Partner light12
つい
つい最近のはず
いろいろあったと
自覚してしまう
Partner light #12
始まりを
覚えていても
覚えていなくても
今がある
未来がある
そして
過去もある
忘れられやしないが
「やっとそれらしいところに出たじゃねぇか」
大広間、とでもいうのだろうか。ただっぴろい空間である事は確かである。入ったとたん何処からともなく明かりがついた。真珠は光を消す。
そこに魔法傀儡――ゴーレムの姿があった。
「定石通りだな」
あんずがこくんと頷く。
2体のゴーレムの後ろには扉がある。おそらくそこから先がこの遺跡の中で最も重要だった場所だろう。
「これまで出てきたのと違う形をしているな」
「シンプルになりましたね。相変わらず素手ですけど」
「ごつければ強いわけじゃないからな。材質はわかるか?」
俺の問いにあんずが触って調べる。
「・・青銅ですわね」
「青銅・・・銅と錫の化合物だっけ。なら・・」
たしかゴーレムの金属と属性には法則があったはずである。
金属を作る錬金術がかかわっているためにできる属性だったはず・・。木製や砂製のゴーレムにはその素材そのものの属性がつく。金属製は金属の属性と錬金術上の属性がつく。
「・・・銅は金星、錫は木星」
あ、わかってない顔だ。まあ、知らなくてもどうにかなる知識だしな。
「金属によって属性が違うんだよ。青銅なら土と風の属性がプラスされてるんだ」
実は他にも命令の聞き具合違ったりと色々あるのだが・・・。
「へ〜」
「だから<アース>や<ウィンド>をかけると傷が回復したりするんだ。なんなら試してやるけど」
冗談で言うと
「絶対にやめてくださいね」
あんず・・・。普通に考えてしねぇだろ。
「お兄ちゃんならやりそうだもんね」
「うんうん」
「おまえ等ひどいな・・・」
相変わらず、と心の中でつけたし。
「おまえの薀蓄はどこでためられたんだ?」
「そのうちな」
言いたくないから話を切る、これは技術だと思う。
「で、ここで殺っとくか?」
その後話をそらす、に向かう流れ技だ。
「どうせ扉を開けようとしたら攻撃してくるのであろう」
「そういうこと」
しゃー!成功!
「今ここでやるべきですわね。」
武器を構える。
「俺が起こすぞ。できれば一匹ずつ相手したいんだがな。どうだろ」
「それは相手の考えによりますよね」
「と言う事だな。四月、チャっチャとやってくれ」
「りょーかいっと」
そう言いながら俺はクレイモアを右の魔法傀儡に振り下ろす。
ガキィンとド派手な音がして攻撃した一匹が立ちあがる。
「四月左!」
「ちぃ!」
右のサイドステップで左の同時に起きてしまった魔法傀儡からの攻撃を避けようとするが右の奴の攻撃がそっちから来ていた。その拳をクレイモアのフラットで受け流す。
「旋風の色よ!」
同時にあんずの放った色が奴の身体にぶち込まれる。
「きいてないの?」
あんずがそう声をあげるのもわかる。一瞬止まってあんずを確認してすぐ俺を攻撃する事に専念してきたのだ。でも当たったところへこんでるよな〜。つまり
「きいてるんだ。だからあんずを確認したんだ。おそらくこいつにかかっている命令は・・!」
左の奴からの攻撃。左斜め前上から拳が飛んでくる。うしろ・・いや前に避けて真珠達と離れたほうがいい。こいつの命令は・・
「『目覚めたら一番近くにいる奴を攻撃』っだ!!」
ただの力技かよ!
「あんずは牽制にまわってくれ。レンはそこから魔法援護をたのむ」
「わかりましたわ」「はい!」
「真珠もそこで援護。もしくは・・」
「こういう事だろう」
いつのまにか俺の隣まで回りこんできていた真珠は光でできた剣で魔法傀儡を一閃する。
「よろしくすんぜ!!」
と言っても光の剣をもつ真珠が近づくと・・・
「くっ」
やっぱり真珠のほうへ攻撃が行く。剣自体の力が違いすぎるためより力の強いほうを先に倒そうとするのは魔法傀儡や魔法生物の習性なのだ。
「真珠、一回下がれ」
こくんと頷いて真珠は数歩下がる。そうすると俺にくる攻撃もかなり多くなる。それでも真珠のほうが負担が大きそうだ。
剣の力を上げる方法は俺には二つある。魔法剣とモントヴァンだ、が唱えるだけの時間が無い。
そのときあんずの放つ魔法援護が入り魔法傀儡の動きを鈍くする。
これで魔法剣が使える!できるだけ短い時間で真珠と同じだけの魔法力を剣に持たせるには・・
「<闇よわが友よ、我ソラスリスファに力を貸したまえ>」
黒い闇がクレイモアに集まる。
「<暗黒>」
一発しか使えねーが仕方ねぇ。
真珠を狙っている腕のなかで一番危なそうなのを一瞬のうちに見極める。
「暗黒一閃!」
ずぶっと剣があの硬い魔法傀儡の肩に入り込む。
「はぁ!!」
そのまま勢いで切り落とす。
「・・・腕が一本減ったな」
「なんとか、だがな」
くそっ!闇魔法は負担が重過ぎたか・・・。目の前がぐらつく。船に酔ったときみたいだ・・・。
「四月、左から!」
「り・・了解!!」
畜生、反応が遅れた!
呪文をかける暇はねぇな。どーすっかなぁ。受け流すしかなさそうだがツラそうだよなー。
仕方ねーし、俺は受け流すための体制を取る。が、
「<ウォータシールド>」
レンの声が聞こえる。
弾力のある水の盾がひだりからの拳を包み込む。その拳は、魔法傀儡は動きを止める。レンの魔力と精神力をかけて“盾”という形で動きを止めさしたのだ。
間一髪ってやつだ。なんとか助かったぜ。
「使いもんにならなくしてやる!<全てにふれしわが友よ、我ソラスリスファに力を貸したまえ>」
闇属性に無属性か・・・ここまでがんばんのも久しぶりだぜ。
「<ブラスト>」
爆発の魔法ブラストここではまだ発動させねえ。魔法の発動場所を魔法傀儡の拳の内側へと移す、って精神力の消耗が激しすぎるぜ・・・。移すのも精神力なら、その間の発動を止めとくのも精神力だからなぁ・・・。
よし移ったはず。っつうかこれ以上は俺のほうに魔法が撥ねかえる・・・。
「インサイド!」
ぱちんとならした指の音よりも内側から発せられたであろう爆発音のほうがでかかった。
「ってー!!腕じゃねぇ!」
最近使ってなかったからなー。狙いが外れて身体全体を吹きとばしちまったらしい。俺も強くなってんだなぁ。
ともかくこれで残りは一体だ。
「真珠、そっち片付きそうか?」
「お前が一回引き受けてくれたらな」
だいぶ疲れた声が返ってきたな、オイ。俺もかなり疲れてんだけどな・・
「わーった。引き受けた!」
言葉と同時にとんできていた拳を剣を使いうける。がぃん、と大きな音とともに俺に引継ぎがされた。
真珠は数歩下がる。そして光をねっていく。
「<光よ、ここに集いて我に従え>」
真珠が胸の前に構えた両手の間に光球がうねる。見た目の大きさは変わらないが光の密度とでも言うのだろうか、濃さがどんどん大きくなっていく。
そしてまわりが暗くなっていく。そこにある光を吸収して手の中の光球が肥えていくのだ。
「四月、離れろ」
俺は頷いて離れるしかなかった。まともに食らったら存在が消えそうな術だ。
「<ライトエクスポーション>」
その光をぽいっと魔法傀儡に向かって投げる。軽い動作だ。
光球はぽてっと魔法傀儡の厚い胸板に当たり床に落ちる。その光が爆発した。
光の爆発
音もなく
振動もない
静かな爆発
圧倒的な存在感
「・・・これか」
光の中にいる少女がゆっくりと振りかえる。
「この森で人に会うのは久しぶりだ、だな」
楽しそうに無邪気に笑った。
「俺も人に会うのは久しぶりな気がするぜ、だな」
俺はニヤリと笑い返した。