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「何を躊躇っておられるのです! この子は現状、結婚式当日に死んでしまうのですよ!」

「陛下。甥の婚約者の現状をよぉく把握しましたわ」


 なんでしょうか、「良く」のところに物凄く力を込めて聖女さまが仰っておられます。ですが、私のことを知りたいと仰っていた聖女さまがご納得してもらえたのでしたら、あまり気にしない方がいいのでしょうか。


「う、うむ」


 陛下が押されているのも気のせいだと思う方がよろしいでしょう。


「陛下、改めて。お姉様のことを謝罪させていただきます。前国王であるお父様も国王であるお兄様も、アマディオの手紙に記されていたお姉様のやらかし具合をリアリア伝いに聞いて、陛下たちに申し訳なく思っていました。また私がこちらに来る事態になりお姉様の処遇は、私に一任されております」


「いや、戦争になるかもしれない、と折れたが私と父が決めた結果だ」


 聖女さまが謝りますが、陛下は首を振ってその謝罪を受け入れません。聖女さまは、それでも、ともう一度謝ってからアマディオ第一王子殿下を見ました。


「アマディがリアリーに手紙を出してくれて、私たちはお姉様の所業を知りました。アマディもごめんなさいね。お姉様の我儘で強引な性格に付き合わせて、リアリーと婚約が結ばれてしまって」


「構いませんよ、叔母上」


「ちょっとアマディ、今、なんて言ったかしら?」


 聖女さまの殊勝なお言葉に、微笑みながらアマディオ第一王子殿下は受け入れられました。……というか叔母上とか仰ってますよ。ほら、聖女さまが頬を引き攣らせていらっしゃいます。


「えっ、聞こえませんでしたか、叔母上」


 あ、煽っていらっしゃいますね、アマディオ第一王子殿下……。


「アマディ?」


「なんでしょう、叔母上」


 笑顔の応酬なのに空気が怖い。


「兄上も聖女殿もそこまでにしてください。聖女殿は父上に何かお話があるのでは?」


 あ、ディオ様が取り成しましたね。


「そうね。アマディと遊んでいる場合じゃないわ。陛下、お姉様の代わりに私が陛下の後妻として正妃の座に収まります」


「は? 今、なんと?」


 聖女さまの発言に、陛下が眉を顰められました。


「私が正妃の座に収まる、と。お姉様の所業を正すためでも有りますし、アマディの婚約者に据えられたリアリーはまだ十五歳で、アマディに嫁ぐにはもう少し時間がかかることで我が国と貴国との関係が悪化することを防ぐ目的も有ります」


 なるほど。リアリア王女殿下は私の三歳年下です。アマディオ第一王子殿下と結婚出来るのは、成人してから。どこの国でも成人年齢が十八歳ですから早くても三年後です。

 だから私とディオ様の結婚の方が先です。その辺りのことは、この国の貴族たちは了承しています。了承していなかったのは、正妃くらいです。尤も正妃は私とディオ様の婚約を壊そうとしていましたが。


「それは分からなくはないが、聖女殿だろう。結婚は難しいのではないのか」


 聖女さまはその癒しの力を色んな方に使うお仕事があるのでは? と陛下は遠回しに仰ってます。


「これは、聖女と聖人と教会しか知らないですが、癒しの力には限りがあります。秘密にしているわけではないですが、まぁ言いふらすことでもないので、公言していませんけれどね。私の力もいつ頃とは言えませんが、無くなることは確実。私は王族でもありますから、力が無くなったら政略結婚の必要性が出てきます。それであれば、この国に、陛下の後妻として嫁いで来る方が役立ちましょう」


 陛下が沈黙されます。

 先程陛下ご自身が仰られたように、妃の座が空いていることは問題です。外交上女性だけで行われるものもあります。王太子妃が居れば良かったのですが、王太子に目されるアマディオ第一王子殿下の婚約者はリアリア王女殿下。

 まだ成人年齢に達していないため婚姻出来ません。


「お姉様の我儘とはいえ、二代続けて同じ国から王妃を迎えるのは、国内外から色々言われることでしょう。さらに後妻として私をその座に着かせることも。ですが、お姉様の所業の被害者がここに居る以上、私も看過できないのです」


 陛下を説得する聖女さま。この方が正妃の代わりに王妃の座に着かれるのは、周囲は色々と煩いかもしれませんが、良いことではあると思います。

 そして、私は正妃の被害者扱いされてます。まぁ当たりは強かったですからね……。


「確かにジェーンは被害者だが……」


 陛下が言葉を濁されます。やっぱり正妃の後にその妹にして聖女さまをお迎えされるのは、複雑なお気持ちなのでしょうか。


「何を躊躇っておられるのです! この子は現状、結婚式当日に死んでしまうのですよ!」


 聖女さまが陛下に訴えた言葉で、私とディオ様は聖女さまが仰っていたことを思い出しました。


「あ、そういえば」


「そうでした。ジェーンの命に関わるのでした!」


 私はそんなことを言われたなぁ……くらいでしたがディオ様の方が焦ってます。


「叔母上? それはどういうことですか」


 アマディオ第一王子殿下が首を傾げて尋ねます。陛下もよく分からない、と眉を顰めてますね。


「この子、呪いをかけられているのよ」


 夜会にて聖女さまから話しかけられた第一声が、ソレでしたね。すっかり忘れてました。

 色々ありましたし、実感無かったですので。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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