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第三十四話、リザードマンの扱い方

 フエネ平原北ドワーフ


「リザードマンが敵に回ったようだ」

 フエネ平原北で陣を構えるダレムは、見張り台の上から人間の様子を見ながら言った。

「ああ、一番やっかいなのが出てきたな」

 メロシカムは言った。隻腕の傭兵だ。

「ほう、どれどれ」

 ドロワーフは見張り台から身を乗り出した。

「狭いから暴れるなよ」

「おっ、ずいぶんでかいのがいっぱいいるじゃねぇか」

「でかい上に力も強い」

「あの大きさなら、壁をよじ登って乗り越えてきそうだな」

 壁は人を想定して作っている。

「ばかでかい盾を持っているな。盾で矢を防ぎながら、壁に近づいてこられるとやっかいだな」

「壁を使って、近づいてくるやつを一人ずつ始末していくしかないんじゃないか。それなりに頑丈なものができている」

 戦闘がないあいだ、壁の補強にいそしんでいた。

「外でやり合えばいいじゃねぇか」

 ドロワーフが言った。

「相手は人間じゃないんだぞ。リーチも長いし力も強い。近づく前に槍でどつき殺されるだろうが」

 メロシカムが言った。人間の腕力なら、兜の上から槍でいくら殴られても、平気だが、リザードマンの腕力となると自信が無かった。

「うまいことよければいいじゃないか。ひょいってな」

 ドロワーフは頭を左右に動かした。

「奴らは普段からモリを使って魚を突いているんだろ。槍の扱いには慣れているんじゃないか」

「魚突くのとドワーフ突くのと一緒にしちゃいけねぇ。漁と戦争は別もんだ。素早く近づいてドカンよ」

 ドロワーフはハンマーを振り回す仕草をした。

「狭いから暴れるな」

 ダレムはドロワーフの肩を抑えながら言った。

「いくら頭で考えたってよ。わからねぇもんはわからねぇぜ。一度試しに戦ってみるしかねぇよ。そうじゃなきゃ作戦も立てられねぇだろう」

「うーん、どうする。残念だが、ドロワーフの言うことは一理あるぜ。いきなり決戦なんてことになるより、相手の力を推し量っておいた方がいいんじゃないか」

「確かにな、ドロワーフの言う通りかもしれん」

 ダレムが言った。

「だろ、俺に任せておけ」

「それが一番不安なんだよ」

 メロシカムは顔をしかめた。



 フエネ平原北、人間とリザードマン


 ザレクスは、リザードマンの取り扱いに悩んでいた。傭兵として出稼ぎに出ていた者もいるらしく、個々の強さは目を見張るものがあったが、団体での戦闘となると、まとまりがなかった。装備も心許なかった。

「父上の知り合いとなると、捨て石にもできんしな」

 ザレクスは呟いた。営舎の中である。ザレクスと副官のベネドしかいない。

「力は強そうですけどね」

 副官のベネドはいった。

「個々の力では、戦には勝てん。相手はミスリルの鎧を着たドワーフだからな」

「体格もバラバラですからね」

「ああ、大きいやつと小さいやつに差があるな。とりあえずそれを分けないと」

「そうですね」

 部隊を分け、即席で調練をすることにした。

 一息つけようということになり、茶を飲んだ。柑橘系の香りがした。

 ザレクスの妻マデリルが持たしてくれたものである。

 ザレクスは胸元に手を入れ、首から鎖でぶら下げているロケットを取り出した。ロケットにしては大きく、手の平ぐらいの大きさがある。ふたを開けると、女の肖像画があった。ザレクスの妻マデリルの肖像画で、わざわざ著名な画家を招いてかかせたものである。

 ザレクスはそれを見ながらにやけた。

 副官のベネドは、紅茶をすすりながら、あきれた様子で見ていた。


 四百のリザードマンはベネドの指揮に入ることになった。

「いいですか。ルドルルブさん隊列を維持することを心がけてください」

 ベネドはリザードマンに隊列を組むことを教えていた。

「了解した」

 リザードマン達はまっすぐ列になった。横から見るとリザードマンは長く大きく見えるが、正面から見ると、リザードマンは肩幅が狭く意外と細く見えた。もっている長盾が体をすっぽりおおっている。

「いいですね。そのまま密集して盾で壁を作ってください。そうです。盾で体を守りながら、槍で攻撃してください」

 三メートルある大型のリザードマンが盾を持って密集している光景は圧迫感があった。盾の隙間から突き出される槍は鋭く、上から下へ体重が乗っていた。

(これは、いけるかも)

 盾で壁を作り槍で遠くからドワーフを突く。殴るのもいい。槍を軽々と扱っている。

「ベネト殿、密集しているとしっぽが使えないがなんとかならないか」

 リザードマンを率いているルドルルブが言った。リザードマンには尾打というしっぽを使った技がある。

「それは我慢してください。ドワーフには近づかないことが大事です。盾を壁に、槍で突いてドワーフを近づかせないことが大事です。奴らは斧で木製の盾なら壊せます。この盾なら分厚いし頑丈でしょうから易々とは壊せないでしょうが、近づかない方がいいです」

「わかった。隊列を組み、盾で身を守り、槍で近づかせない」

 リザードマン達は頷いた。

「第二部隊の皆さんは、我々についてきてください。第一部隊がドワーフの足止めをし、我々が横からつく、そういう作戦です」

 大型のリザードマンを第一部隊、中型を第二部隊、小型のリザードマンは予備兵にして第三部隊とした。

「あなた方についていく」

 第二部隊の指揮官が言った。二メートル前後の中型のリザードマンである。リザードマンは年とともに体が大きくなる。まだ若い個体である。

「お願いします」

 リザードマン達は静かに隊列を組み、盾の陰から槍を突く練習をした。



 ギリム山、ドワーフ


 山の中腹から見ると遠くまでよく見えた。ギリム山から離れた西と南西の森に火が放たれていた。森は水を蓄え風を和らげ、食べ物を与えてくれる。

 ガロム達、ギリム山のドワーフは、森を守るため、噴火したさいの溶岩の通り道を作り、噴火の被害をやわらげるよう、不眠不休で穴を掘っていた。

 人間が森を燃やすことがわかっていたら、溶岩の通り道など掘らず、もっとたくさんの兵で攻め込むこともできた。

 ギリム山の指揮を任されているガロムは歯がみした。

「通れそうなところはなさそうか」

 ガロムが言った。風もなく、火が森を静かに呑み込んでいた。

「近づけるところまでいってみましたが、道は完全に火でふさがってました」

 ガロムの部下が言った。国軍は森の街道を重点的に燃やしていた。

「いちかばちか森の中を突っ切るしかないんじゃないか」

 赤ら顔、白髪のドワーフが言った。

「ハイゼイツ殿、それは難しい。火は広範囲にわたって放たれている。森を移動中に火に巻き込まれる可能性がある。火をかいくぐって兵が移動できたとしても、食糧が移動できない。背に物資を担いでもっていくことも考えたが、鎧を着けての移動となると、たいして運べない。兵が増えて食糧が足りなくなるなら、いかない方がいい」

「だが、行かないことには、この戦は負けだ。雨が降る気配もない。いそがないと」

 ハイゼイツは鼻をむずむずと動かした。

「焦る気持ちはわかるが、そう易々と討ち取られるような人たちではないでしょう」

「それはわかっておる。わかっておるが、心配なんじゃ。こんなことなら王とともに行くべきだった」

 体を揺らした。

 ハイゼイツは長年ドルフに使えてきた男だ。少し落ち着きのないところがあった。

「むしろ、問題はフエネ平原北のダレム殿でしょう」

 伝書鳩を使って連絡は取り合っている。リザードマンが参戦したという話も聞いている。

「ダレムか、確かにそうだ。精兵とはいえ、数は少ない。何とかしなくては、森を迂回して、北側のルートをとればどうだ」 

「いけると思うますが、ちと、遠回りになります」

「ダリルのいるフエネ平原まで、どれぐらい時間がかかる」

「いくら急いでも十日ほど、ヘドリル山を通らなければならないので、かなり険しい道になるでしょう」

「わしにいかせてくれないか。ここで、待っているより動いた方がましだ」

「わかりました。兵と物資を用意しましょう」

 ガロムはしばし考え答えを出した。

「おお、ありがたい。わしに任せておけ、なんとしても兵と物資を届けてみせる。十日か、フエネ平原の連中がそれまでもってくれればいいが」

 ハイゼイツは、うろうろとその場を歩き始めた。



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