第二話「私は、西沢綾音」
目をキラキラさせながらスタスタと早歩きで蒼の元へ。その子から感じられる独特の雰囲気に身構えてしまう。
「綺麗な音色。やっぱり中と外で聴くのと大違いだね」
同じ制服を着ているが蒼は、この子が誰なのか分からなかった。あれこれ演奏を感想を10分以上述べているが蒼は、戸惑う。遠くにいる受付のお姉さんは、女の子の言葉に同意するかのように腕組みをして、頷いているのが見える。
「あ、えっ。あの……」
蒼が戸惑ってることに気が付いた女の子。
「あ、ごめんごめん。名前言ってなかったね。私は、君と同じ学校の西沢 綾音。隣の二年二組だよ」
そう言って手を出して握手を求めてきた。
「えっと。僕は、三組の」
「入山蒼君だよね」
「うん。そうだけど。どうして知ってるの?」
一応握手をした。
「初めて君のピアノの演奏を聴いてから気になっちゃって、同じ制服だったから調べたら隣のクラスだったからビックリしたよ」
「で、でも、外から中の音は、聴こえないはず」
「確かに聴こえないでも、これを使えば……」
鞄の中から取り出したのは、透明で厚みが薄いコップだった。
「ま、まさか!」
「そう!これを通して聴いてたの。でも、聴こえても小さいんだけど」
物凄いドヤ顔をして自慢げに言う。蒼は、それを聞いて少し引いた顔をする。そして、分かった。昨日感じた視線は、彼女だと確信した。
「ちょっと!引かないでよぉ」
「そんなことしないで普通に入ってくれば良かったじゃん。その周りにいた人みんな見てたんじゃない?」
綾音は、パッと人差し指を唇に添えて。
「それは、言わないで~」
恥ずかしそうに言った。自覚は、していたみたいだ。
「それで、僕に何か用なの?今日は、話しかけて来るほどだし」
綾音は、二歩後ろにステップして右手を腰に左手で蒼を指さしこう言い放った。
「入山蒼!私の家が経営しているカフェでピアノを演奏しない?」
静まり返る。綾音の目は、蒼をから離さずずっと見ている。蒼は、言われたことを分析し冷静に言い返した。
「……断る!!」