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第二十四話、牧場跡の戦い

 牧場跡


 このあたりには、小さな集落があったが、盗賊に襲われ、住んでいた人間は移住を余儀なくされた。壊れた建物の跡がところどころにあった。

 古い牧場跡があったので、リボルはそこに陣を敷いた。崩れかけたオオカミよけの石垣があったので土嚢と木材で補強し守りを固めた。

「だんな、野営の設置は終わりましたぜ」

 傭兵団、岩場の谷、団長のバナックが言った。傭兵団全体の指揮を任せている。

「そうか、ご苦労だった」

 リボルが言うとバナックは薄ら笑いを浮かべながら下がった。

「よろしいのですか、あのようなものに指揮を任せても」

 歩兵の指揮を任せているスタミンが言った。四十半ばのガッチリとした背の高い男である。

「仕方あるまい。傭兵どもをまとめるものが必要だ」

 急遽かき集めたため半数以上の兵が傭兵になっている。その中で、比較的規模が大きく、ある程度名の通っているバナックに、傭兵団全体の指揮を任せた。

「あの男、盗賊崩れとか、あまりいい噂は聞きません」

「そうだな、だがまぁ、金を払っている限りはなんとかなるだろう」

 そう、リボルはいったが、その金が厳しかった。出ていくばかりで今のところ入る見込みはない。噴火の情報が事実なら、その後も金が出ていくことになる。だからといって、兵の数が足りなければ、ドワーフを倒すことはできない。

 アリゾム山へ進むドワーフをリボルが足止めし、レマルクが背後を取り騎馬隊で蹂躙する。そういう作戦を立てていた。

「さて、ドワーフはどう出るか」

 リボルはドワーフの陣を見つめた。




 ドワーフ


 ドルフは、北のレマルクの軍を無視して、西のリボルの陣に兵を進めた。ドワーフたちは緩やかな隊列を組み、西のリボルの陣に迫った。

 リボルの軍は補強した石垣から、ドワーフの軍に向けて矢を放った。ドワーフは斧を顔の前に掲げ矢を防ぎながら近づく。

 ドワーフの軍が石垣に近づく。

「槍隊前へ」

 歩兵の指揮を執るスタミンの指示で弓矢隊が下がり、槍隊が前に出た。石垣越しに槍で突く。人間の腰ぐらいの高さである。ドワーフは槍を斧で払う。ハンマーをもったドワーフの兵が石垣に近づいてくる。槍を兜で受け流しながら、石垣にハンマーを打ち付ける。石垣と言っても簡易なものだ、簡単に崩れる。

 ドワーフの背後から馬蹄の音が響く。北にいたレマルクの騎馬隊がドワーフの軍の背後に近づいてきていた。

「ムコソル、騎馬隊の対応を頼む」

 ドルフは命じた。

「わかりました」

 ムコソルは五百ほど兵を連れ、レマルクの騎馬隊の前に立ちはだかった。

 三百の騎馬隊とぶつかる。

 レマルクはドワーフの兵の間を駆け、左に抜けた。

「緩いな」

 レマルクはいった。

 斧を振り回すためか、ドワーフの兵は密集しておらず、中を割りやすかった。ドワーフの強さも、フエネ平原にいたドワーフより一段落ちているように感じた。

 レマルクは、騎馬隊を休ませ、歩兵を千人ほど前に進めた。三分の二以上新兵と退役兵がしめている。その中にサロベル湖の漁師であるプレドがいた。

「あわてるな! ゆっくりでいい」

 歩兵の指揮をしているスプデイルという口ひげを生やした男が言った。

 プレドは槍を手に震えながら前に進んだ。異常なほどの熱気があった。それでも震えは止まらなかった。少し離れたところにドワーフの軍がいる。歩兵のあゆみはずいぶん遅くかんじた。

 じりじりと近づいていく。喚声が上がり前に進む力が強くなった。前の方いる兵が我慢できず走り出した。

「待て!」

 歩兵の指揮官であるスプデイルが叫んだ。

 止まらない。全体が動き出す。音がする。金属、叫び、近づいてくる。血飛沫。

 出したことのないような声がプレドの喉から出た。後ろから押されるように前に出る。死体を踏みつける。たすけて、というような声を聞いたような気がする。前にいる人間の数が減った。ドワーフがいる。斧を持ったドワーフが見える。

「ちょ、ちょ」

 止まらない。前にいた人間が、横に倒れる。腹を斧でさかれている。ぷしゅぷしゅと、水が漏れるような音がした。血の匂い。ドワーフがしっかりプレドを見ている。次は俺。プレドは声を上げ、槍で突いた。ドワーフは槍を兜で受けた。軽い音を出し槍はそれた。ドワーフがすぐ目の前に、斧を振りかぶり、プレドの腹に肩がぶつかるぐらいの距離にいる。叫び声が漏れる。

「ひぃいいい」

 転がる。地面。頭に軽い衝撃を受けた。兜が飛んだ。ドワーフの斧がプレドの兜をはね飛ばした。ドワーフは斧を振りかぶった。地面に転がるプレドは両手を前に、目をつむる。

 何も起きない。

 目を開ける。ドワーフの喉に槍が刺さっていた。

 ゴプリが槍で刺した。プレドと少し話をした老兵ゴプリがドワーフの喉に槍を刺したのだ。

「ひょい」

 ゴプリは刺さった槍を抜いた。ドワーフが倒れた。

「ああ、あああ」

 プレドは礼を言おうとしたが、言葉がまるで出てこなかった。

「いいか、よく見ておけ」

 ゴプリは槍を片手に、ひょええええ、と奇妙なかけ声をだした。槍先を地面すれすれに構え、向かってくるドワーフの腕と腕の間をすり抜けるように槍を突き上げる。ドワーフのひげ、あごの下辺りに槍が刺さる。少し押し込み回す、引き抜くとドワーフは血をまき散らし倒れた。

 別のドワーフがゴプリ目がけ突っ込んできた。ゴプリは石突きでドワーフの膝頭を突き、転ばせ、首の後ろを槍で突いた。長斧を振り回し向かってくるドワーフがいた。ゴプリは槍先で軽くあわせながら、大ぶりになったところ、ドワーフの右側に倒れ込むようにしながら脇の下を突いた。持ち上げるように深く突くと心臓に達したのか動かなくなった。ゴプリは瞬く間に三人のドワーフを倒した。

「た、達人かよ」

 プレドは唖然とした。



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