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クラヴィス・ドラゴニア・ドラークス

「先日は、大変だったみたいだね」


「ご心配には及びません。よくあることです」


 謁見の間へと至る回廊を兄妹は歩いていた。


 文官同士でやり取りをしていた、兄弟国・オービスとの同盟が正式にまとまった為、相手のの高官を招いた晩餐会が今宵、開かれた。


 二人は、ホノミスの王・ロミオスⅡ世の代理として、賓客(ひんきゃく)をもてなした帰りだった。兄・クラヴィスが先を歩き、少し離れてシルフィエッタがそれに続いた。


「二人きりなのだから、横へ来ればいいのに」


「いえ、そういうわけには参りません」


「本当に、シルフィーは真面目だね」


 そういいながら、クラヴィスは、にこりと笑った。


 クラヴィス・ドラゴニア・ドラークス――ホノミスの正当な後継者である彼は、外見こそ父・ロミオスに似ていたが、中身は正反対だった。


 父・ロミオスが威厳を持って周囲を従えたのに対し、クラヴィスは相手に親近感を与えることで、皆から好かれていた。


 常に、そばで見ていたシルフィエッタは知っている。これは、父のようになれない兄が苦悩の末、考えた、次善的な対処法なのだと。


「話を戻すけどね…………街で剣を抜いた三人の騎士たち、あれは無期限の謹慎を申し渡した。まあ、ほぼ除名と思っていい」


「当然です」


「問題は、相手の方だ。絡まれていた少年はいいとして、アドワースといったかな……あの男は、結果として少年を助けたが、少々やり過ぎだ」


「懲罰房に送ればいいのでは?」


 クラヴィスは目をつむり、うーんと唸った。


「オウル団長も、そういったんだけど…………私はね、ずっと考えていたんだよ」


「何をですか?」


「君のことだよ、シルフィー」


「私……のこと!?」


 前を歩いていたクラヴィスは、立ち止まって振り向いた。


「そう、シルフィー、君は何でもひとりで器用にこなしてしまう。だけどね、いずれ騎士団を率いていくならば、信頼できる仲間が必要だ」


「仰る意味が、わからないのですが……」


「つまりは、こういうことだよ――」


 握っていた右手を開きながら、前方に差し出しクラヴィスはいった。 


『ホノミス皇太子の名の下に命ずる。彼の者をそなたの部下にせよ』


「は、はぁ!?」


 驚くあまり、シルフィエッタは声が裏返った。クラヴィスは、面白そうに笑いながらいった――


「それとあの少年もね、彼、筆記は満点なんだけど、実技が全くできない問題のある騎士団員だから……」


「はいぃ!?」


 冷静沈着を常とするシルフィエッタが、珍しく動揺していた。


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