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第四十二話、投げやり

 アリゾム山

 

 スープの中にはわずかな肉が入っていた。味も薄い。ゴキシンが取ってきたのか、山菜が入っていた。アリゾム山の中腹でドワーフの兵が食事をしていた。

「やはり苦いな」

 オラノフは緑色の細い山菜をつまみながら言った。

「オロノフ様、少しお話が」

「どうしたノードマン」

 ノードマンはオラノフが軍人であった頃からの部下である。

「ゴキシン殿のことですが、信用してもいいんですか」

 ノードマンはオロノフの近くに座り小さな声でしゃべった。

「ゴキシンか、グルミヌの手のものであるというのは少し気になるが、信用してもいいと思っている」

 実際のところ、信用できない部分があったが、部下に余分な疑惑を植え付けかねないと、ひかえた。

「裏切るとまで思ってはいませんが、ゴキシン殿は、人と、いすぎたのでは、五十年は長い、情が移ってしまうこともあるのでは無いでしょうか。どこかでそれが徒となることもあるのではないでしょうか」

 ノードマンは真剣な面持ちで言った。ゴキシンには、ときどき、アリゾム山の山岳部隊を懐かしむような言動があった。

「ふふっ、あるかもしれんな」

「なら、あまり信用なさらぬ方が」

「それを言うなら、私たちも同じではないか」

「どういうことです」

「軍人として人に使えていた」

「確かに」

 目をそらした。王が変わると体制も変わる。王が変わりノードマンたちにとっては、途端に居心地の悪いものになった。

「人とドワーフの縁は深い。よき隣人であり、友でもある。我らにとって、それが徒となることもあるだろう。そういうこともある。そう思うしかないだろうな」

 オラノフは言った。




 フエネ平原北、人間とリザードマン


 フエネ平原北では、大型のリザードマンが、即席の的に向かって槍を投げていた。

 リザードマンのルドルルブがザレクスに投げやりはどうだろうかと提案した。リザードマンは銛で魚を突くため、投げやりの技術を持っていた。投げやり用の槍は、人間が使っている槍を使っている。ザレクスはおもしろいと、試してみることにした。


 歩兵を前に進ませ、少し離れたところから、盾と槍を持った大型のリザードマンを進ませた。

 ドワーフの矢を防ぎながら、リザードマンは槍を防壁の上にいるドワーフに向かって投げた。壁の高さは二メートル前後、三メートル前後の大型リザードマンの方が高い。ミスリル合金の鎧を身につけたドワーフに、致命傷とはならないが、うち付けるように投げられた投げやりに当たったドワーフは、防壁の上から落ちた。投げやりの補給は、小型のリザードマンが行った。

「ほう、いいじゃないか」

 ザレクスは結果に目を細めた。

 投げやりでひるませている間に、人間の歩兵隊は近づき、破城鎚を扉に打ち込んだ。幾度か打ち付けていると、扉のかんぬきがへし折れる音がした。

 扉が内側に開いた。

 歩兵隊がなだれ込む。

 行き良いよく入り込んだところで、人間の歩兵が一人、後ろに吹き飛んだ。

「へんぐらー!」

 扉の内側でドロワーフが待ち構えてた。ハンマーを振るう。兵が吹き飛ぶ。

 人間の兵に怯えが広がるが、ベネドが檄を飛ばし兵を励ました。

 歩兵隊を陣の中に送り込む。それをさせじと、ドワーフとの押し合いになる。

 どうしたものかと、ザレクスは悩んだ。

 そのまま総攻撃を仕掛け押しつぶせばいいのだが。

「待ち伏せっぽいよな」

 つぶやいた。

 扉をわざと開かせて、陣の中に引きずり込んで、殲滅する。

 そういう策があるのでは無いかと、不安になった。

「そうじゃない可能性もありますよ」

 ベネドが言った。

「そうなんだよな」

 慎重に行きたいところだが、時間を掛ければ、ドワーフの援軍が来る。ひょっとしたら二度と来ないチャンスなのかもしれない。だが、失敗したら、ドアーフの陣をつぶせるだけの兵力を失うかもしれない。

 扉の入口付近で押し合いになっている。

 別の場所から大型のリザードマンに、壁を乗り越えさせ、一気に攻めれば、かなりの犠牲は出るが、落とせる。かもしれない。そうすれば、この戦いが終わるのだ。

 悩んだ。

 奇声と共に、また一人、歩兵が飛んだ。

「退かせろ」

 命令した。



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