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第五十七話、牧場跡、国軍と領軍とドワーフ


 フエネ平原北でドワーフの陣を攻めていたザレクスとリザードマン達は、ハイゼイツ率いるドワーフの援軍に対応するため、北上し、ジダトレと合流した。プロフェンは南のリボルの隊に戻った。

 ペックスは国軍三千の兵を率いてフエネ平原南に来た。その後、領軍二千を率いるリボルと話し合い、お互い協力し合ってことに当たると約束した。プロフェンはリボルの下へ合流し、騎馬隊を任された。東にいたモディオルの兵も千人ほど合流し、合計六千ほどになった。

「ドワーフの兵力は千百ぐらいですか。相手が人間であれば、どうとでもなる数字ですが、ドワーフとなると、話が変わってきますね」

 モディオルが言った。

 ペックスとモディオルは、馬上からドワーフが立てこもっている牧場跡を見ていた。

「ああ、正直頭が痛いよ。奴らからしたら、守りを固めて、二万の援軍を待てばいいわけだからな」

 ドワーフは牧場跡の石垣を崩し、守りを固めていた。

「実際のところ二万も来ないでしょうが、ドワーフなら、二、三千来ただけで、戦況がひっくり返ってしまうでしょうね」

「そうだな、それに、どこまでやれば勝ちなのか、それもわからん」

「二、三割減らせば、普通は降伏してきますが、ドワーフは違うようですね」

「フエネ平原北に立てこもっていた奴らは、三分の二以上減らしても降伏しなかった。あげくの果てに、残った兵を逃がして、指揮官が残って死んだ。攻める側としてはやっかいこの上ない」

「消耗するだけで、終わりが見えないですね」

 国境のある争いではない。火種を消すか取り除かない限り終わらない、ある種の内乱のような状態であった。

「援軍を来られないようにして、囲んじまえば、和平に応じると思っていたんだがね」

 ペックスは頭を掻いた。

「ドワーフですからね。その辺は何か違うのでしょう」

「終わったことを考えても仕方ないか」

「そうですね。バリイ領の兵はどうですか。うまくやっていけそうですか」

「指揮官は、強面の男だが、何とか話が通じそうだった。だが、兵はな、国軍はどうにも評判が悪い」

「森を燃やしましたからね」

 バリイ領の兵から見ると、ギリム山周辺の森を燃やした国軍は嫌われても仕方が無い。

「私はそれしか思いつかなかった」

 ペックスは何度も考えたが、やはりそれしか思いつかなかった。

「何とか協力し合うしかないでしょう。もはやバリイ領だけの戦ではありませんから」

「そうだな、ここまでやっておいて、負けましたってわけにはいかない」

「それで、どうやって勝ちますか」

 モディオルは牧場跡を見た。岩を積み、守りを固めている。

「必ずしも、攻めにくい場所じゃない。力攻めで潰すしかないだろう」

 平坦な牧草地、千人程度では守りにくく、六千の兵にとっては動きやすい。

「相当犠牲が出ますね」

「援軍が来る前に片を付けないと、後は政治的な動きに期待しよう」 

 その日は兵を休ませた。




 次の日の朝、ペックスは、北側から兵を進ませた。バリイ領軍は遅れて西側から兵を進めた。

 一キロほど離れたところに、矢盾をたて、拠点を作った。ドワーフ側に動きはない。

 牧場跡の中には、溝や防壁があったがドワーフはそれらを壊し埋めていた。深い溝や中途半端に高い防壁は、背が低く、手足の短いドワーフにとっては都合が悪かった。

 牧場跡はリボルが立てこもっていたときより、二回りほど小さくなっていた。石と土で低いが分厚い壁を作り、周りに少し浅い溝を掘っていた。

 ペックスは弓矢隊を前に出し、矢を放った。矢は放物線を描き、ドワーフの陣に降り注いだ。

 ドワーフは気にした様子もなく、矢がドワーフの鎧兜にはね返される音が響いた。

「動揺した様子もないな」

 普通は少し慌てるものだ。指揮官が声を荒げ、兵に指示を出し、時には落ち着かせる。陣地に矢が飛んでくるという状況はそういうものだ。

「鎧兜に自信があるんでしょう」

 モディオルが自分の兜を叩いた。軽い音がした。

「ミスリルではないとは言え、ほとんどの兵が鋼の鎧兜を着ているからな」

 六千の人間の兵の中で、まともな鎧兜を着ている兵は、千人も満たない。

「あれと戦わなくちゃならないんですね」

 モディオルがいやそうな顔をした。

「バリイ領の連中はよくやったよ」

 ペックスは歩兵を進めた。国軍を二つに分け、ドワーフから見て、北と東から進軍させた。バリイ領の兵は、西側から進軍させた。北西東、三方から攻めた。


 人間の兵が近づくと、ドワーフの陣から、クロスボウの矢が飛んできた。盾で防ぐ。矢を防ぐための大きな木の盾を先頭集団に持たせている。ドワーフは、滑車を使わねば引けないような弦を指で易々と引いた。放たれる。木の盾に突き刺さる。盾の隙間をぬい、人に当たると深くめりこんだ。

 人間の兵は徐々に壁に近づいてきた。

 ドワーフの兵は壁の上から、クロスボウで人間を狙う。人間は盾を上に構え、壁の上から放たれる矢を防ぎながら前進する。

 壁の近くまで近づくと、ドワーフは武器を斧槍に持ち替え、上から盾を叩きつけた。盾が割れる。割れたところを、矢で狙う。

 盾を持った兵の間を、槍を持った人間の兵が前に出る。槍の刃先にもう一つ、下向きの刃がついている。鎌槍である。それを壁の上にいるドワーフに打ち付ける。何度かすると鎌槍の鎌の部分が、ドワーフの鎧に引っかかる。引く。力比べになる。一人の力ではドワーフには勝てないが、四、五人でそれをやる。防壁の上から引きずり落とす。

 壁の下に落ちたドワーフを、鎌槍で叩く。それを助けようと降りてきたドワーフも叩く。

 血が流れる。




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