第五話「言い返しなさい!」
学校が終わり帰宅する。行きと同じようにバス停で音楽を聴きながらバスを待つ。下校時間なのでバスを利用する生徒が多いが何故か今日は、とても多いと思った。一列で並ぶ列は、長蛇の列。全員は、おそらく無理であろう。不意に向かいのバス停を見ると、列の先頭に綾音がいた。彼女も一人で下校するらしく近くにいる生徒とは、話さずスマホを操作していた。
それから10分後。綾音側のバスが先に到着した。スマホをスカートのポケットに入れて、鞄から財布を取り出した。バスに乗り込み車内の右側の窓際に座った。
すると。綾音と目が合い。笑顔で小さく手を振ってきた。応えるように恥ずかしそうに蒼も手を振りかえした。
家に帰ってから着替えて時間になるまで部屋でのんびりする。
「行くって返事しちゃったけど、いざ行くとなるとなんだか緊張するな。一人でカフェに入ったことないし」
次第に落ち着かなくなり始め、着替えた服装が変じゃないか気になりクローゼットから、いくつか服を取り出し改めて何を着て行くか頭を悩ませる。
5時半。バス停でバスを待つ。結局服装は、最初に着ていた服にした。
「カフェかぁ……どんなカフェなんだろう」
バスが来た。乗り込んで一番後ろの座席に座る。夕暮れの街中をバスの窓を通して見る。学校過ぎてしばらくすると目的の停留場が次になった。停車ボタンを押す。まだ、バスは、動いていたが座席から立ち上がり、降りるドアの正面に待機した。
5分後。バスが停車した。ドアが開くとそこに綾音が待っていた。バスから降りる。
「時間通りだね」
「……」
「ん?どうしたの?」
蒼は、見惚れていた。綾音の私服姿に。学校とは、違う一面がそこにあった。白を基調とした服。いや、ドレスに近い。腰には、大きめのリボンがしてあり右耳には、ピアスがしてある。まるで別人。
「お~い。蒼?」
「えっあぁ」
「本当にどうしたのボーっとして」
「あっ、いや」
綾音を視界から外すように目を逸らす。
「あぁ~。もしかして私に見惚れてた?」
「……」
「ちょっちょっと!何か返してよ!恥ずかしいじゃない!」
「わ、悪い……」
蒼の反応に綾音は、顔を赤くして恥ずかしそうにしている。
「そ、その格好は?」
「えっえ?これ?私カフェで手伝ったり演奏するときは、この格好なの」
「へ~。そ、そうなんだ」
改めて綾音を見るとパッと隠すような動作をする。
「あ、あんまり見ないでよぉ~」
「いやいや。見ちゃうからその格好!」
「もう!ほら!早く行くよ!」
綾音は、強引に蒼の手を掴んで走り出す。