いぜ!」

「くそう。コイツまじめにつええぞ」

ギャラリーが賑やかになってきたぜ

「もう一勝負っ」「旅人の方おやめください!!」

後ろから大きな少女の声がかかった。同時にさっきまで博打をしていた兄ちゃんが逃げていく。

「ここでの博打は『くればあ教』がゆるしません」

「くればあ?なんだよそら?」

俺は首だけまわしてきいた。白い服の少女は楽しそうに答える。

「『くればあ教』とは人々の生活は質素で緩やかに平等に進むべきだという考え方です。神は人の上に人を作りません。私たちが神を信じた分だけ神は私たちを救ってくれます。がんばって働いた分だけ幸せをくれます。神は必ず見返りをくれるのです。もっと質素にまじめに生きましょう。さあ、賭博なんかやめて」

・・・俺の中でコイツは変な奴と決定しました。なんかおかしくねえか?

「『神を信じた分だけ救ってくれる』神様ってのは損なやくだねえ」

「そんなことありません。神はひとの道を切り開いてくれるのですよ」

その諭すような言い方はきらいや。

「『神は見返りをくれる』神自信は見返りを貰ってないじゃん」

「・・・」

お、だまった。

「いくぞ真珠、あんず。こんなとこ、もういる意味がねえからな」

「そうだな」「そうね」

ドアノブに手をかける。

「まってください!」

さっきの少女が大声で言う。

「私では役不足でした!教祖様に会ってください!どうか!」

俺たち3人は顔を見合わせた。そして同時にあきらめたようにため息をついた。

「わかったよ。教祖様とやらのところに連れっててくれ」

教会は街の外れだった。そこまで歩かされた。これでつまらん話だったとしたら暴れてやろう。

「教祖様、お客様です」

こぎれいな教会

昔っからカミサマなんてものは信じていなかった。信じるだけで救われるはずなどないのだから。現実なんてそんなもんだ。

「神、か。いいかげんなものだな」

隣で真珠が小さくつぶやいた。

「おやおや、旅の方ではありませんか。わたしは『くればあ教』の教祖です」

肥えたおじさんが出てきて言った。何が『おやおや』だよ。

「『くればあ教』に関心を持たれたのですか?」

「いんや、そこのガキがひっぱて来たんだよ」

素直に俺は答えた。

「そうだったのですか。この子は熱心な子でね、少しやり過ぎてしまうことが多いんだよ。許してやってほしい」

そのとき俺は見た。じろりと少女を見る教祖を、見られて身をこわばらせる少女を。

「まあとにかく『くればあ教』というのは・・・・・・」

そして少女と同じ内容を話していった。

・・・

「だあー。もう夜じゃねえか〜」

外は暗闇だった。あんのじじい

「とりあえず宿に帰りましょう」

あんずが言った。真珠は賛成した、俺は、

「ちょっと用事ができたから」

そう言って逆へと歩き出した。どうも昼間のあの二人の行動と言うか対応というかが気になったのだ。

そっと教会に忍び込む。天井裏になんとか入った。音しかない世界。

「だめじゃないか、旅の方に迷惑をかけたら」

「ご・・ごめん・・なさい」

「自分ひとりで勧誘して見せなさい。この国ではそうなっているだろう」

「はうっ。ごめんなさい」

「『ガムドリンク教』の奴らに取られたらどうするんだ」

「ごっ・・ごめんなさ・・い」

教祖の声、そのあとの少女の苦しそうな声。そのやり取りがだいぶ続いた。そして教祖が去り静かになった。後に残るのは苦しそうな少女の呼吸。俺は下へ降りた。

そして無残な少女の姿を見た。その少女は笑いながら言った。

「来てくれると思っていました。そう、これが『くればあ教』の新の姿。だからどうか旅の方、北の宗教『ガムドリンク教』へ入ってくださいね」

「おまえは『ガムドリンク教』って方の信者なのか?」

「はい」

少女は哀れな姿で無邪気に笑った。

「『ガムドリンク教』の神様は人を救おうなどと考えておりません。自由できっとあなたにあう神様ですわ。北の教会に一度お越しください。まっています」

またにっこりと笑った。


「てことだったんだ」

朝食の席で昨日の晩のことを二人に話した。

「確かに何か隠しているように見えましたわね」

あんずは納得したようにうなずいた。その隣で真珠も。

「だからとりあえず北の教会に行ってみようと思う」

「わかった。面白そうだからついていくぞ」

結局三人で行動か・・・

北の教会ってのは町のはずれにあった。回りで朝から博打に興じる人がたくさんいた。そいつらを無視して俺たちは教会に入る。

「いらっしゃいませ。女の子から話は聞いておりますわ」

入ったとたん綺麗なねーちゃんが言った。

「私は『ガムドリンク教』の教祖です。ようこそ北の教会へ」

「その『ガムドリンク教』ってのはどんなんなんだ?」

「ようこそきいて下さいました。『ガムドリンク教』とは、人間が人間らしく人間臭く生きることを決まりとしています。やりたいときにやりたいことをやる、やりたくなければ何もしない。考えることに詰まってしまったら何も考えずとりあえず本能に従え。不可能なことは不可能なのだからあきらめろ。私たちの神はしつこいことがお嫌いです。だからできないことはできない、それが当たり前だと言ってくれますし、それを許してくれます。ね、自由な神様でしょう」

女がとても誇らしそうにそう言った。

「じゃあおまえらは自分にできないことはすぐにあきらめるのか?」

「そうです。無理をしてはいけません」

この言葉もまた誇らしげに言う。なんかなー

「俺はここもあわなそうだ」

「なぜですか?」

「俺はあきらめが悪いのさ。んな挫折するばっかりの人生お断りだぜ」

斜め後ろで真珠がうなずくのが見えた。おまえも賛成してくれるか。ひとりだけじゃないってなんかうれしいなあ。

「てことで、じゃあな」

それだけ言って教会を出た。

「ここは不思議な宗教がありますわね」

道を歩いてるときにあんずが言った。きちんと並んだ石畳の道。普通の街。

「俺たちの感覚がおかしいのかもしれねーぜ」

ここの人たちが普通なのか俺たちがおかしいのかなんてわかんねーよ。この街で普通なこともほかではおかしいかもしれねえ。すべてを知ってる奴なんていねーよ、たとえ神とやらでもな。

「この二つ以外に何か宗教はあるのかな」

真珠がぼそっとつぶやいた。

「ありませんぜ」

右側からの声に俺は驚いてそこにある暗い路地を見た。一人の男が顔を出している。

「ここには『くればあ教』と『ガムドリンク教』しかありませんぜ。そのどっちにも入っていない俺らは『無教徒』、裏路地の悪魔ですぜ」

かっこつけて言ったがあまりかっこよくない。本人は可哀想な事にそれに気づいていないみたいで、同じように続ける。

「俺たち『無教徒』はどちらもの裏の顔を知っていますぜ。汚い顔をね」

「例えば?」

表情を変えず真珠がきいた。

「例えば『くればあ教』、あそこの教祖は人に言えないような人間臭い事をしている。例えば『ガムドリンク教』あそこの教祖は何もあきらめず教徒から取った金で大もうけをしている」

にやりと笑いながら男は言ったが、かっこよくないって。

「そうなの。『くればあ教』の話は聞いていたけど『ガムドリンク教』の話は知らなかったですわ」

「とりあえず『無教徒』の楽園にきてくだせい。色々教えることができますから・・・」

男の後ろについてどんどん街の奥深くまで歩いていく。薄暗いし汚いし嫌いだなあココ。

「ここですぜ」

そこは簡易な教会だった。そこに男女あわせて30人ほどの人がいた。

ここまで連れてきた男が俺たちのことを紹介すると人々は例の二つの宗教の話をしていく。二人の教祖は汚い私欲のためにその宗教を作ったことがわかっていく。

そして昔はもっとたくさんの宗教があったことも。それらは吸収されたり消えていったりで、今は二つになったらしい。

俺は『無教徒』とやらに最初っから思っていた質問をふっかけた。

「おまえらはこんな暗い裏路地にしかいれないのか」

「そうだ。表に出れば二つの教徒の勧誘と迫害の嵐。ここしか私たちの居場所はない」

だそうだ。俺は決めたね。こんな街早めに出よう。こっちが腐りそうだ。

「俺は二つの宗教どちらも嫌いだ。そして表の光のある場所に立てないここも」

「確かに。ここもなんともつまらん場所だ」

「周りに流されないことは大切ですわ」

唖然とする『無宗教』の奴らそれを尻目に俺たちはここを出て行く。

どうせ俺は旅から旅の根無し草よ。

自分の居場所は自分自身で勝ち取るさ。

変な宗教に頼って自分の人生を捨てる気なんて俺にはねえぜ。

「あばよ。変な街」

「次はどこにたどり着くのか?」

真珠が聞いてきた。

「あいつらの神様じゃあ絶対にわかりっこねえな。」

当たり前のように俺にも。

だれにも

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