第十四話、ドワーフと騎馬隊
「はっ!」
プロフェンは馬の速度を上げた。ドワーフが体制を整える前に攻撃を仕掛けようと考えたからだ。
五十騎の騎兵が槍を脇に締め、ドワーフの軍とすれ違う。何度か突きを入れた。金属がぶつかる音、穂先に血がついていた。
ドワーフの軍は少しずつ固まりつつあった。プロフェンは馬の息を整え、背後を突く。分断するように突き抜ける。中央に行くほど抵抗が激しくなる。横にそれた。何騎かやられていた。何度か突入の構えを見せ、横にそれるように外側からドワーフの兵を削り取っていく。騎馬隊にも犠牲が出ている。ドワーフの兵にもだ。攻撃を仕掛けようとした。背後から矢が飛んできた。丘の上から、クロスボウをもったドワーフの部隊が出てきた。一旦、距離を取る。
ザレクス率いる歩兵隊が、ドワーフの軍の前まで進んだ。前列の兵には鉄板を張った大盾を持たせている。木の盾に、鉄板を鋲で固定している。ドワーフが盾を壊してしまうと聞き、急遽作らせた。重量は増すが、そう易々とは破壊できない。
ドワーフの斧兵とぶつかる。盾を地面につけ体で固定する。ドワーフが斧を振り回す。当たる。耐える。盾は少し歪曲しており力を逃しやすい構造をしている。隙を見て、ドワーフに盾ごとぶつかる。バランスを崩したドワーフを槍で突く。横に広がり、ドワーフの兵を包み込もうとする。
傭兵や民兵を中心とした歩兵が迂回して、丘の上、ドワーフの本陣へ移動していた。手には、はしごを持っている。ドワーフの本陣を攻める構えを見せた。
柵の中からドワーフの兵が矢を射た。ドワーフの本陣に近づいている歩兵は木の盾で矢を防いだ。縦の影に隠れ、ジリジリと前に進む。
何かが飛んできた。木の盾が割れ、それを持っていた歩兵の顔がつぶれた。石である。
「むん!」
メロシカムがこぶし大の石を投擲している。台の上に乗り、柵の上から投げている。ただ石を投げただけではこうはならない、鍛え上げた隻腕に魔力をまとい投げている。木の盾が割れ、その後ろのいる人間に当たる。
人間の兵は矢を放った。メロシカムは左腕に装着した盾で矢を防いだ。メロシカムは戦場で左の肘より上を失ったが、なくした腕の代わりに盾をくくりつけている。盾で矢を防ぎながら、隙を見て石を投げつける。石塊が人間に当たる。人間の兵は少し距離を取りながら、蛇行するように、本陣の回りをうろついた。
プロフェン率いる騎馬隊は、馬の疲労が出ていたため、いったん下がった。
代わりにネルボが別の騎馬隊五十を率いて出た。騎馬隊は馬の疲労を考え、交代交代使うよう運用されていた。
「ご苦労だった。なかなか見事な戦いっぷりだったぞ」
ネルボはプロフェンをねぎらった。
「ありがとうございます。休ませて貰いますよ」
「おう」
ネルボは馬を走らせた。
「でらんだーん!」
ドロワーフが歩兵隊の盾目がけハンマーを振るっていた。
鉄をへこまし、中の木を割っている。二度三度で盾が割れ、四度目で、その後ろにいた兵が吹き飛ぶ。
「隙間を埋めろ!」
空いた隙間を別の盾兵がはいる。
ドワーフ達は後にじりじりと下がった。ダレムは中央をドロワーフに任せ、左右に兵を多めに配置し囲まれないようにしながら、丘の上へ、引こうとしていた。それをさせないよう、ネルボ率いる騎馬隊が背後や側面を突いていた。本陣を攻めている人間の歩兵は、攻めるそぶりを見せながらも、丘の回りをうろうろしていた。
「しゃあ!」
ネルボは矢を警戒しながら、ドワーフの背後と側面を攻撃した。
歩兵が左右に回り込み始め、徐々にだが、ドワーフの兵は囲まれつつあった。
「しゃがめ!」
ダレムは目の前の斧兵に命じた。騎馬隊の前にいるドワーフの兵が一斉にしゃがんだ。
ネルボは一瞬何が起こったかわからず、たずなをひいた。
しゃがんだドワーフの背中の上をダレムが駆けた。
飛んだ。
斧槍を後にめいいっぱい引きながら、飛んだ。
「むっ」
ネルボは槍を上にあげ防ごうとした。ダレムの斧槍は槍を断ち、ネルボの右の肩から入り腹まで切り裂いた。ネルボは馬から滑るように落ち絶命した。
指揮官を失い騎馬隊の動きが止まる。
丘の上から、手斧を持ったドワーフの兵が駆け下りてきた。
「ほい」
手斧を持ったドワーフが、足の止まった騎兵に飛びついた。ドワーフの中でも身の軽い者を選んで作った部隊である。若者が多かった。ドワーフは年を追うごとに重く頑強になっていくが、まだひげも生えそろわない若いドワーフの中には身の軽い者がいた。馬によじ登り、騎手に手斧を叩きつけ、あるいは手斧を投げつけた。
「助けに行くぞ!」
リボルが馬首を戦場に向けた。
「お待ちを!」
馬で駆けようとする、リボルを止め、レマルクとプロフェンは騎兵を率い、指揮官を失った騎馬隊の救出に向かった。救出に向かう騎馬隊に向け、メロシカムは矢を射かけさせ、自身は石を投げた。本陣を狙っている人間の歩兵は攻めるそぶりを見せるがやはり動かなかった。
混戦になる。こうなるとドワーフは強い。手当たり次第に切りまくった。馬では近づけなくなる。
ザレクスは隊を二つに分け、一つは、ドワーフの兵を押さえ、もう一つは、指揮官を失った騎馬隊の救出に向かった。
その隙を突いて、ダレムはドロワーフのひげを引っ張るようにして、本陣に撤退した。互いに兵を引き上げ、遺体の埋葬のため、しばし休戦となった。




