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第二十五話、バナックの失敗


 歩兵とレマルクの騎馬隊によってドワーフのムコソルの兵は数を減らしていた。

「ボリジ殿、ムコソルの援軍に行ってきてくれ」

 ドルフはムコソルの軍を攻撃する歩兵に対応するようボリジに指示を出した。

「承った」

 ボリジは銀色のミスリル鎧を身に、三百ほど引き連れ向かった。

 レマルクは歩兵を二つに分けボリジの部隊に対応した。ボリジは先頭に立ち、長めの戦鎚を振り回した。ぶつかると人間側の歩兵は大きく崩れた。

「下がれ!」

 歩兵隊の指揮官であるスプデイルが命じた。逃げるように大きく下がる。

 追い打ちをしようとボリジは前に出るが、ドワーフの足の遅さのせいで追いつけない。人間側の被害は少なかった。

 ボリジの部隊に、レマルクは騎馬隊を絡ませ足を止めさせた。その間、人間の歩兵は体勢を立て直した。

「押し返せ!」

 歩兵隊の指揮官であるスプデイルは、兵に盾をもたせ、ボリジに対応した。


 ドワーフはハンマーで石垣を崩そうとしていた。元オオカミよけの石垣は、人にとってはさほど高くなく、ドワーフにとっては乗り越えにくい高さであった。人間は石垣の上から、槍で、ドワーフを突き、殴打する。ドワーフはそれに耐えながら、石垣を崩そうとする。

「叩け! 突け! 奴らを内側に入れるな!」

 スタミンは槍でドワーフを突きながら言った。スタミンは身長二メートルはある大男である。怪力のドワーフといえど、その突きに、まともに当たれば吹き飛んだ。

「おら!」

 槍を手に馬に乗ったバナックが、傭兵団の騎馬隊をつれ、突撃を繰り返していた。数としては百騎程度、装備も馬の大きさもばらつきがあった。

「バナック、深追いしすぎるな!」

 リボルは声を上げた。リボルも騎馬隊を出していたが、目的はドワーフの軍の牽制である。攻めるそぶりを見せ勢いをそぐつもりであった。バナックは少し突っ込みすぎていた。

 聞こえていないのか、バナックは無茶な突撃を繰り返していた。リボルは伝令をだし、騎馬隊を下げるよう命じた。


「小うるさい蠅がいるな、オラノフ、かたづけてくれないか」

 ドルフは言った。

「はっ」

 命じられたドワーフは薙刀を手に兵を百人ほど引き連れバナックの騎馬隊へ向かった。

 褐色の肌に青い瞳、オラノフは人間の軍で指揮官としてつとめていたことがある。世代が変わった国王と折り合いが悪くなりやめた。何人かドワーフの兵がオラノフについてきたため、オラノフの部隊は動きに統一感があった。

 オラノフはドワーフの緩やかな隊列の中、兵を紛れ込ませるように進み、突撃してきたバナックの騎馬隊の前に立ち、薙刀で馬の足を切り落とした。オラノフの兵が一斉に騎馬隊に襲いかかる。

「くそ!」

 バナックの騎馬隊の動きが止まる。ドワーフに取り囲まれる。脱出しようと、兵をまとめ、外に出ようとする。


「間抜けめ!」

 スタミンは兵を連れ、石垣を乗り越え、バナック達がいる方角へ走った。バナックの騎馬隊はドワーフに囲まれ馬を斬られ数を減らしていた。

「どけい!」

 スタミンは槍を振るった。ドワーフの兜を叩き突き倒しながら、前に進む。

 バナックはスタミンに気づき、スタミンが向かってきている方角へ兵を引き連れ移動した。バナックの馬はすでに斬り殺されていた。他の兵も同じような状態だった。

 リボルは騎馬隊を率い、バナックの騎馬隊救出に向かった。何度か突撃を繰り返し、ドワーフを散らし逃げ道を作る。

 バナックは這々の体でスタミンに合流し、石垣の中に退却した。バナックの騎馬隊は半数以上討ち取られ、馬は三分の一しか生き残らなかった。救出に向かったスタミンの兵も、二十人ほど討ち取られた。

「あ、ありがとうございます。助かりました」

 バナックは血と土汚れにまみれた顔でいった。

「間抜けめ。功を焦りおって、己がやったことをよく見てみろ」

 バナックは仲間の傭兵の様子を見た。傷を負った自分の仲間がいた。助けにいったスタミンの歩兵も傷を負っていた。当然ながら、帰ってこなかった者もいる。

「すまない」

 バナックはこぶしを握りしめうなだれた。




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