知識の部
学園の名前を変更しました。
≪誠二視点≫
「ツモ。四暗刻」
「なにっ!?」
ははは、俺に勝つなど100年早いっちゅーの!はははは…。はあ。何で俺
「麻雀やってるんだろう」
* *
話は今日の朝までさかのぼる。今日は大会一日目だった。俺は一日目の競技について説明を受けていた。
「これが今年の競技内容です。競技は毎年変わり、今年はこのマージャンという競技になります」
「・・・麻雀?」
「はい」
これ聞き間違えとかじゃなくて?
「この競技はその昔、紅蓮という名の聖獣が広めたといわれています。結構有名なボードゲームなんですが、やったことあります?」
「俺これ超強いぞ?いいのか?完封しちまうけど」
「勝てるなら何でも構いません」
というわけで麻雀をしてるわけだ。この麻雀のルールに「勝つために努力しましょう」って一文があるんだが、これイカサマしていいってことだよね?よしまかせろ!
「ツモ。四暗刻」
「なにっ!?」
四暗刻は自然にできることもある珍しい役満だ。暗刻を四つ作って上がるだけ。そのかわりに比較的出てきやすい役満なのだ。(役満自体がめったに出ないが)もちろん自分で出したわけじゃない。
イカサマしたのだ。
「くそっ!なんでそんなに運がいいんだ!」
麻雀は今までのトライデントで行われていたボードゲームの中で一番運の要素が大きい。それゆえ頭が良くても全く駄目なこともあるのだ。
「にゃははは!運がいいだけなのかな?」
挑発をかませば文系っぽいおっさんたちが顔を真っ赤にする。
「ま、次で最後だしね。楽しもうや」
前半の試合はこれで終了だ。
「がんばれよ」
* *
「昼だーーー!!」
前半の試合を完封し、午後の部に行く前に昼休憩になる。気分がいいね!
「どこで食う?」
「なにたべるー?」
「あちらになかなかおいしい店がございます」
「まじか!?」
外に出て何を食べるか相談していると、ルナが店を見つけていたらしく、すぐに案内される。
「ここはどうでしょう」
「いいね!」
「お~」
肉料理が中心の店らしい。俺、ルナ(狼)、ドライグ(竜)にはちょうどいい店だ。あ、ちなみにお嬢様は貴族用スペースで料理を食べている。あそこはうまそうだけど量がないんだよな。
「それにしてもすごかったな御主人様は」
「ええ、完封でしたね」
「ああ、あれか」
そんなに褒められると困るな…。イカサマしたんだし。
「あれは河から拾っただけだよ」
「河?」
「捨牌のことだよ。それをばれないように自分のと入れ替えるんだ。日本で培った技術に、スキルによる光速移動を駆使してやったおかげで全くばれなかったしな。
「さすがです主」
「すさまじいな御主人様は」
「すごいー」
「いや~、それほどでもあるよ?」
そこまで言うなら俺頑張っちゃうよ?
* *
「それでは決勝戦を開始いたします!」
二日後、三日目の最後の試合。つまり決勝戦だ。イカサマをしまくり、余裕ができたらイカサマせずにやってみるを繰り返していたらこうなっていた。正直決勝まで来れるとは思ってなかった。
「ロン。七対子」
あ、やられた。結構強いなこいつら。ちなみに七対子は同じ牌を2つずつそろえる役だ。これが化けると四暗刻になる。
「ロン。対々和」
「・・・」
こいつよく上がるな。金髪でイケメンで頭もいいってか?けっ!(人のこと言えない)
「お前すごいな~」
「えっ?ああ、自分このゲーム得意なんですよ」
「俺もだよ」
金髪君は俺に軽く話しかけられて少し驚いたようだがすぐ復帰してきた。
「リーチで」
「お、じゃあ俺もリーチ」
笑顔でリーチ宣告してきたのでおっかけリーチをしてみた。ははは、今一瞬怖い顔になった。
もうすぐ取れる牌がなくなり、流局になりそうになった時だった。
「きませんね」
「まあそういうゲームだ。ちなみにお前が欲しいのはイーワンだろ?」
「え?」
おお、驚愕って顔だな。それでもイケメンとか死ねよ本当に。
「その程度も分からねえと思ったのか?あ、それロンだ」
「嘘だろっ!?」
結構汚い言葉を使うんだなこいつ。
「にゃははは!悪いね、清老頭(チンロート―)だ」
「そんな……」
はは、顔が真っ青だな。確かにここからの逆転は難しいだろうけど。それに
「イカサマしないで役満とかついてるな俺」
「え?」
「なんでもねえよ」
そう。今回は本当に自らの力で上がったのだ。これは結構うれしい。
「じゃ、終わりにしようか?」
「・・・負けませんよ?俺は」
ははは、若いっていいね~。あ、俺も若いか。
「リーチ」
「僕もリーチです」
お!おっかけリーチしてきた。こいつ面白いな~。
「ま、大人は卑怯なんですよってことだ。ツモ」
「なっ!?」
「国士無双俺の勝ちだね」
ドラもあるしこれはついてるねえ。
「そんな………」
「にゃははは!悔しかったらまた再戦しにおいで」
「…………はい」
「よろしい」
いや~。最後の試合はイカサマを全く使わずに勝ててよかった!これはかなり付いてるよ!
『き、決まったああああああ!!!』
「うるせっ!」
そこに大きなアナウンスが入る。それを合図に周りの観客もざわざわとし始める。ちなみに試合は大きな競技場の真ん中で行われ、大きなスクリーンで鑑賞できる。試合中は外の声が一切聞こえない。
満員だが、見に来る人はこの後にある戦闘系よりも少ないらしい。それでもかなりの数の観客がしゃべりだしたので騒がしい。
『優勝はバルダリア家、ソフィア・レ・バルダリア嬢の仮駒、セイジ―トウドウ!!』
『おおおおおおおおーーーーー!!!』
本当にうるさい。
『帝国第二王女の仮駒である期待の新人ディーン・ラッケル氏を退けての勝利となりました!トウドウ選手何か一言お願いします!』
司会者にマイクに似た魔道具を渡される。言うことって言われても。
「特になし。以上だ」
『・・・だけ?』
何か観客と司会者は茫然としてるし、貴族や選手は怒ってる。誤解ですよー。
「俺は全力を尽くしたし、他の奴らもそうだろう。実際いい試合だったと思う。結果は俺が勝ち、他の奴らは負け。でも人生って結果だけじゃねえと思うんだ。今日のために備えてきたことはきっとこれからの人生の糧になる。それは知識だったり状況判断だったり様々だ。それを今後に生かせるものが本物の勝者になれるんだと俺は思ってる。・・・以上だ」
『・・・』
『・・・』
何か会場がシーンってしちゃったよ。誰かー。この空気を壊して!僕泣いちゃうよ!
「素晴らしいお言葉です。トウドウ選手」
「ん?」
貴族席の真ん中に座ってるおばさんが拍手をしながら俺をほめる。照れちゃうよ?俺照れちゃうよ?いいの?
「実にすばらしいお言葉でした。司会の方続きを」
『・・・はっ。あ、ありがとうございましたトウドウ選手!それではこれでトライデント大会・知識の部を終了します!!明日からは個人大会。つまり武力の部です。それではまた明日!』
今回の話に出てきた聖獣「紅蓮」の話は、また別の話として書くかもしれません。




