第七話、土嚢
大盾部隊がドワーフの兵を外に押している間、周辺の建物と建物の間には土嚢が積み上げられていた。
北と東と西、三本の道があり、そこに土嚢を積み上げ守りを固めていた。途中の家屋には補強を施し、中に入りにくいようにして、屋内には兵を忍ばせてた。
ドワーフの兵は北と東と西どちらかに前進しても挟み撃ちに遭うことになる。
「放て!」
三方からクロスボウの矢がドワーフの兵めがけ飛んだ。長弓とは違い直線の威力は強い。その分装填に時間がかかるが人数でカバーした。
ドワーフは頭を下げ武器を顔の前に矢をふさぐ。ミスリルの鎧とはいえ三方から矢が飛んでくると、さすがに鎧の隙間に入り込む。倒れるドワーフの兵も出てきた。建物の上からも矢を放っている。ドワーフは人間が持っていた大盾を使い身を守った。
壁の外から、喊声が上がった。
人間の兵百人ほどが、町の別の門から出撃し、南の壁に集まるドワーフの背後を取ろうとした。傭兵団である。装備もばらばらで、士気も信用性も低いため、ドワーフに対する牽制として使った。ドワーフの兵五十がそれに対応すると、傭兵団は逃げて距離を取った。声を上げ時々攻めるそぶりを見せた。
ダレムが斧槍部隊を率い東の道を進んだ。何もしなければ、四方から攻撃を受けることになる。東に行けば東の石壁を攻めているドワーフの兵もいる。そう考え、ダレムは行動した。残りの兵は壁の近くにとどまり、穴の空いた南の壁を守った。
東の狭い道を、ダレムは斧槍を器用に操り矢をたたき落としながら移動した。道を塞ぐ土嚢の高さはドワーフの身長より高かった。背の低いドワーフにとっては乗り越えるのは少し難しい高さだった。ダレムが土嚢に近づくと人間の兵は武器を槍に持ち替えた。乗り越えようとした瞬間、槍で突き刺さそうとしていることは容易に想像できた。
ダレムは一歩手前で立ち止まり、斧槍を振り上げ振り下ろした。麻袋に土を入れ積み上げた土嚢の壁を、一閃、地面近くまで切った。麻袋から土がこぼれる。手首を返し、跳ね上げる。麻袋と中の土が飛ぶ。積み上げられた土嚢をはぎ取るように斧槍を振りまわす。じょじょに土嚢が削られ低くなっていく。
「あのドワーフを槍で突け!」
指揮官が命じた。
人間の兵が身を乗り出しダレムめがけ槍で突いた。ダレムは兜と鎧ではじき、斧槍で突き上げる。土嚢を吹き飛ばし、斧槍は人間の兵の胸元に突き刺さった。
「ひっ」
悲鳴が上がった。
少しひるんだところを、ダレムは低くなった土嚢に斧槍を突き刺すように斜めに立てかけ、その上を器用に移動し、土嚢の上にあがった。槍が数本ダレムを突いた。こぶしを固め籠手でたたき落とす、左腕の内側を槍で突かれ、顔をしかめた。ついてきた槍を引っ掴み、飛び降り、その槍で手当たり次第に突く。喉を突いた。顔を突いた。槍はすぐ折れた。別の槍を取る。後に続くドワーフの兵がダレムの斧槍の上を移動し、土嚢を乗り越えてくる。人間の兵は逃げるように下がった。
後続のドワーフは、土嚢に立てかけてあった斧槍をダレムに返し、積み上げてある土嚢をどかし通りやすくした。
土嚢の壁は、まだいくつもある。
ダレムが斧槍を振るう。突き、たたき込んだが、狭い路地であるためなかなか前に進まない。
何人かのドワーフが、石壁に設置されていた木の台をのぼり、石壁伝いに攻撃しようと試みた。人間側は何カ所かの台をつぶし、石壁に兵を配置し、それを防いだ。
南の石壁付近にいるドワーフに対して、壁の外では、傭兵団に牽制させ、壁の中からは、矢を放ち、兵を前進させ押しつぶそうと試みた。
「いいぞ! このまま押しつぶせ!」
フロスが指示を出した。
人間側の士気は高い。町を守るという使命感が強くあった。
兵の圧力が増す。南の壁のドワーフは徐々に押しつぶされていった。
人が飛んでいた。
回転しながら屋根の上に落ちた。
「なっ」
上を見た。
「んごおおおおー!」
奇妙なうなり声がした。また飛んだ。
「門が、東の門が突破されました! ドロワーフです!」
兵が、フロスに報告しに来た。
「兵を回せ!」
ドロワーフは人間の兵めがけハンマーを振るっていた。
どんどん飛ぶ。その後を、二百のドワーフの兵が続いた。
町の中央にある役場から、町の様子が一望できた。
「なんてこった。人が飛んでいる」
町長のクレカプレは町長室から外を眺めながら言った。役場は臨時の病院になっており、負傷者が続々と運ばれてきていた。役場には様々な報告が上がってきている。南の壁が破られたものの善戦しているという報告を受けたばかりだった。東の通りをドワーフたちが進軍しているのが見える。先頭に立つドワーフが奇妙な叫び声を上げながら、ハンマーで人間をはね飛ばし、あるいは叩きつぶしている。土嚢が積み上げられていれば、それをハンマーで横殴りに崩した。まっすぐに、町の中央にある役場に向かっている。
「なんで俺の時に」
クレカプレは町民の避難計画を握りしめた。




