第四十八話、壁
フエネ平原北
領主とケフナが戦後のドワーフとアリゾム山の扱いについて話し合いをしているあいだもフエネ平原北では、戦いは続いていた。
「矢を放て!」
石を投げようと、体を出したメロシカム目がけ、十人ほどの人間の兵が矢を集中的に放つ。
「くそ!」
メロシカムは無くなった左腕の代わりに付けている盾に身を隠す。矢は盾に弾かれる。投石をしてくるメロシカムを集中的に狙っていた。
クロスボウを持ったドワーフの兵が防壁の上からうちかえす。人間の弓兵は慌てて、盾を持った兵の後ろに身を隠す。木片が飛ぶ。木盾にいくつもの矢が突き刺さる。ドワーフのクロスボウは距離と角度によっては、鋼の鎧を貫く威力がある。
「崩せ!」
ザレクスが命じた。歩兵隊が壁に取り付き、西側の壁を全体的に崩していた。西側の扉はすでに壊されており、土嚢が積み上げられていた。
大盾を持った大型のリザードマンが壁に近づいた。盾の下半分は鉄の板が張られている。
ドワーフはリザードマン目がけ矢を放つ、盾でふさがれる。メロシカムも石を投げようとするが、人間の弓兵の斉射により動きを止められる。大型のリザードマンの身長は三メートル前後ある。壁は二メートル程度しかないため、大型のリザードマンの方が大きい。盾を前に、槍を持ち上げ、壁の上にいるドワーフの兵めがけ、やりを投げる。まともに当たった兵は、はじき飛ばされる。しかし、ミスリルの鎧を身につけたドワーフは起き上がる。
隙を見て、メロシカムは石を投げつけた。大型のリザードマンの顔面に当たる。歯が飛び、のけぞる。ふらふらと後ろに倒れる。メロシカムめがけ矢が放たれる。慌てて隠れる。
大型のリザードマンの後方から、梯子を持った中型のリザードマンがあらわれた。次々に梯子を壁に掛ける。
中型と言っても二メートル前後ある。二、三歩梯子をのぼっただけで壁よりも高くなる。ドワーフは、はしごを外そうとするが、中型のリザードマンのほうが背が高いため、槍の射程圏内に入る。ドワーフは突かれ、壁の上から転がる。中型のリザードマンは次々に壁の内側に入る。
他の壁でもリザードマンや人間が壁を乗り越えてくる。ドワーフとの乱戦になる。こうなるとドワーフの方が強い。斧で切り刻まれる。
人間とリザードマンは無理に攻めず、壁を崩すことに専念する。壁の資材が抜かれていき、所々くずれていく。
半壊した壁の向こうにハンマーを持ったドワーフが立っていた。ドロワーフである。
人間とリザードマンの兵におびえが広がる。
壁を崩す手を止め、ジリジリと引き下がる。
ドロワーフはハンマーを高々と上げ、崩れた壁を乗り越え外へ出た。
「だっひゃあああーん」
飛び上がり、ハンマーを振るう。
人間の歩兵に当たる。
斜め上から振られたハンマーは、人間の兵の腕に当たり、その腕をへし折り、体は半回転する。
一斉に兵が退く。
「おい! あの馬鹿、外に出ちまったぞ!」
メロシカムが叫ぶと。
「奴のことはかまわん。壁を補修しろ!」
ダレムは命じた。ドワーフが土嚢を半壊した壁に向かって放り投げる。
ドロワーフは奇声を発しながら、ハンマーを振る。当たれば死ぬ。ドロワーフは攻撃を兜で受け、時に避けながら近づく。体がぶつかりそうな距離で、ハンマーを振るう。当たる。吹き飛ぶ。おびえが広がる。
半壊した壁が埋まる。
「ドロワーフ!」
ダレムが土嚢の上から、槍斧をドロワーフに向かって伸ばす。ドロワーフはそれを掴む。ダレムはドロワーフを持ち上げ壁の外から中へつり上げた。
「ひょう、助かったぜ」
「無茶をしよって、だがよくやった」
ダレムはドロワーフの兜を叩いた。
「だろ」
ドロワーフは赤毛をかき笑った。
日が暮れるまで攻防は続いた。
血と土埃、木材と石材を組み合わせた壁は、所々土嚢に変わり、まともに動けるドワーフは百人程度に減っていた。それでも、ドワーフは持ちこたえた。




