空虚
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灰色のコンクリート造りのひんやりとした部屋。
ここはどこだろう?頭が痛くて、霞みがかかった状態になっている。
こんな状態で良く判断出来た物だ。
少し皮肉りながら起き上がる。
手と足が縛られていて、無理に動かした体が痛かった。
焼けて引き攣った肩、何針も縫ってあるふくらはぎの傷。
それを見た時バランスを崩して、前のめりに転ぶ。
全身が、すごく痛い。
燃えるような痛みが、頭に走った。
---ユリノの笑顔、悲鳴と爆発した観覧車
映像が鮮明に浮かび上がる。
--黄昏の血溜まりの中で、息をしなくなったユリノ
「嫌ぁぁぁぁぁああああああああ!」
気がつけば、掠れた声で叫んでいた。
その声は殺風景な部屋の中で、反響した。
信じたくない。
あの子はまた、私の隣で笑ってくれるんだ。
私の名前を笑いながら呼ぶんだ。
ユリノが消えた事を認めたくなくて、無理矢理伸ばしたその手は、鉄格子を辛うじて掴んだ。
分かっているさ。もうユリノは死んだんだ。
鉄格子の更に奥の、ドアが開く。
帽子野郎が入って来た。
「やぁ。フウちゃん。調子はどうかい?」
よくもまぁ、ぬけぬけと。
「かなり大声で叫んでたねぇ。集音マイクの音、あげた瞬間絶叫するんだもん、普通の人間なら死んでたよ。」
鼓膜破れて死ねば良かったのに。
「何気に酷い事考えるなぁ。全く。」
帽子野郎はエスパーでも使えるのか、頭が変に狂ってしまったのか・・・・・。
絶対に後だな。
「ちょっ・・・ブハッ。僕はこう見えてもナイーブなん
だから、もっと気をつかってよ。」
ストレスで発狂しながら死んで、あの世でユリノに土下座して来い。
「それは無いよ、さっきの嘘だから。」
はい、そうですか。だからなんだ。死んで欲しいという考えは変わらない。
「せっかく、ご飯持ってきてあげたのに。食べなよ。一回鎖外してあげるから。」
帽子野郎は、サンドイッチを乗せた皿を出して振った。
「ユリノを殺した奴から、出された飯なんざ食えるか。」
そっぽを向く。
少しの沈黙が訪れた。
「勘違いしてないか?」
殺気を含んだ、低い声。いつものへらへらとした様子から豹変している。
二重人格だろうか。
「ユリノはお前のせいで、死んだんだ。お前さえいなければ、ユリノは生きられたはずだろう?」
鉄格子の中に手を差し込まれ、一気に顎を掴まれた。
無理矢理前を向かせられ、鎖がぎゅっと締め付ける。
嫌だ。訳が分からない。違う、ユリノは・・・・・
「本当は、分かって居るんだろう?お前がユリノを殺したんだよ!」
嫌だ。嫌だよ。違う、違う。私じゃない私じゃない私じゃないっ!
「いいや、お前さ。」
私のせいで・・・・・。
「そこで、しばらく考えておけ。」
帽子野郎は静かにそう言って、皿を置き、出て行った。
入れ違いに激しく扉が開く。
薄いポンチョのような物を着て、フードを深くかぶっている少女が駆け寄って来た。
私の胸倉を掴む。
「お前、さっきユリノって言った・・・?!ユリノがどうなった・・・!何があった・・・?教えて・・・!」
そのまま激しく揺さぶった弾みで、フードが外れた。
長いふわふわしたヘーゼルの髪が漏れて、同じ色の瞳が見える。
どう見てもユリノにそっくりだった。ユリノそのものだった。
「ユリノっ・・・・・」
声を掛けた瞬間、頭の中に情報が流れこんでくる。
この人は、ユリノじゃない。アマネだ。
「話しかけないで。」
生きていても仕方ないじゃないか。私が居なければ、ユリノは生きれたかもしれないんだ。
アマネは黙りこくっている。
「出て行ってください。」
「嫌。」
短く一言言うと、指先で端末をいじった。
帽子野郎がすぐに入って来る。
「フウちゃん。」
普段通りに戻っていた。
なんで、私に構うんだ。このまま死んでしまいたいのに。
また、顎を引っ張られる。両頬に連続で熱い衝撃が走り、じんじんと痛む。
反射的に正面を向くと、帽子野郎とアマネに平手打ちされていた。
「フウちゃん、ユリノちゃんはフウちゃんを守って、死んでしまったんだよね?」
今更なんだと言うのだ。
「ユリノちゃんは、今のフウちゃんを見て、喜ぶかな?」
アマネがすっと、私の前に小箱を差し出し、ゆっくりと開けた。
中には、『これからもずっと、よろしくね♪』と書いたカードと、銀細工の花のペンダントが入っていた。
シンプルで凛とした花の中央には、小さな緑の石が埋まっている。
「ユリノちゃんの分も、しっかり生きてあげようよ。」
視界が滲んで来る。私は敵の前で何をしているんだ。そう思いながらも、こぼれ落ちる涙が止まらない。
ありがとう、ユリノ。
助けてくれて本当に、本当に
・・・・・ありがとう。
それから、さようなら。
嗚咽が漏れた。
「好きなだけ泣いて良いよ。・・・もう無理することないんだからさ。」
頭に手の平が乗る。
優しい言葉なんて、反則だ。
ぽんぽんと帽子野郎に頭を叩かれながら、私は泣き続けた。
今回は少し、改行、空白を減らしました。
知り合いから改行と空白が多いと指摘されたので。
こういう展開にしてほしい とか、ご意見ありましたら、感想のスペースを使って書いてください。
ユーザー登録していなくても、書き込みできる設定にしたので。
後、本文の文字数が増えたようなw