海賊版
皆さん、「海賊版」ってご存知ですか?
映画の始まりとかでよく「違法と知ってダウンロード...」とかって言うの流れますよね。
今回はそんな「海賊版」にまつわるお話です。
とある男の話です。
男は貧乏というわけではありませんでしたが、ものが安く手に入るならそのほうがいいと思うような人間でした。男は映画や音楽はだいたい、インターネットのいわゆる違法サイトというものから海賊版をダウンロードして過ごしていました。そういうところではほとんどの製品が安く、またはただで手に入るので、男はとても重宝していました。
ただ男にはどうしても納得いかないことがありました。それは、海賊版が一般的に悪とみなされていることでした。だって同じものが安く手に入るなら、そちらのほうがすぐれているはずです。消費者も経済学的な原理から言えば、効用最大化に従い、安いほうを求めるはずです。それなのに、法律は海賊版を規制し、メディアもパントマイムするカメラマン(?)を使ってマイナスプロモーションを積極的に行っています。これでは自分のような海賊版を愛する人間の人権がありません。
男は科学者でした。男は研究に研究を重ね、「海賊版と本物を入れ替える」マシンを開発しました。
手始めに男は、有名な映画の海賊版と本物を入れ替えました。するとどうでしょう。今まで違法サイトとして肩身狭くあったサイトが、一瞬で公式サイトになり、その映画の監督が「新しく映画を作った罪」で捕まってしまいました。
男は気をよくして、次々と本物と海賊版を入れ替えていきました。音楽のデータはもはやフリー状態になり、誰もが”元”違法サイトからダウンロードしました。たくさんの芸能関係者が「新しい作品を作った罪」で捕まっていきました。しかし一つ問題がありました。海賊版ができるのはあくまでコピーだけで、作品ができなければコピーもできません。でも、「新しい作品を作る」ことが罪になってしまった今では、作品が生まれることはありませんでした。一時は浮かれていた人々も、次第に退屈し始めました。
ある日、世界にこんなメッセージが届きました。
「世界はあと300文字で終わります。」
男は驚き、焦りました。とはいえ、これは当然です。「新しいもの」が生まれない世界では、当然新しい命も生まれません。そして、いくらマシンでも命をコピーすることはできません。
男には「300文字」が何のことかはわかりませんでしたが、おそらくカウントダウンなのだろうということは理解しました。
「あと159文字」
気が付けばもう半分に迫っています。
男は助かる方法を必死でを探しました。
そして男はひらめきました。男は血走った目でこちらを見て言いました。
「お前、お前だよ!今画面を見てるお前の世界と、俺の世界を入れ替えればいいんだ。俺の世界はお前ら空想、いわば世界の海賊版なんだから可能なはずだ!さあいくぞ、このスイッ
おやおや、惜しかったですね。いや、危なかったかな?彼がもしカウントダウン以内にスイッチを押していたら、今頃僕たちの世界は終わっていましたからね。
しかしやはり、因果応報というか、悪いことをしたらどこかにしっぺ返しが来るものですね。少なくとも世界が滅びるくらいのしっぺ返しは。
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