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第十一話、フエネ平原


 風が少し寒かった。

 エルリムを燃やしたドワーフの兵は、西に移動し、フエネ平原の南西、小高い丘に木の柵を作り守りを固めた。五百人ほどのドワーフ兵が忙しそうに動き回っている。

「守りを固めているな」

 リボルは馬上にいた。十キロほど離れた丘の上にドワーフの兵がいる。

「どこから持ってきたのか、急ごしらえにしては、立派ですな」

 副指揮官のレマルクが言った。体格が良く口の大きい男で、リボルより少し年上である。

「目的がわからんな。このまま、まっすぐ攻め込んでくるかと思っていたら、何もない平原で立ち止まるとは、何をしたいんだ」

「援軍を待っているのかもしれませんな。ドワーフとはいえ、五百で千五百とは戦えますまい」

「拠点をつくって、援軍を待つ、悪くは無いと思うのだが」

「なぜここなのか、ですね」

「そうだ。ここに拠点を作るのなら、なぜエルリムを燃やした。ギリム山、エルリム、フエナ平原と拠点をつないで、領地を切り取っていけばいいではないか。せっかく取ったエルリムを捨て、こんな何もないところに一カ所だけ拠点をつくってどうする。奴ら何をしたいのだ」

「ここに住む気なんじゃないですかね」

 騎馬隊の隊長のネルボが言った。四十手前の浅黒い肌をした目の大きい髭面の男である。

「ここに? 近くに川はあるし土地も余っている。ふふっ、住むには悪くはないかもしれないな」

 ただ、水はけが悪く土地もやせているため、作物を育てるには適していない。

「どうしますか。ドワーフがここに住みたい、などと言ってきたら」

「許さんさ。戦の前ならわからんが、こと、ここにいたっては、ドワーフの連中にやる土地などひとかけらもない」

 リボルは顔をしかめた。

「そうですな」

「しかし、手際がよすぎる気がしませんか。ちょっとした砦になってますよ」

 柵の高さはドワーフにあわせ低めに作られているものの、太めの頑丈な木で作られ、馬止めに先端のとがった木が飛び出している。

「あらかじめ、木材を用意していたのだろう」

「どうやって攻めるんです。守りを固められると、騎馬隊は使えませんよ」

「それなんだよ。領主様に騎馬隊で蹴散らしてやりますよと言ってしまったんだがな」

 リボルはため息をついた。

「完成する前に叩いたほうがいいんじゃないですか」

「あらかた完成しているように見えるが」

 作業音が聞こえるが、外の柵自体は出来上がっているように見えた。

「向こうもそれは警戒しているでしょう。手をこまねいていては相手はさらに守りを固めることになり、それを避けるため、強引に攻めれば、こちらの犠牲は多くなるでしょうな」

「どうすればいいのだ。散策に来たわけではない。私は、あれを落とさなければならないのだ」

「誘い出してみるしかないでしょう。それでもだめな時は、歩兵を使って、引きはがしていくしかありません」

「かなり、犠牲が出るな」

「ええ、しかし、援軍が来れば、もっとやっかいなことになります」




「ドーン!」

 ドロワーフはハンマーで杭を打ち込んでいた。一撃で杭は三分の二ほど地面に埋まった。

「打ち込みすぎだ。それでは役に立たない」

 ダレムが言った。

 一年ほど前に、この丘の上にあった猟師小屋と土地を、木材置き場にすると買い、木材と食糧をため込んでおいた。それを使い柵を作った。

「守りに入るってのは、どうも好きじゃねぇなぁ」

 赤毛のドロワーフはハンマーを肩に担いだ。円柱の鉄の塊を力任せに振り回す、そういう武器であった。

「足止めできればそれでいい。どのみち奴らは攻めてくる。それまでの辛抱だ」

「こっちから行っちゃだめなのかよ。すぐそこじゃねぇか」

 ドロワーフは人間の兵がいる方角を見た。別の丘の上で陣を敷いている。

「だめだ。騎馬隊がいる。奴らの元にたどり着く前に馬に蹴散らされる」

「つまらんねぇ」

 ドロワーフはすねたような表情をした。



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