第四話「過去×待ち合わせ」
「何を話すんだ?」
「蒼っていつからピアノを?」
自分の事を話せとそう感じ取った。
「……まともにやってたのは、4歳ぐらいから小6までたまにコンクールとか出てたけど成績は、良くて9位」
「コンクールにも出てたのになんで中学からやらなくなったの?」
「なんていうか……疲れちゃったっていうか元々親がやれって言ってたから、中学になったら趣味で演奏するぐらい?気が向いたらみたいな。演奏する曲もその場で思いついたのを、自由に演奏するみたいな」
「なるほどね」
「西沢さんは?音楽は?」
今度は、蒼が綾音に聞く。
「私は、時々経営してるカフェでピアノを演奏してるの。ピアノを始めたのは、中一からよ」
「中一からかぁ」
「中三までピアノ教室とか行ってた」
「今は、行ってないの?」
すると、会話がピタリと止まった。蒼は、あれっと思った。何か間違ったこと言ったかっと。隣にいる綾音は、なんだか寂しそうに空を見つめている。
沈黙を破るかのように綾音は、再び話し始めた。
「……去年の12月。ピアノが好きだったお母さんが死んだの」
「えっ」
突然母の死についてだった。
「交通事故。買い物の帰りだったみたいで丁度そこに学校から帰ってた私が遭遇したの。救急車に血だらけで運ばれていくお母さんを遠くだったけど、すぐ分かった。頭を強く打ってて手遅れだった。……お母さんが死んでからしばらく、ピアノが演奏出来なくなった。お母さんが好きだったピアノを」
「……」
蒼は、何も言わずにただ、黙って聞いていた。
「町を歩いていて聴こえてくるピアノの音が嫌だった。でも、あの市民会館で蒼の姿を見た時なんでか聴いてみたくってでも、直接は……」
「それで、コップ?」
「うん。蒼が奏でるピアノの音色は、聴いていても嫌いには、ならなかった。それで、またピアノを演奏してみたくなってカフェでやるようになった」
「そうだったんだ」
「なんかごめんね。こんな話して」
「いや、少しでも西沢さんのことを知れてよかったよ」
「そう?」
綾音が蒼の視界の範囲に入るように覗き込んでくる。それを外すかのように頭を右に回す。
「あのさ。カフェってどこにあるの?」
「え?え?何々?演奏してくれるの!?」
目をキラキラと輝かせるような、犬だったら尻尾をブンブン振るぐらいの嬉しそうな反応をしている。蒼は、一回溜息をついて。
「まだ、演奏すると決めたんじゃないよ。どんなカフェで西沢さんが演奏してるか行ってみたくなっただけだよ」
「そっかそっか。うんうん。それじゃ、今日来る?ウチのカフェ5時から開店なんだけど。あ!でも、今日演奏しない日なんだけどそれでもいい?」
「そうなんだ。う~ん。6時からでもいい?」
「分かった。場所は、学校前のバス停から5つ先のバス停から歩くんだけど」
「あ~。じゃそっちのバス停で待ち合わせとかは?」
「そうしようか。フフッ。なんだかワクワクする」