誕生日だけに訪れる年に1回のデレ祭り
喜んでほしい話。
〈メール〉
『今日が何の日か、覚えてる?』
「…そういや恋人だったな、私たち」
いわゆる百合というやつ。と言っても、キスしたりしたことはないんだけど。
デートはあるけど。
年に1回の、『あの子』からのメッセージ。
相変わらず絵文字なし顔文字もなしの、堅苦しい文章。『あの子』らしい、そう考えると少し微笑んでしまう。
メッセージが入ったことによるスマホの振動で目が覚める。
今日は特別な日、だからか、朝の目覚めも特別。
確か、『あの幼なじみ』は真面目な子だったはず。進学校で、偏差値も高い。高校生になったばかりの彼女が今何をしているのか、私には分からないけど。
だから、ちょっと空いても催促のメッセージが連続で入っては来ないけど、
『もちろん覚えてるよ、私の可愛い恋人さん』
すぐにメッセージを返した。
〈ケーキ買う〉
『あの高校生』は今頃1時限目でも受けているのだろうか?
『専業作家』の私は、なんとなくそう考えながら、外を歩く。
14歳でプロデビュー、高校には行かず、専業の道を。
人気は、そこそこ。親の仕送りがなくても生きてるレベル。
作家、といっても色々あるけど、私はライトノベル作家。
そもそも、小説家になろう、という基本ライトノベルを投稿するサイトで受賞したのだから。
運よく受賞、運よく1人でも生きている。
「いや、彼女がいるな」
1人だって言うと、彼女に失礼。
年に1回しか会わないけど。
てか、そもそも私たちは恋人だっただろうか? 真面目な少女と適当な私、
…、
「不安になってきた」
スマホでメッセージを見直す。
恋人再確認をし、ケーキ屋に入る。
何が好きだったか、そもそもケーキで喜んでくれたことはあったか。
分からない。
私の気分で苺のショートケーキを2つ買った。やっぱりケーキの王道は苺のショートケーキのような。
『真面目な生徒会長』と『適当な私』、きっかけは『本』だったと思う。
小学校の昼休み、場所は図書室。
いたのは、私とあの子。
2人きりの図書室。外からはサッカーをする男子たちの声とか。
なんとなく、私から話しかけてみた。
すると、気が合い。
中学生になると2人きりで『図書館を巡るデート』とか『本屋で一緒に本を選ぶデート』とか。結構デレデレだったと思う、雰囲気が。
けど、それも14歳の途中まで。
私がプロ作家になり、私は『作家』に専念、彼女は『勉強と生徒会役員』に専念。
熱の冷めた夫婦みたいな。
恋人だけど。
年に1回、『彼女』の誕生日の日だけ、『デレデレな恋人関係』に戻る。
七夕みたいな。
「…でしたっけ?」
どうも、『真面目!』て印象が。中学校では生徒会長だったし、あの子。
デレ…デレ…?
ケーキ、喜んでくれたらいいなー。
〈こんな感じだったっけ?〉
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「あの、そろそろ力、弱くしてくれません?」
「やだ」
「わあ、力がもっと強くなってしまった」
てか、こんな子だったっけ?
私は傾げる。
夕方、チャイムが鳴ったから確認してドアを開ける。
すると、いきなり無言で抱き締めてきた。もちろん私の彼女が。
年に1回しか会わないからかな? なんて、ぼちぼちの胸を感じながら、ぼんやりと考える。
『真面目』だったはず。
抱き締めをやめると、
「会いたかったよ、可愛い専業作家の恋人ちゃん」
顔を赤くし、微笑んできた。
『真面目』だったはず。
こんな百合全開! だったっけ?
私はなんて返したらいいかわからず、
「ケーキ、食べる?」
「うんっ!」
笑顔になった。
『真面目』とは。
その後、2人きりの部屋で年に1回の『恋人関係』をたっぷり味わった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




