小説家になろう!
深夜2時。
アコはパソコンとにらめっこしていた。
『小説家になろう』
このサイトに彼女は最近かなり熱を上げている。
小説家をアマチュアからプロにしようという内容の投稿型サイトだ。
アコはさっきから壊れかけのレディオでなく、壊れかけのパソコンを前に頭を悩ませていた。
アコもコマコマ作品を投稿している。
今回も原稿を書いているのだが、執筆中のパソコンの不具合にパニック寸前だった。
『また黒なった!』
アコのパソコンの画面は調子が悪くなると画面が黒くなる。
そして、記号のようなものが呪文のように羅列される。
『私を呪って楽しいか!』
アコはパソコン本体をたたいた。
日頃は、マッキントッシュのiMacもかわいいかわいいとペットのようにかわいがっている彼女だが、こんな調子の本体はそんなアコの餌食になってしまう。気の毒だ。
ラストシーンをタイプし終え、投稿ボタンを押そうとしたその瞬間!
最悪な事態が。。
『黒なった!』
小説家になろうどころではないアコだ。
このサイトに振り回されエンジョイできていないよう見えるアコだが、そんな彼女にも楽しみがある。
評価欄だ。
そう、このサイトには、投稿されている小説に読者の評価を任意で書き込める。
それが自分のにもあるかチェックをするのが彼女の日課になりつつあった。
『あるかな?』
左目だけつぶるアコ。
なぜそうするか。
画面左に評価が出るのでなかなかドキドキして見られないアコは、評価欄をクリックしても数秒こうする。
こわごわ目を開けてみる。
なかった。
これを毎日彼女は繰り返している。
小説家になろう。
小説家になれる?
アコの小説家になろうのサイト利用はしばらくこんなふうにSM状態で続きそうだ。