Partner light 19
隠していたものは
小さく
忘れていたものは
大きかった
Partner light #19
あの日のことは
記憶の彼方だが
指先の
熱さを
思い出した
そう
見えない力
見えない心
昨日に引き続き青い髪が俺の後ろを追う。
せっかくゴム買ったのに・・・。
「やっぱり結んで良いか?」
「許しませんわ。」
いつもと違う服、いつもと違う髪型。
「・・・はあ。」
歩くたび黒のロングコートが広がる。
「そんな服持っていたのだな。」
「2、3年前くらい前はこれ着てたんだけどさ。魔法防御は高いんだけど、物理防御とか動きやすさとか考えると・・。」
黒のロングコート、紺のハイネックセーター、そして紺のジーンズはふとめの革のベルトで締めてある。
青い髪は上のほうだけ束ねて蝶の形の髪留めで止めていた。
・・・自分で言ってて寒いが、俗に言うお嬢様結びだ。
「こんな予定じゃなかったのに・・。」
「あんないい加減に留めているよりましだと思うがな。」
朝、髪留めを、面倒なので簡単に留めていたのだが、あんずの猛反対に遭い結びなおされた。
城から持ち出した数少ない持ち物のひとつで、魔法防御、魔法強化等の力がある。
「これ、どれくらい値のはるものですかね・・?ぼくの故郷でも見ないほどの逸品です・・。」
俺の頭に止まる蝶を見ながら後ろを歩くレンが言う。
「さあなあ、あの頃は正味お金とか気にしてなかったし。」
「いい生活ですわね。」
あんずが蝶に触れながらいやみを言ってくれた。
闘技場の門が見える。
「とりあえず、いってくる。」
俺は真珠にモントヴァンを預ける。
「とりあえず勝って来い。」
ポン、と背中をたたかれた。
ごつごつした岩肌が周りを囲む。
採石場さながらの闘技場に俺とレイドールが立つ。
『これから、決勝戦が始まります!!なんという組み合わせでしょう、―――』
軽快なアナウンスが続く。
人も今までにないほど多い。
どういう手で攻めようか・・・。
ふと、顔を上げる。
優勝商品が見える。
お袋の―母様の時計。
めまい――『炎の化身よ』『渦巻く怒りよ』『召喚―』――言葉の渦。
そうだ。子供の頃は召喚も使えたっけ・・・。
唐突に思い出していた。
使い方も。
何を呼び出したかも。
場面は相変わらず消えているが、ひとつ思い出した・・・。
『さあ、最後の戦いを始めましょう!!!』
いっけね!
俺は我に返った。そして構える。
銅鑼の音。
「<炎よ我友よ、我ソラリスファに力をかしたまえ><ブレイズ・シフトソード>」
炎の剣を手に俺はレイドールの出方を見る。
ばしゅ、と風の矢が頬の真横を通る。かわすことくらい想定内だろう。
俺はその場から横に数歩飛び岩陰に入る。
間。
身を潜めていた岩の上に飛び乗る。
すぐに来た風の矢を炎の剣で散らし、そのまま弓を引く体勢を取る。
「<フレイムアクト・シフトアロー>」
先ほど風の矢が放たれたところに放つ。
炎の小爆発を秘めた矢はかき消されたが、俺の手には最初と同じ剣が収まっていた。
目的の場所で横に凪ぐ。
岩を溶かしながら切断する。そして次の手ごたえの前に剣は霧散した。
「弱い魔法じゃないと消せないんじゃなかったのかよ?」
「あれ、うそ。気づいてるでしょ?」
軽めな声、その主レイドールが姿を現す。
俺は数歩下がる。
「慰謝料請求すんぞ、っと<エクスプロージョン>!」
「<アトマスピア>!」
この組み合わせはヤバイ!大量の炎に大量の空気だ!!
俺はすぐにできるだけその場を離れる。
予想通りの大爆発。俺は両手に気力を集め、壁を作る。
お互い吹き飛ばされつつ体制を整える。
「<フレイムアロー>」「<エアアロー>」
爆発、相殺。これは・・・。
「属性変えないと危ないねえ。」
「せーの、で変えるか?」
お互いまた数歩離れる。
「「せーの」」
「有よ我友よ、我ソラリスファに力をかしたまえ>」「<水の力よ、僕レイドールに力を貸して、全てを飲み込む力を>」
「<プレス>!!」「<オーシャン!!>」
俺の方がレベルは低い
魔力の量を追加し何とか打ち消す。
「<ソード>」
間髪いれずに放たれた水の捕縛魔法をソードで打ち消す。
「<ドレイン>!!」
ソードの魔法に魔法をかける。
「そういう魔法剣もありなんだ。」
感心したように言うレイドールの手から水の爆発が放たれる。
俺はそれを紙一重で抜け、剣を振るう。
表面を撫でただけだった。
しかし、ドレインが発動し、時間を稼げるはずだった。
俺は津波のような水流に押し流された。
「さすがにソードの魔法までは消せなかったよ。」
服は防水の魔法がかけられていたが、髪から水が滴る。
「本気を・・・出させてもらうぞ・・・。」
俺の声の高さが変わったことに気がついたのだろう。
本来俺の声は高い。そっちのほうが魔法も使いやすい。
左手を前に出す。
「<メテオ>!」
レイドールがいた辺り一面が隕石で押しつぶされる。
「<サーフ>!!」
「へえ、アレでも立ってられるんだ・・・。」
俺はそうつぶやきながら剣を構える。
今度の大量の水は、
俺のソードに吸収された。
魔法剣の応用だ。
足のクッションを利用して、最初の一歩を踏み出す。
次の瞬間にはレイドールの目の前にいた。
「お返しするわ。」
俺は言葉遣いが戻っていることも気にせず水の最高レベル魔法を吸った魔法剣を振るった。
そのまま横を抜け、振り向き、ソードを地面に刺し、胸の前で手を組みそのまま指を伸ばす。
「まだやるなら、相手をしますが?」
「・・・・。」
レイドールは黙って両手を挙げた。