「そんなに長く婚約しているのに、横槍が入れられるの?」
「何不自由なく暮らしているお嬢様だと思ったわ」
ややしてからポツリと溢されたので肯定します。
「何不自由なく暮らしてます。欲しい物は買ってもらえますから。でも両親にとって私は、生まれた時から王族と結婚することが決まっていた駒ですから」
父は公爵家の当主。母は隣国の王女殿下。ここも政略結婚だ。国王陛下の側妃として輿入れ予定だった母だけど、国王陛下の正妃は、隣国よりも国力の強い国の王女。強い反対に合ってしまったことで、母は父と結婚することになってしまった。
父にも婚約者がいたのに。その元婚約者の方が父の愛人ですけど。母の愛人は正妃の行いに傷ついた時に慰められた、隣国から来た母の護衛です。護衛なのにとは思いますが、まぁ仕方ないですよね。父も冷たいですし。元を辿れば正妃の所為ですし。
元々は国王陛下と母が婚約者だったのに、正妃殿下が国王陛下に横恋慕し、国力の差を見せつけて、国王陛下の正妃として割り込んだ。だからせめて陛下は母を側妃に迎える予定だったのに、正妃が猛反対。という因縁の結婚。ちなみにこの時既に、正妃には第一王子殿下がお生まれになっていた。だから余計に側妃なんて要らないって強気になっていた。
それでせめて、国王陛下が生まれた子同士を結婚させようってことで。
私が男なら王女を降嫁。女なら王家に嫁入り。
生まれる前から決まってしまっていた。
そうして生まれた私、ジェーンは、二つ年上の第一王子殿下か、ひと月早く生まれた第二王子殿下のどちらかに嫁入りすることが決まった。
これはそういう政略結婚。
「えっ、ちょっと待って。そんなに重要な婚約なのに、横槍を入れようとする令嬢たちってなんなの?」
聖女さまが唖然とする。
そう仰る聖女さまが正しいのだけど、でも仕方ないことでもある。
「皆さま、私の婚約者であられるエンディオ第二王子殿下に愛されている、と思っておいでですから」
私はエンディオ様と婚約している。というのも、正妃が第一王子殿下と、自分の兄王の娘との婚約を決めてしまったので。従姉妹にあたる王女との婚約を、第一王子殿下は受け入れられました。
まだまだ正妃の母国の方が国力が上だから、国王陛下が断れない、と第一王子殿下はご理解していらしたので。その時に、第一王子殿下が弟は、ジェーンと婚約させないと、さすがに公爵家と隣国を蔑ろにし過ぎですよ、と釘を刺したので、正妃はそれ以上口出し出来ず、私とエンディオ様との婚約が結ばれたのです。
この時、第一王子殿下は六歳。エンディオ様と私は四歳でした。それから十二年この婚約は続いてます。
「そんなに長く婚約しているのに、横槍が入れられるの?」
聖女さまにお話すると、信じられない、と仰る。
そう思ってくださることは嬉しいかもしれません。令嬢方が凄くて私の考え……陛下が決めた婚約なのにとやかく仰ってくる方たちが嫌であるという考え……がおかしいのかもしれない、と最近は思っていましたから。
お読みいただきまして、ありがとうございました。