追放された悪徳錬金術師、国家予算が丸ごと俺のお小遣い帳アプリに直結していたので、ハズレ素材(ゴミ)をポチったら国が滅びた件
「――レオン・ハルト!
貴様を宮廷錬金術師の地位から解雇する!」
王宮の豪華絢爛な大広間。
宰相の冷徹な宣告に、俺――レオンは盛大にため息をついた。
「はあ。やっとですか」
「なっ……なんだその態度は!
お前が国家予算を私腹を肥やすために使い込み、散財したせいで、我が国の財政は火の車なのだぞ!」
身に覚えのない濡れ衣だったが、要するに俺の作り出す最高級の魔導具やレア鉱石を独占したかった王族たちのトカゲの尻尾切りというやつだ。
「わかりましたよ。
辺境のボロ小屋に引きこもりますので、どうぞお好きに」
俺は追放劇の証書にさっさとサインを済ませると、一目散に王都を離れ、寂れた荒野へと赴いた。
数日後。
俺は、頭を抱えていた。
「くそ……王宮から追い出されたせいで、まともな錬金術の触媒が買えない……」
手元に残されたのは、自作の管理用マネーアプリ『お小遣い帳』のみ。
画面を表示させると、残高の欄にはなぜか【残高:∞(無限)】と表示されている。
「ははっ、システムのエラーかよ。
追放のショックで、俺の目もいよいよイカれちまったらしい」
アプリのバグ表示に苦笑しつつ、近くの露店やジャンク屋で買える「一番安いゴミ素材」をぽちぽちと買い漁ることにした。
「スライムの干からびた粘液、ひとつ。……っと、決済完了」
「錆びた鉄くずの山、一式。……っと、決済完了」
「変な黒い石、バケツ一杯。……っと、決済完了」
ポチポチポチポチ。
ボタンをタップするたび、アプリの謎の無限残高から金が引き落とされ、数分後にはボロ小屋の前にドサドサと「ゴミ」が山積みになっていく。
「はあ、これじゃあ高級な魔導具なんて夢のまた夢だな。
今日は錆びた鉄くずを溶かして、食器でも作るか」
俺がのんびりとゴミの山を仕分けている頃――。
王宮では、世界がひっくり返るような大パニックが起きていた。
「大変です陛下!!」
「な、なんだ騒々しい!」
顔面蒼白の宰相が、血相を変えて玉座に飛び込んできた。
「国庫の全予算と、極秘裏金庫の財産が一瞬にして消失しました……!」
「な、なにっ!? 泥棒か!」
「さらに報告が! 港に配備していたはずの最高級魔導戦艦が、一隻残らず『鉄くず』として処理され、忽然と消え去りました!」
「ふざけるな、誰がそんな真似を――!」
頭を抱える国王の耳に、さらにトドメの報告が飛び込む。
「新たな情報が入りました!
追放したはずの元・宮廷錬金術師レオンが、辺境のボロ小屋で……『スライムの粘液』や『最高級レアメタルの塊』を、ちまちまと買い漁っているとのことです……っ!」
しーん、と大広間が静まり返った。
国王の顔から血の気がサーッと引いていく。
王国の財産と、隠し持っていた裏金。
最高級の魔導兵器。
それらの所有権の紐付けが、すべて追放したレオンの「お小遣い帳アプリ」と誤ってリンク(バグ)していた。
つまり――。
王国に保管されていたはずの最高級レアメタルや戦略物資は、レオンのアプリが決済した瞬間、「購入品」として自動的にレオンの登録住所(辺境のボロ小屋の庭)へと、デリバリー錬金される仕様だった。
「あ、あの男……知っていて根こそぎ……いや、ゴミごっこをしてやがるのか……ッ!?」
国王は泡を吹いて気絶した。
その頃、辺境のボロ小屋。
「なんか知らねえけど、ゴミをポチポチ買ってたら、いつの間にか庭にめちゃくちゃ頑丈で光り輝く超金属が山積みになってるんだが……?」
首をかしげながらも、有り余る素材を使って、暇つぶしに巨大な魔法要塞の建築を楽しんでいた。
「まあ、いっか。どうせ暇だし、最高の隠れ家を作るとするか!」
ふと顔を上げると、王都の方向から、青い顔をした国王とボロボロの宰相が、泣きながら歩いてくるのが見えた。
「おいおい、あいつら何の真似だ?」
首をかしげる俺の背後で、国家予算のすべてを注ぎ込んで作り上げた最強の要塞が、まばゆい光を放ってそびえ立っていた。
お読みいただきありがとうございました!
「お小遣い帳アプリをポチポチしたら、国が滅びていた」という、全自動・国庫強奪デリバリーコメディをお届けしました。
レオン本人には悪気が一切なく、「安物で錬金術をしようとしたら、最高級素材が湧いて要塞が建っちゃった」という被害者(?)なのがポイントです。
王国側の胃痛を思うと、一読者としては最高にごちそう様ですね。
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それでは、また別の世界線でお会いしましょう!




