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「孤独な死に方なんてさせないから! 私と結婚して幸せな暮らしをしてほしい」

「それは……」


 聞いていた陛下が絶句なさいました。先程まで表情を一切変えずにいらしたのに。


「叔母上、その呪いは叔母上でもどうにか出来ないものでしょうか」


 アマディオ第一王子殿下が絶句した陛下の代わりのように、聖女さまに尋ねてます。アマディオ第一王子殿下って、ニコニコにこにこしながらも腹黒さんなんでしょうか。

 絶対、聖女さまは叔母と呼ばれているのがお嫌いですのに。ディオ様が叔母、なんて呼びかけると背後がとても真っ黒な聖女さまですのに。

 いえ、アマディオ第一王子殿下にも同じ対応されましたけど、アマディオ第一王子殿下は、穏やかに笑みを浮かべているのにご自分を曲げず、聖女さまを叔母と呼んでいらっしゃるあたり、分かっていてやっていらっしゃるのですよね。

 見た目に騙されてはいけないのでしょうね。

 聖女さまもアマディオ第一王子殿下を睨め付けながらも口に出すことが無いので、性格を把握されているのでしょうか。多分今回の訪問でお互いに初めて会ったでしょうに、昔からの仲の良い親戚のような振る舞いですね、お互い。


「どうにか出来るというより、力の方向性が違うから難しいのが本音ね。私の癒しの力は善や正の方向性。呪いを掛けられるけれどそちらは悪や邪の方向性。どちらにも対応出来る力だけど、善や正の方向性に力を使用しているから反対の方向性で力を振っても、弱いのよ。使う者の心次第ということ。私が悪や邪の方で力を振っていたら、どうにか出来る可能性もあったかもしれないけれど、あくまでも可能性だもの。

実際は善や正に力を振っているから反対の力は弱い。そして苦手な部類。だから呪いを掛けられても弱いものなのよ。まぁだから聖女として活躍出来るわけだけど。そして自分でかけた呪いなら兎も角、他人が掛けた呪いを解除するような能力は私には無い。他の聖人や聖女なら出来るかもしれないけれど、私には難しいわ」


 聖女さまがそう仰る以上、私は結婚式で死んでしまうのでしょうか。


「それなら、死にたいわけじゃないですけど、でも良いときに死ぬのかもしれないですね」


 思わず口から溢れると、ディオ様が苦しそうな顔をされ、聖女さまはちょっと呆れた顔をされ、陛下と第一王子殿下は驚いた顔です。


「えっ、ちょっと、何を言ってるの」


 聖女さまに溜め息と共に指摘されましたが。


「あ、いえ。死にたくないですよ。でも呪われている実感も沸かないですし、両親に見向きされない私を、唯一大切にしてくださるディオ様との結婚式で死んでしまうことになっても、幸せな中で死ぬことになりますから、それは幸運な死に方かなぁなんて。ディオ様と結婚しなければ、最低限の世話をするだけの使用人たちにも気づかれないまま、あの公爵邸で孤独に死を迎えそうなものですから。それなら大好きなディオ様との結婚式で死ぬのはまだ幸せな死に方かな、と思いました」


 私が困ったように笑いながら言えば、ディオ様にギュッと抱きしめられました。

 えっ、えと、ディオさま?


「孤独な死に方なんてさせないから! 私と結婚して幸せな暮らしをしてほしい」


 かなりギュウギュウに抱きしめられて、ちょっと苦しくなったけれど、でも、そうですね。ディオ様と幸せに暮らすって大事ですよね。でも結婚式はまだ先ですけど。

 ちょっと生きることが楽しみです。


「聖女殿、貴殿を余の後妻として王妃の座に着いたとしたら、ジェーンの呪いを解除することに力を尽くしてくださるか」


 陛下がこんな私を見てしまったせいでしょうか。乗り気ではなかったはずの聖女さまとの婚姻について、前向きな発言をされていらっしゃいます。

 陛下のお心を煩わせるわけには、と口を挟む前に聖女さまがお答えされました。


「ええもちろん。お姉様が依頼した可能性が高い以上、呪いを掛けた術者を探したいですから」


 ああ……。聖女さま、そんなお言葉で了承されては陛下が後妻として聖女さまをお迎えになられてしまわれます。私にかけられた呪いのせいで、国王陛下にも聖女さまにも申し訳ない気持ちでいっぱいです。


「術者とは?」


 陛下の質問に聖女さまがお答えくださいます。


「呪いを掛けるといっても、お姉様にそのようなことは出来ないでしょう。何らかの力を持つ者でないと掛けられるものでは無いですから」


 何らかの力を持つ……それって。


「それって占い師でも出来るものですか?」


 私のこの疑問に聖女さまが目を剥きました。


「占い師? 一番怪しいのだけど、どうしてそんな職業の者を口にしたの?」


 聖女さまに尋ねられ、私は首を傾げます。


「正妃が占い師と親密なのだ、となぜか私に勝ち誇った笑みを見せてましたから。占い師と親密であることの何が勝ち誇れるのか分からない、と思いましたが口に出すと罵倒されるか打たれるので黙っていました」


「それはいつ頃の話?」


 いつ頃……と言いますか。


「妃教育が始まった頃からです。なぜ私に自慢をするのか分からなかったのですが、その頃から占い師と私は親密だ、と事あるごとに。ただ本当になぜ勝ち誇れるのか分からず、聞き流していましたから。正妃付きの侍女なら知っているかと思います。ただ城で会っているわけじゃないはずです。私が妃教育を始めた頃からなので、城で会っていたら使用人たちの目に留まるでしょうから。私も見たことはないですし」


 城で会っていたら、私に会わせて勝ち誇った顔をすると思います。


「かといって、一国の王妃が何度も何度も城から出る機会など無いと思うのよね」


 聖女さまが仰って、それは確かに、と納得してしまいました。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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