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第三十九話、援軍の使い道

 アリゾム山


「援軍か」

 デノタスは、領軍指揮官であるリボルが五百の援軍を送ったという報告をマッチョムから受けた。

「ええ、ドワーフがアリゾム山に向かって移動したので、援軍を出してくれたようです」

 マッチョムは答えた。

「ありがたいが、山に慣れていない兵が来られても、足手まといになりかねないな」

 砦無き今、アリゾム山山岳部隊にとって有利な点は、見つかっていないことだけだ。山に不慣れな兵を入れれば、それだけ見つかるリスクが増えることになる。

「しかし、追い返すわけにもいかないでしょう。戦況によっては必要になるときも、あるやもしれません」

 副官であるエンペドが言った。

「しかし、どう使う。五百ぽっちじゃ、迂回して、ドワーフの背後を襲わせても、返り討ちに遭うだけだ」

「そう、見せかけるだけでも、効果はあるかもしれません」

「そうだな、糧道を断つことぐらいできるかもしれんなあ。半数はドワーフの背後に立たせて、もう半数は、何か使い道ができるまで、どこかに置いておくか」

「それでよろしかと」

 しばらく、援軍の使い道について議論した。



 フエネ平原北、人間


 フエネ平原北ではリザードマンの陣形について、いくつか試していた。リザードマンの尾打を活用するため、幅を広くとったり、斜陣なども試した。ドワーフは砦の中に立てこもっているため、それらを実戦で試す機会は、まだ無かった。

「また立てこもってしまいましたね」

 副官のベネドが言った。

「そうだな」

「悪口を言っておびき出しますか」

「勘弁してくれ、もうあんな汚い言葉は口にしたくない。そもそも、同じ手に引っかかるとは思えない。一枚一枚、防壁を剥いでいくしかないだろう」

 ザレクスは、いやそうな顔をした。

「しかし、あまり時間はありませんよ。奴らの援軍が来た時点でこちらは圧倒的に不利になります」

 北のヘドリル山方面から、ドワーフの援軍が来ているという報告があった。

「そうだな、兵の数はこちらの方が多い。兵を三つに分けて、休みなく攻めさせろ」

「わかりました」

「しんどい戦いになりそうだな」

「奴らもそう思っていますよ」

「だといいんだが」

 ザレクスは、胸元にぶら下げている妻の肖像画が入っているロケットを触りながらつぶやいた。



 アリゾム山、ドワーフ


 人間の兵が、アリゾム山のふもと、オラノフの部隊の背後に陣取ったと聞き、オラノフは百人ほど、兵を山とのふもとに残し、背後からの攻撃に備えた。残りの五百で、アリゾム山を攻めることにした。

「彼らは食糧をどうしているのでしょうか」

 オラノフはゴキシンに聞いた。

 燃え尽きた砦の中から、焦げた食糧が見つかった。ゴキシンが砦の食糧に毒を盛ったのではと考え、人間は砦を食糧ごと燃やしたのではないかと、オラノフ達は推測した。

「所持しているものがあるでしょうが、彼らは山岳部隊です。冬なら別ですが、この時期なら、百五十人程度、一月や二月は山の食材で、すごすことができるでしょう」

「山を味方にしているということですか。こちらは、ちとまずいことになりそうです」

 短期決戦を考えていたため、食糧問題に不安があった。うまく食いつないでも二週間程度の食糧しかなった。

「私も、長年この山に暮らしていますから、食糧ならある程度は確保できますよ。山菜とかね」

 ゴキシンは少し笑った。

「山菜ですか。苦いのは、ちと苦手です」

「ほっほっ、好き嫌いはよくありませんぞ。私が腕によりを掛けて山菜料理をつくって差し上げます」

「ご馳走になる前に奴らを見つけたいものです」 

 辺りを見渡した。木々に覆われ、視界は悪かった。

 オラノフは山の中で拠点をいくつか作りながら、斥候の兵を出していたが、まだ、山岳部隊は見つからなかった。



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