第四十二話「下手な嘘」
夏休みが始まった。暑い日差しが続く日々。30度を超える猛暑。人は、涼しい場所を求めて海に行き海水浴を楽しむ。森林浴や山に行く人も少なくはない。遊園地、旅行など今この時期とても混雑する。
学生というと部活動に所属してるものは、もちろん学校に赴き練習などに励み、入っていないものは、ゆったり時間を使うのもよし、今のうちに宿題を減らすのもよし、それぞれである。
そして、今日7月23日。綾音宅で全員が蒼に集められていた。演奏会のことだろうと誰もがそう思っていた。だが、蒼の口からは、違う言葉が出てきた。
「僕、海外に留学する」
蒼の隣に座る綾音、その向かいに望海、望海の隣に小町がテーブルを挟んで椅子に座っている。
「ちょ、ちょっと待って!えっ。意味分かんないんだけど」
綾音がそう言う。望海も頷く。
「その、ピアノを本格的に学ぶために」
「だからってこのタイミングで!?おかしいよ!」
「私も思う。蒼君は、どうしてこのタイミングなの?卒業してからでもいいんじゃない?」
「昔。ピアノを教わってた先生がこっちに来ないかって言われてそれで」
椅子から立ち上がる綾音。
「どうして!その先生は、蒼がここ最近になってピアノをまたやり始めたこと知ってるの?」
「し、知らない」
「ブランクがあるのに急に来いだなんて……」
静まり返る空間。
「わ、私は、いいと思います。いい機会だと思います」
小町が言った。綾音の迫力に負けているが自分が思っていること頑張って言っている。
「入山先輩のピアノは、素敵ですしこの機会を逃したら海外に行けるか分かりませんし、何より昔一緒にやっていた先生の元でまた出来るんですよ?いいじゃないですか」
小町は、分かっていた。蒼の留学は、嘘なんだと。
「私もいい思うよ。留学」
会話を聞いていたマスターが会話に加わってきた。
「しっかり腕を磨くといい」
また、マスターも察していた。
綾音は、我慢が出来なくなりその場から立ち去り自分の部屋に戻ってしまった。ドアを閉める音がドンっと凄い音がした。蒼を見る望海の顔は、寂しさが漏れだしていた。
結局、綾音が再び部屋から戻ってくることはなかった。望海は、まだ信じられない様子で綾音が部屋にいってからしばらくして帰宅していった。残された蒼、小町、マスター。
「行くんですね。手術しに海外に」
小さく頷く。
「いつですか」
「……明後日」
「いざ、行くとなると寂しくなるな」
「僕のことは気にしないでください。霧山さんもテニス頑張って」
ちょっと、俯いたがすぐに蒼の顔を見て。
「はい!お二人の先輩は、私に任せてください!」




