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Partner light  作者: しんる
2/20

Partner light2

大きな草原

一面の緑が太陽に光によって輝く

青々としたそれは

ついさっきまで


Partner light#2


そこが湖だったことを

誰にも信じさせない

突如として消えた蒼

突如として現れた青

それは蜃気楼か幻か

それとも

それが事実か

もうわからない

 

「・・・・ここは・・・ここはどこなんだ〜!!」

俺の絶叫が響き渡った。

森を抜けて、高笑い女を回避し、出たところは見たこともない青々とした草原だった。

ああ、一面の緑。ふわふわだーって、そんな場合じゃねぇ。

何でこんなところに草原?!俺の記憶ではここは湖・・・

「真珠、町への行き方わかるか?」

フルフルと首を振る真珠。てことは・・・

「森を抜けても迷子のまんま?!」

俺は絶望したね。やっとあのわけわかんねー森を抜けたってーのにまた迷子かよ、オイオイ。

前方を見渡す。

皆さん、右手に見えるのが地平線でございます、ってか〜。冗談じゃねぇ!俺はちゃっちゃと町にいきてーんだよ。誰か〜俺を助けて〜。

ここまできて俺は思った。俺ってもしかして方向音痴?

いや、そんなわけねぇ。今まで俺は一人で旅をしてきたが、道に迷った記憶なんてほとんどない。覚えてないだけかもしれねーが。

とにかく。このあたりには何か変なモノがあるのかもしれない。率直に現地の人に聞いてみよう。

「おい真珠、このあたりは方向がわからなくなる魔法でもかけてあんのか?」

「しらん」

「あっさりと答えるな・・・」

現地の人に聴いてもわからんとは・・・どーする、俺。

「・・・とりあえず、歩くか・・・」

仕方ないからほとほとと歩き出す俺、の後についてくる真珠。これからどうしよう・・・

ほとほと

ほとほとほと

ほとほとほとほとほ

ああ、夕日が綺麗だ。あれに見えるは・・・

「街だ・・・」

意外なところに街。ラッキー。

「真珠、日が暮れるまでに街に入るぞ」

そう言うが早いか俺は走り出した。真珠も後ろについてくる。

でやぁぁぁぁぁぁぁぁ

「そこの門閉るのスト−プっ」

そして猛ダッシュ!!

「入国・・・希望です」

こうして何とか野宿は免れたのであった。

街に入ると真珠はすぐに宿へ向かった。俺は・・・酒場に直行だぜい!

俺のざるっぷりを見せてやらあ。

勢いよくドアを開けて

「あーーーおまえはっ」「あーーーあなたはっ」

入ったとたん俺は叫んでしまった、と同時に向こうも叫んだ。そしてまた二人同時に。

「あのときの!」

相手を指差した直後に

「お客さん、静かにしていただけませんか?」

酒場の親父に怒られた。

そこに、その舞台の上にいた女はあんず・・・本名アンジュラル・バーミリオンだった

この前のときと違う柄の着物を同じ着方をしていた。

周りからはよった親父どものはやし立てる声が聞こえる。

あんずは固まったままだった。

俺は愛想笑いをしながら酒場を後にした。そして裏路地に入る。

「ちょっとそこのあなた!」

大きな声で呼び止められた。この時間に近所迷惑だっつーの。

「なんだよ」

「あなたは・・・あのときの・・屈辱の・・・」

言葉つながってね−ぞ、あんず。無視して立ち去ろうかな〜

「責任とってよ!」

ぽろぽろなきながらあんずはいった。そんなに悪いことしたかなあ?素直に聞いてみよう。

「俺そんな悪い事したか?」

「だって・・・だってあんなことされたの始めてだったのですもの!しかもあなた・・結構カッコいいから・・・」

最初は勢いよく、最後はちょっとにごらせながら言った。そうか俺はかっこいいのか・・・やったね。それはいいけど責任なんて何しろってんだよ。

「で、どう責任とってほしいわけ?」

「あたくしの恋人になりなさい!」

・・・何言ってんだ、この女?俺が口を開こうとしたとたん。

「いいわよね、あんなことしたのですもの」

なんか反論できねえなあ。

「それは・・わかった。でもそっちの身分を教えてもらわないとな。なぜ真珠を襲ったんだ?」

まあこれだけはきかないと大きなトラブルになりそうだぜ。一応、念のため、絶対事項で最優先事項だ。まともな答えがくるといいなあ。

「あの子は・・滅するべきですわ」

「・・・なんでだよ」

「いつもそうよ。光使いが出てくるたびに世界は混沌とするわ。もっと早めに滅するべきだったのです。だけどあの森のせいでそれもできなかったわ。誰かが連れ出してくれるのを待っていたのよ。ずっと、ずっ・・・」

「ふざけるなよ・・・。」

あんずの言葉の途中で俺は怒鳴った。

「あいつが生まれてきたのが悪いのか?人が生まれてきたことに対しておまえは文句をつけるのか?」

「だってあの子は破滅をもたらすのよ!」

「それは過去の話だろう!あいつじゃない!」

「でも!」

「でも私は破滅の女神の化身だ」

俺は振り返った。そこには街明かりに照らされた光使い、パール・レフージュがいた。

「確かに私は破壊の女神の化身だ。わかっている、わかっていて森を出た。親が残してくれた結界を出た。すべて、わかっている」

俺たちに近づきながら、一歩一歩重みのある歩みで近づきながら、しっかりとした口調淡々とで言う。すべてを悟ったものの言葉は力強く重い。誰も動かさせない気迫、何も言わせない視線。金縛りにあったような時まで固めたような藍の光。冷酷な眼差し、冷たい声。

「私の一生は私が決めるのだ。もう何者にも邪魔はさせん」

声という名の空気の振動をこれほど感じるのか?それともこれは光の振動か?もう俺にはわからない、わかれない、わかってはいけない。そこは破壊の女神のテリトリー。

「何者が来ようと私はすべてをはね返す、破壊する。私は我侭な、すべての神をおとしいれた、破壊の女神の化身だ」

深緑の女は目の前の紅い女を真っ向から見据える。

紅い女は深緑の女から視線をずらそうとするがずらせない。

しばらく何も動かない時が続いた。

深緑の女がふいに笑った。意地悪くもなく声もしない。

破壊の女神の無邪気な笑い。

すべてを破壊するかのように。

ソレガカノジョノツヨサナノカ・・・


穏やかな朝

昨日の今日なのに、何だったんだあれは。

破壊の女神の話は聞いたことがある。別名デザエアーとよばれたすべてを破壊する美しき女神。そんなものは存在しないと思っていた。実際はどうなのか俺ではわからん。

わからないことをうだうだ考えるのはおれの主義じゃない。真珠が本当に破壊の女神だったとしても、くるときはくる、なるときはなる。そのときに考えよう。お気楽どうまっしぐらだー。

「よし!」

宿の腰掛けていたベッドから勢いよく立ち上がる。

窓から外が見える。こぎれいな町並みだ。なんかふつー。何にもおかしなところはない。なのに見たときにぞっくとした。いやな予感がするぜ。

そう思いながら真珠がいるだろう食堂に降りた。

「おまえ・・いるんだ」

そこで見たものは朝食と真珠とあんずだった。って変な書き方。あんずは食いもんの方じゃね−ぞ。あの着物女だよ。

「ええ、この子を殺せないなら破壊させないだけですわ。あたくしは元から破壊を止めることが目的だったのですもの。どこまでもついていきますわ」

「うへー」

おれはあからさまにいやそうな声を出しておいた。ちょっと前までのひとりで旅してたころが懐かしいぜ。

「あんずは結構良い奴だ。いっしょにいて良い」

「・・昨日あんなことがあったばっかりなのによく『イイヤツ』なんて言えるな」

「直感だ」

真珠はそれだけ答えた。コイツは結構頑固だからな。

「しゃーねぇ、トラブルだけは起こすなよ」

それだけ言っておいた。言っても無駄な気もするが。

「とりあえずこれからどうする?なんかいやな予感がするからすぐに出るつもりなんだが」

あんずが驚いた表情で俺を見た。変なこと言ったか?

「あなたも感じましたの?この自然の中の不自然を」

「なんか文章おかしいぞ」

関係のないツッコミを入れてみたが

「私も感じた。すぐ街を出るように言おうと思ったところだ」

ああ、むなし。流されちまったよ。いじけてやろうかな〜

「ということで買い物をしてすぐにここを出るぞ」

勝手に話が進んでいたのであった。

とりあえず各自買うものの分担を決め宿から出た。

街をぶらぶら歩きながら様子を見る。やっぱり何も変わったところなんてねえ。でも何かがおかしい。それがなんなのか見極めようとしっかりと見ていく。

やっぱ、なんもおかしくねえよな。しゃあない目当てのもんは買ったし、帰るか。

そのとき俺は自分の目を疑ったね。暑くもないのに陽炎がみえた。何かがおかしい、この街は。

宿の前に戻ると二人とももういた。俺はさっきから感じていた直感ですぐに離れることを決めていた。すぐに走り出しながら言った。

「すぐに、すぐに街を出るぞ!」

「え?待ちなさい〜」

あんずが何か言っていたが俺は止まらなかった。

「説明してほしい」

真珠が冷静に言った。

「なんかいやな予感がするんだ。なにかが・・・」

俺も文章になってねえな・・・。

真珠もあんずも後ろをついてくる。

街の外はまた一面の草原。街を出てもいやな感じは続く。来た方向と逆へと走る。

「つかれた・・・やすまして・・・」

途中で体力のないあんずが休憩を要求。賛成して少しの間だけ休んだ。

日が沈むころ草原が終わり茶色の土が見えた。いやな感じも消えた。

「ここで休むぞ」

言いながら振り返る。あの草原は。

湖だった、蒼の湖。俺がここにあることを知ってた湖。

「・・・」

「どうしたんだ・・あっ・・・」

真珠も気づき、続いてあんずも。

「街は・・?」

「さあな、湖の底かほかの場所か、それとも蜃気楼だったのか。もうわかんねえぜ」

「あのままいたら死んでたかもな」

真珠が言いながら湖を眺める。

蒼い湖は半分以上沈んだ夕日によって山吹色に染まっていた。

もう知る術はない。

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