第一話、初戦
五十人程度、ドワーフの兵が丘をのぼってくる。その歩みは遅いが力強かった。人間の兵二百が槍を手に丘の上で待っていた。ドワーフの兵は重厚な鎧に身を固め、両刃の斧を持っている。等間隔に整列している人間側の兵に対してドワーフの兵は一つの塊にまとまっていた。
馬上の人間側の指揮官は、地の利を生かし、上から下へ、丘の上からドワーフの兵五十を潰そうと考えていた。戦になれている兵ではない。半分ほど徴兵されたばかりの新兵だった。兵のおびえと熱気が指揮官に伝わっていた。敵の数よりこちらの数の方が圧倒的に多い。士気は悪くはない。丘の傾斜の勢いを借りて一気に片付けようと考えていた。
指揮官は突撃の命令を出した。進軍する。斜面を降りる。じょじょに足並みが乱れ、列がばらついつくる。斜面のため速度が上がる。駆け足になる。ドワーフの兵との距離が近づいてくる。最前線にいる人間の兵から悲鳴のような叫びが漏れる。ドワーフの兵は足を止め、低い背をさらに低く構えた。
ぶつかる。
人間側の兵は勢いにまかせ槍を突く。ドワーフは頭を下げ、槍を兜で受けた。ドワーフの職人が鉄にミスリルを混ぜて作った兜である。槍の切っ先は兜の表面を滑るように、ことごとくはじかれた。斜面を駆け下りる人間の兵の動きは止まらない。
兵と兵の体がぶつかる。ドワーフは動かない。斧。血しぶきが飛んだ。ドワーフが斧を振り抜いた。右に振り左に振り、あるいは縦に、両刃の斧を振るった。人間より背の低いドワーフは人間の胴にあるいは足に斧をたたき込んだ。鉄の鎧は易々と裂け、中の肉を臓物をまき散らす。動揺が走る。当たった兵からはじけ飛ぶ。馬上の指揮官は撤退を命じたが、坂の勢いで止まれない。立ち止まろうとする前線の兵の背中に後続の兵がぶつかる。ドワーフは動かず斧を振るう。人間側の兵は左右に割れ、横に流れ、丘を駆け上り撤退した。
血にぬれたドワーフの兵がゆっくりと斜面を登ってくる。
指揮官は戦線を下げた。
丘の斜面には人間の死体が残った。




