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第二十話、南西


 ソロン


 領主のイグリットからの親書を携え、ソロンとヘセントは、ドルフに会うため、ギリム山に向かい馬を走らせていた。

 途中、領主からの使者が追いついてきて、ドルフ王が、ギリム山を出発したと連絡があった。

「南下しているのか」

 ドルフ王率いる二千のドワーフは、西のフエネ平原に向かわず、南西に向かっていた。

「援軍ではないのでしょうか」

 ヘセントは首をかしげた。フエネ平原ではドワーフの兵とリボル率いる騎馬隊が戦っていると聞いていた。援軍ならば、まっすぐ、西に行き、味方に合流するはずだ。

「ドルフは素直な男だが、その配下のムコソルは知恵の回る男だ。何か策があるのかもしれんな」

「どんな策でしょうか」

「わからん。それも聞いてみればわかる」

 ソロンは馬を急がせた。




 フエネ平原


「どこに行こうというのだ」

 ギリム山を出発したドワーフの軍が南西に向かっているという報告を、リボルも受けていた。

「南西から迂回する理由もないでしょうし、南に抜けて、港を攻める気でしょうか」

「フネイルか、だが、そこまで行くと別の領地だぞ。バリイ以外に宣戦布告をしたという話も聞いていない。敵をわざわざ増やすようなことをするだろうか」

「南に太い道がありますが、そこを通ってどこかへ行こうとしているのかもしれません」

 レマルクは地図を見ながらいった。

「その道を進めばどこに出るのだ」

「いくつか道は分かれています。南に行けばフネイル、西に進めばアリゾム山でしょうか」

「付近にいる兵に警戒するように命じよう。アリゾム山には山岳部隊がいたはずだ」

「われわれはどうしますか」

「フエナ平原のドワーフと合流する気なら、歩兵を置いて、騎馬隊でドワーフの兵二千を足止めしようと思っていたが、こちらに合流する気が無いとすると、どうしたものか」

「フエナ平原のドワーフを叩くというのもよいでしょうが、二千のドワーフを放っておくというのも、恐ろしいものがありますな」

「そうだな、かといって、狙いのわからん二千のドワーフと戦うのも、正直いやだ。どこか明後日の方向にでも行ってくれればありがたいぐらいだ」

「そうなってくれればいいですけどね」

「ドワーフの王はフエナ平原の兵をどうする気なのだろうか。捨て石にする気なのか」

「どうでしょう。さすがになんの目的もないということはないでしょう」

「目的はわからないが、フエナ平原に残っているドワーフは死ぬまで戦う気なのだろうな」

「ドワーフですから」

 レマルクはいった。



 領主 


「ドワーフはどこへ行く気なのだ」

 バリイの領主イグリットは南西に移動した二千のドワーフに少しほっとしていた。

「南のゼルヤテ領に攻撃を仕掛ける気でしょうか」

 ゼルヤテはバリイの南にあり、海洋貿易が盛んな土地である。

「だとしたらありがたいがね。ゼルヤテで始末をつけてくれればどんなにうれしいか」

「そうではないということですか」

「ゼルヤテが目的なら、うちに宣戦布告なんてしないだろう。わざわざ宣戦布告をしてきたんだ。バリイ領を攻めるのが目的とみるべきだろう。それとも、そう思わせておいて、実は、なんてこともあるかもしれないな」

 少し考え込んだ。

「噴火の件と関係があるのでしょうか」

「わからんな、そもそも噴火するのかどうかもわからんしな」

「ゼルヤテ側には通告をなさいますか」

「そうだな、少し大げさに言っておいて、ドワーフとの戦いに巻き込むのもいいかもしれない。どいつもこいつも人ごとのように様子見しやがって」

 近隣の領主にも援軍を請う使者をイグリットは出しているが、他の領地に軍を出すのは好ましくない、内政干渉になるなどと、やんわりと断られている。国王も、他の領主に兵を出すよう要請を出しているが、よい返事をもらえていない。

「ゼルヤテを巻き込めれば、北と南で挟み撃ちにできるということですな。それはよい考えです」

「うまくいけばな、ドワーフが港町にでも攻め込んでくれればいいが、まずしないだろう。ドワーフに海は似合わんしな」

 イグリットは鼻で笑った。

「そうですね。どちらかというと山の方が似合っていますね」

「そうだな」

 イグリットは地図を見つめた。




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