それぞれの戦い 2
遅くなってすいませんでしたーーーー!!!
「うにゃー!」
「やっと捕まえたぞ!逃げ回りやがって!!」
フェイは今アルバリオンの手の中で握りつぶされそうになっていた。接近を許してしまったのだ。
「はなすのだー!」
「死ね」
お願いしても助けてくれない未知の敵に驚きながらも彼はお気楽だった。なぜならフェイの主人が明日お菓子を作ってくれる予定だからだ。フェイはそれだけで力を振るえた。
「てれぽーと!」
「なにっ!?」
自分の手の中から一瞬で遠くまで移動していた妖精族に本気で驚くアルバリオン。テレポートは誠二が思っている以上に難易度が高いのだ。
「このゴミムシがっ!」
「こんちしょー!ぶらっくほーる!!」
ブラックホール。闇魔法の中で最強の禁呪である。効果がある範囲は半径15mほどだが、誠二との特訓に使用した時は誠二の光速でも逃げ切れなかった。それもそのはず。ブラックホールは光すら脱出できない黒き檻なのだ。それに加えて、
Name:フェイ
LV:18
NO,5:妖精王
Rank:伝説級━5
Skill:究極スキル《すご~い妖精魔法》・鈍感Ⅷ
Ability:不老不死β
STATUS
HP:F
MP:SSS+
At:ある…の?
De:いる?
SP:SS
Mi:SSS+
Hi:SS-
Next:━
ステータスもこんなんだから笑えない。
『まじやば』
それが誠二がこの技を喰らったときにどうにかひねり出した言葉だ。ふざけてるのではなく、それほど余裕がなかったのだ。そんな技を喰らったらどうなるか。
「あ、がっ、が」
ズウウウウウウウウウウン!!
当然ながらアルバリオンはブラックホールに吸い込まれ、圧縮され、小さくなって消えた。
「わ~い、かった~!」
そんな恐ろしい魔法を使ったフェイはしばらくのんきに小躍りするのだった。
「ふむ」
一方こちらではドライグが敵を追い詰めていた。しかし不自然を感じてもいたのだ。
「やはり上級悪魔たちよりも強いな。なぜだ?」
「はあっ、はあっ。それは俺が意味持ちだからだ」
「意味持ち?」
聞きなれない言葉に首をかしげているドライグ。
「くくっ、バアルという名前には意味があるのさ。いや、歴史かな?」
「?」
これを聞いたのが誠二だったら反応も違っただろう。バアルという悪魔は地球でもその名を知られている。つまり地球の空想上の悪魔の名前の一つなのだ。アスモデウスも意味持ちである。
「よくわからんが…。それは後で御主人に相談しよう。私は考えるのは苦手でね」
そう言うと彼女はその大きな顎を開け、超高密度エネルギーの発射準備を一瞬で終わらせた。
「言い残したことはあるか?」
「・・・邪神にたどりつくヒントは『ハーメルンの笛吹き』だ」
「?まあいい。御主人に伝えておこう。じゃあな」
意味のわからない単語に首をかしげつつ、ドラゴンブレスを放つ。そして彼女がドラゴンブレスを解き放ち尽くした後、そこには塵一つ残ってなかった。
「邪魔くせえな、お前」
「ひいっ」
ハットリは敵の上級悪魔を徹底的になぶっている最中だった。蜘蛛の足もフル動員し、圧倒していた。が、こいつが全然倒れない。どうやら防御を徹底して、守りの姿勢に入ったようだ。
「お前みたいなコスイ発想をする奴が一番うざいって相場が決まってるんでごわすよ」
「ごわす!?」
ハットリはいつもは関西弁だがキレると標準語になる。そしてキレた後変な口調になるのだ。・・・え?どうでもいい?すいません。
「そろそろ死ぬでござる」
「ござる!?」
命の危機にもかかわらずエルニアの鋭い突っ込みに少し感動しながら彼は背中から生えてる蜘蛛足を一つに重ねた。
「『大槍麟』」
その蜘蛛の足は一撃でエルニアの腹に大きな穴をあけた。
「うん。うちらは最強っす」
それを見てハットリは満足げに笑っていた。
一方。一度集まっていたルナとゴムレスはどうするか迷っていた。こちらにやってきた悪魔二体を殺すか、誠二に加勢するか、それとも押されているルゼッタとクエルのもとに向かうか。
悩んでる途中で、悪魔が向かう方向を変えた。ドライグ、フェイ、ハットリのいる方に。
「ならあっちの人間達の方に加勢するか」
「了」
あっさりと自分たちの敵をきめた二人はそちらに向かっていった。
ルナとゴムレスがSランク達の加勢に向かったのと同じ時、誠二は追い詰められていた。
「らっ!!」
「ほう」
力と力がぶつかり合う。力はほぼ同じ。防御力は誠二に分があり、他のことは負けている。かなり厳しい状況だった。今の彼には魔法に対する術がない。なのでただひたすらに耐えるしかないのだ。
「死ねよ」
「ははは、余裕がありませんねぇ」
また一撃をよけられ、蹴りをたたきこまれる。
「勇者としての象徴がなくなったあなたに負けるほど私は弱くありませんよ」
「うっせえ」
肩で息をする誠二。真帆による攻撃でもうすでに体はボロボロだった。それでも拳を下げないのはある意味意地だった。勝つ方法はある。でもその方法はできればとりたくなかった。
「でもしゃーなしだな」
「なにがです?」
「何でもねえよ」
アスモデウスの問いかけを無視し、自分の首を手でつかむ誠二。アスモデウスには何をしているのか理解できなかった。だからこそ間に合わなかった。
「ばーい」
「は?」
誠二がしたことは至極簡単だった。首を掴んでいるその手を渾身の力で握っただけ。そうするとどうなるか。答えは単純。
首がねじり落ち、死ぬ。
「なんだと!?」
アスモデウスは止められなかった。彼の自殺を。




