魂を食らう剣
シルフィエッタとレイナードは、ベルライト博士の工房の中にいた。
そこには、ありとあらゆる物がごった返していた。
剣や斧、弓などの武器、鎧やブーツ、薄汚れた洋服だけではなく、干された薬草に小瓶に入った薬、杖と楽器に家具と鏡、仮面、さらに変な壺、その合間を縫うように大量の書物が置かれていた。
「手にすると、呪われる物があるから気をつけてね」
魔道研究者は物騒な事をいいながら、新たな焼き菓子をくわえ込んだ。
「早速だけど、何か分かったことを教えて欲しいの」
結論を急ぐシルフィエッタにベルライトは、にやりとしながらいった。
「相変らずシルフィーは、せっかちだね。そんなんじゃあ、持てないんじゃない? そこの少年もそう思うでしょう?」
「レイナードに変なこといわないで!」
苛立つシルフィエッタを「くくくっ」と楽しみながら、ベルライトは、いった。
「ま、見てもらった方がいいか。付いてきて」
裏口の扉を開けると、焼き菓子の袋を抱えたベルライトは、離れにある小さな小屋に向かった。
「何だか寒い……」
シルフィエッタの呟きにベルライトは、答えた。
「傷まないように、魔法をかけてある」
何のことだかは、直ぐに分かった。小屋の扉が開くと、レイナードは口を押えた。
苦しそうに顔を歪ませる男の亡骸、その胸は、ぽっかりと穴が開いていた。
シルフィエッタは、目の前に横たわる非日常的な物体に動揺することなく、その傷口をじっと見つめた。
「これは、一見すると歯型のようだけど……そうじゃないのね」
「そういう事……いってしまえば、これが魔女の剣が残した証拠のようなものさ」
クリームがたっぷり詰まった、筒状の焼き菓子をかじりながら、ベルライトは語った。
「よく似た事例が、過去にある」
その男は博物館の学芸員だった。
魔女の剣の展示に関わっていたが、ある日、剣とともに失踪。数日後に遺体で発見される。傍らに剣、その胸はえぐり取られて無くなっていた。
そして、その胸の傷口の特殊な形状は、魔女の剣の刃先と完全に一致。
「当時の研究者が出した答えは――」
信じ難いことだが、この剣は意志を持っている。剣がその所有者を贄としている。持ち主の命を食らって糧としている呪われた剣である。
「この事件をきかっけに、魔女の剣は、こう呼ばれるようになった――」
人差し指を立て、片目をつぶったベルライトは、得意げに語った。
『魂を食らう剣』




