001
『 お国のために死んでください 』
ここは地獄だ。
国民は上流国民の道具として、奴隷のように扱われる。
私は今日も生きるために必死に剣術を極める。そうでなければ次に殺されるのは私だからだ。上流階級の奴らは奴隷同士で殺し合いをさせるのが趣味らしい。
壇上に立たされ私は木刀を渡された。相手は鉄でできた剣が渡される。
どうやらこうじゃないと緊迫感が出ないらしい。上級国民は力の差が歴然で賭ける側は面白くないと、私は震える手で剣を握りながら目の前の少年に視線を送る。
「決闘始めッ!」
私は開始の合図とともに剣を全力で振りかぶった。決着は思っていたよりもすぐだった。
「勝者 19番!」
鐘の音があたりに響きわたる。私のそばにはまだ少し生暖かい少年が横たわっていた
私がしてしまったことへの罪悪感で胃の奥がぐちゃっとりと音を立てた気がした。
手についた血が私を余計に追い込ませる。
「はぁ、はぁ、ごめんなさい、ごめんなさい、」
謝ってもこの感情は消えることを知らない。日数を重ねるごとに大きくなっていく感情にもう私には限界だった。
「早く入れ」
私はおぼつかない足取りで奴隷が入っている牢屋に入れられ鍵を閉められる。傷口は痛むが治療することなんて夢のまた夢だった。
数時間が経った後複数人が近づいてくる足音が聞こえた。
ガシャンと扉が開き、きれいな服を着た人が私の前に立った。
「お前を第一部隊の一員として任命する」
出来事は突然だった。どうやらこの人は国のお偉いさんらしく私はこの国のために命をささげる騎士として任命されたようだ。こんな国の騎士になんてなりたくない。でも拒否権なんてない。
目の前で大金のやり取りが行われる。牢屋の扉が開き、乱暴に腕を引っ張られ私は軍服を着た大人に連れて行かれた。
「今日からここがお前の職場だ。」
連れてこられた場所は綺麗とは言えない建物が並んでいた。何も説明もされず気づけば私は迷子になって迷っていた。
「ねぇ、大丈夫?」
私に声をかけてくれたのは真っ白な服に身を包んだ少女だった。
「ここは初めて?」
驚いて声をうまく出せなかった私にやさしく声をかけてくれた。
「私今日初めてここにきて、いつの間にか迷子になって…」
人と話すのは久しぶりで言葉が詰まった。しかし彼女は少し驚いた顔をして言った。
「じゃあ噂の子?」
噂の子ってなんだろう。状況がいまいちわからない私に詳しく教えてくれた。
「実は今日競技場でずば抜けている子を買収しに行くって聞いたの!」
まさか女の子だとはね。そういいながら彼女は私の傷を丁寧に手当てしてくれた。
「そ、そんなことしたら汚れちゃいます、!!」
私は自分の血で彼女の真っ白な衣服を汚れてしまうのを恐れた。汚してしまったらまた殴られる、怖くて震えた手を彼女かやさしく握ってくれた。
「大丈夫だよ。私は人を殴ったり蹴ったりしない。」
そう言い彼女は私の目をまっすぐ見る。
「私ね、けがをした人を手当てするお医者さんなんだ」「だから絶対あなたのことを傷つけない」
彼女は私に小指を立て約束っと言ってくれた。初めて向けられた人の優しさに思わず涙がこぼれた。
「あはは、泣かないで~!!」
そう言って抱きしめてくれた。それは私に空いた心の穴をどんどん満たしていった。その日は彼女からこの国のことについて、私が所属した部隊のことについての説明をしてもらった。
「国には第三部隊までの騎士団があって、強い順に第一、第二、第三の順番なの」
「私が所属したのは…?」
「あなたは第一部隊だね」
「なるほど、」
第一部隊という事は戦争をしたとき最前列で戦うことになるのが私たちらしい。
「ちなみになんだけど、あなたは何歳なの?」
首をかしげて私のことをじっと見つめた。
「私は17歳だよ」
「え!同い年なの!?」
彼女は驚いたのか目を大きく見開き、手で口を覆った。
「ミナー!お前休憩終わりだぞ」
その時遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえた。
「はーい!ごめん、私もう行かなきゃ、」
ミナの声が震えた気がしたが一瞬で勘違いかと気に止めることはしなかった。
これ地図だから!と言ってどこかへ行ってしまった。渡された地図握りしめに第一部隊の建物へと向かった。




