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第七話「子守唄は」


「直ってない?何がですか?」

そこにお客との会話を済ませた綾音が戻ってきた。

「ごめんね。いつの間にか放置しちゃってて」

「綾音。今日ピアノ演奏していいよ」

「えっ。だってこの間演奏したじゃん」

「せっかく彼が来てくれたんだ、演奏してもいいんじゃないか?」

「う~ん。まぁ、一回は、聴いてほしいって思ってたからなぁ……分かった」

そう言って綾音は、ピアノがあるステージへ向かう。父親がカウンターの後ろのスイッチを上に上げると、ステージの照明がバッと点いた。お客が少しざわめき始める。綾音がピアノの椅子に座る。周りから控えめに拍手が起こる。

「あのう。さっきの話なんですけど……」

「綾音の演奏を聴いてみると分かるよ」

鍵盤に指を乗せる。一回息を吐いた。

 

 演奏が始まった。軽やかに指を動かす。ゆったりとした曲調。眠くなりそうだ。周りのお客は、完全に綾音の演奏に虜になっている。誰も会話をする声が聞こえない。蒼は、綾音がどんな演奏するのか実は、気になっていた。

「この曲は?」

「これは、綾音の母親がよく子守唄でよく演奏してたんだ」

「子守唄ですか……通りで眠くなるわけですね」

「初めは、いいんだけどね。そろそろだ」

父親がそう言った直後だった。今までゆっくりとした曲調からなんだか悲しくなり始めた。ずっと聞いている涙が出そうな感じ。悲しく寂しくまるで誰かと離ればなれになったかのように。

「これ、子守唄なんですよね?」

「そう……母親を亡くしてからいつの間にかこいう曲調になってしまったんだ。お客は、これが元々のだと思ってるからいいんだが」

「西沢さん本人は、どう思ってるんですか?」

「それが気が付いてないんだ。本当は、こんな悲しくさせる曲じゃないんだけどね。これがさっき言ってた直ってない一つってやつさ」

「……難しいですね」


約3分間の演奏を終えた綾音。周りのお客たちは、たくさんの拍手をしてくれてそれに笑顔で応える綾音。

「どうだった私の演奏?」

額に少し汗をかいている。満々の笑みで聞いてくる綾音に蒼は。

「うん。良かったよ」

そう言うしかなかった。本当のことは、言えなかった。

「で、どう?ここで演奏してくれる?」

「なんだいその話?」

「えっとね。市民会館とかじゃなくてここで演奏しないってオファーしてるの」

「へぇ~。いいね。一回ぐらい演奏してみる?別に今日じゃなくていいから」

父親もノリノリで蒼に聞いてきた。

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