Partner light14
わたしは
動き続ける
私が何を示しているのか
私にはわからない
Partner light #14
それでも動き続ける
それが
私の存在理由
私が壊れても
別なものが
私の代わりをする
それでも私は
時を刻む
「レン、どんな話を読んでるんだ?」
俺はレンの持っていた童話集をのぞきこんだ。
レンはすぐに顔を上げてにっこり笑いながら答えた。
「不思議な国で男の子が二人冒険をするんですよ」
レンは楽しそうに話し始める。
その話は『二人の冒険』というタイトルのついているこの近くではみんなが一度は聞いたことのある話だ。
レンはエルフの童話しか聞いたことが無かったらしくて、よく聞く話の紙芝居をみて初めて聞いた話だと言ったから俺はレンといっしょに童話集を借りてきたのだ。
俺が『最新魔法科学』を読む隣で童話集を広げていたのだが、飛ばし読みをしている所為で俺は結構早くに本を閉じていた。
真珠とあんずもめいめい読みたい本を読んでいる。
外はまだ明るかった。
俺は部屋を出て宿屋の一階へと降りた。
「お客さん」
と女将に声をかけられ俺は振り向いた。
「お客さんのお連れさんには魔法使いはいるのかね?」
「・・・えっと、いますが・・」
俺もそうです、とは言いたくないのでいわない。何かありそうだ。
「今日から三日間ね魔法大会があるのよ。いうなれば祭りなんだけど」
おしゃべり好きの女将の話を要点だけまとめていうと、この国では昔から魔法を重宝しており毎年魔法大会が開かれているらしい。大会に出るために毎年隣国から訪れる人もいるらしく、旅人も参加できるらしい。
大会の方式トーナメント方式で課題にあった魔法をその場で合成する方法で出来のよかったものが次の段階へ上がっていくのと、魔法のみの戦闘を行い勝者が勝ち進むのとを、毎試合ランダムに決まるらしい。優勝商品は
「懐中時計だ!!!」
ばん、と部屋のドアを開け言い放つ。
三人が振り向く。
「何の話だ・・・」
真珠は至極面倒くさそうにいう。
ざっと女将から聞いてきた内容を話す。
「ということで、優勝商品は懐中時計らしい!!」
「・・・四月、懐中時計がすきなのか?」
「無駄に輝いてますわね・・・」
真珠、あんずがうんざりという。
「良いじゃないか、懐中時計!シンプルかつゴージャスな日用品!!」
「で、魔法大会ですか?」
レンだけはいつもと同じ調子だ。
「そう、魔法大会なんだ!みんなで出よう!!」
「一人で行って来い。」
・・・
冷たくないですか?
「まあ、あたくしたちは合成魔法なんか使えませんし、特殊魔法や召喚魔法ではどうにもならないですわよ。」
「・・・確かに。」
俺も本来奇跡魔法の使い手だが「本職は魔法使い」といわれるくらい普通魔法が使えるし、それを合成することも出来るが・・・。魔法は使いたくないし。
「・・・賞品を見てから決めるか。」
『滅びし王国、サクラ国の王宮機工師が作りし時計』
カバーには王家の紋章が入っている。重厚なつくりの時計が飾ってあった。
これが賞品だ。
・・・・出るしかないな。
あれは、
「お袋の時計・・・」
そう、お袋が幼い俺に見せてくれた懐中時計・・・。
そのときのことを唐突に思い出していた。
大きくなったら貴方にプレゼントしましょう、とお袋は言った。
俺は、大きくなった。
「てことで、優勝してくる。」
見てきた時計のことを話し、三人にそういった。
「・・・記憶がないわけではなかったのか?」
そういえば三人には城の記憶がないって言っておいたんだっけ・・・。
「断片的にはあるんだよ、思い出せないだけでさ。」
自然にため息が出た。
無理に思い出そうとすると頭痛がするわけで・・・。
『第105回 魔法大会を開催します!!』
わー、盛り上がる声が聞こえる。
200人以上が参加するらしく多数の競技場で準備がなされていた。合成魔法のほうは基本はスタジアムでやるようだが戦闘はステージがいろいろあり各ステージ環境が違うという懲りようだ。
「八回勝てば優勝か・・・。」
その八回が大変なわけだが、勝負などいつでもそうだ。自分の命がかかっていないだけ今回はましだと思う。
「・・・オレの一回戦は・・・」
『合成』
の文字が俺と対戦者の間に浮き出していた。
合成魔法とはいろいろ広さがあってこの前俺が使った「<ウィンドアクト>インアロー」などの魔法に効果を追加するのも合成魔法に入るらしい。
ちなみに「<ヒートブレイド>」など、剣を補強するための魔法以外を剣にかけることも合成魔法の一種とされている。つまり魔法剣は合成魔法なのだ。魔法剣が難しいとされる理由はいろいろあるが、主に強さを調整しないと剣が崩壊してしまうところにあるらしい。俺自身はあんまり実感がわかねーけど。
その辺の魔法の分類方法は難しい上あいまいなため、魔法科学を専攻している人たちの間でも意見が分かれているらしい。まあ、想像力や工夫、実力でいろいろな使い方が出来るものなので分類するのは難しいだろう。魔力の形を変えずに魔力のまま放出するという自爆性の高いことを普通にやってるやつも見たことあるし。
さあ、小難しい説明は終了して大会に本腰を入れよう!!
一回戦は合成のものが多いらしく(時間短縮のためだろう、日程に無理がありすぎる)スタジアムで同時進行で試合が進められていた。
俺の試合はというと・・・
『魔法石(一回だけ使用可なもの)の製造』というもので、大量の宝石の中から自分が使う宝石を選び、それに魔法を閉じ込める競技だ。
ちなみに5年ぐらい前の最新魔法科学に乗っていた論文で、そのころ大反響があったものだが、発表される前にも見たことがあるとは口が裂けてもいえなかった。
ちなみに今は対戦相手が魔法をかけ終わるのを待っているところだ。
この試合はいかに「魔法を閉じ込めやすい石」を選び「強い魔法を閉じ込める」か、で勝敗が決まるものらしく・・・。
普通魔法の「力を借りるための詠唱」で一分も唱えるやつなんて始めてみた。そりゃ長いほうがより多くの力を借りれるとはいわれているが・・・。いや、それでも一分は長すぎる!!
まあ、俺の<エクスプロージョン>を負かさなければなければならないのだから並大抵では勝てないと思ったということか・・・。
魔法には属性とレベルがある。<エクスプロージョン>は火のL16。普通、L7まで使えればその属性の魔法は「使える」といい、L14まで使えるとその属性は「マスターした」ことになる。L14とL15の間に大きな壁があるためだ。
たまに魔法使いでもL15より上の存在を知らないものもいる。基本的に必要ないんだよなー。
「<アクアアロー>」
ゼイゼイいいながら唱え終わったが、水のL12。この前の遺跡で魔法生物を消した技<アイシクルアロー>が氷のL12。
よっぽど完成度が高い<アクアアロー>じゃない限り負けないだろう。
そして判定方法は互いの石を開放してぶつけて魔法が打ち勝ったほうが勝ちだとか。
が、
<エクスプロージョン>対<アクアアロー>は一回戦から出てくると予想してなかったらしく、またまたされる羽目に・・・。
『さあ、一回戦から白熱しております!<エクスプロージョン>対<アクアアロー>いったいどちらが勝つのでしょう!!』
現金な放送がかかる。
近くに人がいると巻き込まれるためリモートコントロールで開放、ぶつけるらしく、今の俺は見ているだけだ。
そしていま、互いの石が開放された。
赤い爆発のエネルギーが轟音とともに解放され<アクアアロー>を「なかったこと」にした。