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Partner light  作者: しんる
20/20

Partner light 20

体を縛る

それは心さえも

縛る


Partner light #20


失ったものは

その先に

あるのだろうか

手繰り寄せたら

いや

鎖を解いて

蝶のように

飛べたら


「お兄ちゃんは召喚も使えるの?」

控室でそう声をかけてきたのはレンだった。

俺は髪留めをはずし、タオルでガシガシと髪を拭く。

「子供の頃は・・・。城の記憶と一緒にどっかいってたみたい・・。よくわかったな。」

声は戻っている。

「門が開いてたから・・・。ドラゴン系?」

召喚士であるレンは門まで感じれるのか・・・

「フレイムドラゴン。ドラゴンは得意属性しか呼び出せないと思う。」

「ぼくは7種類くらいかなあ・・。」

レンは指を折りつつ数える。

「貴方たちはそれがどれほど凄い事かわかって話をしているのかしら?」

準決勝の女。こいつが3位らしい。

「えっと・・・ぼくは召喚士ですし。」

「ドラゴンなんて上級なモノ、ほいほい召喚しないわよ。」

「ていうか、ソラスの場合は地声以外で魔法を使ってたわけだし。」

えっ?と周りが俺を見る。なんで??

「まさに化物ね。」

「なんで?確かに地声の方が使いやすいけどさ。」

覚めた目で見つめてくる女に向かって俺は反発するが・・。

「普通使えないでしょ。力がうまく入らないもん。」

レイドールが追い討ちをかけてくれた。

「お兄ちゃんの声って地声じゃなかったんだ。」

とこれはレン。

「うん。本気を出し始めたらもっと高かった。なんていうか―――」

「女みたい、だろ。」

俺の言葉に頷くレイドール。正直頷かないでほしいぞ、そこは。

「いろんな魔法に引っ張られてさ、あんま安定してねーんだよな。」

俺はコートを脱ぎ椅子にかける。服の中に入り込んだ水をぬぐう。

「それは僕も感じた。過去の魔法が解けきってないし、今も封印されてる。」

俺は無意識に左肩に手をやった。そこに刻まれたタトゥーはもうないが確実に俺を縛りつづけている。

性別すら不安定な身体、記憶の飛んだ心、自分で操れない魂。

「普通の人間じゃ、身体が押しつぶされるほどの封印がかかってる。・・・だよね?」

俺は頷く。

「小さい頃からずっとだから馴れたけどさ。今でも引きずられてる。」

「私はそんな相手に負けたのね・・・。」

女ががっくりと肩を落とす。

「仕方ないって、あのソラス・エイプリルだもん。それに・・・」

あのって何だ、と言う暇すらなかった。

「ティナ・サクラだろうし。」

「・・・

 いつ気づいた??」

唖然とする女を横目に俺はレイドールに問う。

ティナ・サクラは俺の別名だ。性別が不安定なことを使い、女の姿で用心棒をしていた時の名だ。名前が売れすぎて男の姿で生きづらくなって、ほとぼりが冷めるまで女でいた。

「声が同じだったし、左肩を押さえたし。ティナ・サクラも同じ癖があった。」

「・・・どこで会った?」

「えっとね〜」

「ちょっと待ちなさい!!!」

女が立ちあがる。

「あの、ティナ・サクラ?!!」

「さっきから“あの”ってなんだよ!」

そんな事どうでもいい、という風に女は手を振り広げる。

「あの最キョウ魔剣士ティナ・サクラ本人なの?」

俺は頷く。

「ティナは男だったの・・・?」

「いや、ティナで動いてるときは女だったんだけど・・・。」

「で、結局どっちなんですか?」

レンが笑顔で聞いてくる。正直一番断われない相手だ。

「えっと・・・、微妙・・・。」

はあ?と3人の顔が言っている。

俺は指を折りながら数える。

「うん。生まれたときはたぶん男だったんだけど、すぐに女になって・・・結局女でいるほうが長いし。

・・・そんな不審者か化け物を見るような眼で見るなよ。」

「それは無理な相談だと思うけど?」

それはひどいです、レイドール。

って言う間もなく、

「やっぱりお兄ちゃんって普通じゃないですね。」

「好きに性別を変えられるなんて、化け物決定よ。」

畳み掛けられた。

「お前ら・・・。」

なんかもう、怒る気にもなれねえ・・・。

結局、ティナの名前も有名になりすぎて今はソラスなんだから、何のために別名を使ってたのかわかんなくなっちまってるし。



「優勝、ソラス・エイプリル〜〜!!!」

中が空洞の台の上に立ち、目の前の女性にメダルをかけてもらう。

あまり勝ったことはうれしいと思っていない。

いや、時計が手に入ることが嬉しすぎて麻痺しているのかも。

赤い布を下に引いた時計が目の前に運ばれてくる。

母様の時計・・・。

手に取る。

ずっしりと重い、機械仕掛けの彼。

あの時と、同じ。



宿に戻って一人で見つめる。

蓋を開ける。

重厚で、

サクラ時計の証である、無駄のない文字盤。

そこから覗く機構部分。

美しい。

本当に。

・・・本当に。

ふと、

『ソラリスファ。』

声を思い出して。

泣きそうになってしまった。

懐かしくて。

暖かくて。

泣くのが嫌で。

腕を下げた。

時計が太ももをかする。


とたん。



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