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「公爵家があるか無いか。それ自体は有る方が権力争いを起こさないから存続している方が良かった」

「公爵家があるか無いか。それ自体は有る方が権力争いを起こさないから存続している方が良かった。今までは。だが、王妃を退けたために王妃の座が空く。王妃を正妃として扱うか廃妃とするかは先なれど、側妃として誰かを迎え入れねばならない。

そなたの母が昔のままであれば、こちらの都合で悪いが、そなたの両親を離婚させて、今度こそ妃として迎え入れる気持ちもあった。余の婚約者というのもあって情もあったが、政治的な視点で考えても、その方が良かった。

だが今の状況で側妃として迎え入れても、貴族たちの評判は悪い。そなたの母も王妃と同じく、王女であったことに固執して貴族たちと確執ができた。ゆえに我が国の貴族家から嫌われている。

今の夜会で堂々と愛人を連れて参加しただろう。当主が愛人を持つこともあるが、愛人を参加させるなら格式を考える。だから、そなたの両親は、王家主催の夜会をなんだと思っているのか、と二人共に他家からの視線が厳しい。そんな状況で正妃だろうと側妃だろうと迎え入れられるわけがない」


 陛下の話に私は頷きます。

 私でも先程の夜会の可笑しさは批判の的だと分かります。それに気づかない両親が愚かなのでしょう。それとも気づいていても、公爵という地位に胡座をかいているのでしょうか。後は夫婦とは名ばかりでも、公爵の妻が元王女であるから、とたかを括っている可能性もあるのでしょうか。


 全く会話もしないので、二人が何を考えているのか、私も分からないのですが。両親と会話もしなければ抑々顔も合わせないので、よく分かりません。

 先程の夜会で母の顔は分かりましたし、父は公爵家にある似顔絵で判明したので、二人共に好き勝手していることは理解出来ましたが。


 陛下もそんな二人に呆れているのでしょう。特に母には。かつての婚約者が愛人を伴って王家主催の夜会に参加だなんて、陛下を下に見ているのと同じです。あと、王女の品格もどこに置いて来たのでしょう。

 我が国のメンツを潰し、隣国のメンツも潰してますよね。


「そうなると、王妃争いが始まる。大臣たちは皆が思う者を推薦してくるだろう。だが未婚の令嬢だとしても婚約者が居る者が多い。貴族内で遺恨を残すわけにはいかぬからな。敢えて未亡人の高位貴族夫人を娶ることになろう。或いは他国で夫を亡くした元王女か。本来余が退位する方がいいのだが、今はまだ難しい。

そうなると、そなたの母が五月蝿くなりそうでな。公爵家の爵位を落として、そなたの母が口出し出来ないようにすることも考えている。

無論、夫人だけでなくそなたの父自体も問題があるからな。仕事はきちんとしている、ように見せかけて、その実、細かなところから仕事が出来ていないことが判明しているから、その辺も考慮して公爵から伯爵辺りに降爵を考えているな」


 またディオ様と婚姻する時には成人している私ですので、両親の庇護下から抜け出せることもあり、それを機に公爵から伯爵に降爵するつもりだ、と陛下がお話下さいました。それに伴い私の気持ちも聞いておきたかったのだそうです。


「私は。どちらにも愛された、という記憶が有りませんので分からないことばかりですが。会話した記憶もほとんど無いだけでなく顔を合わせることすらほとんど有りませんから。ただ、陛下の仰せの通り王家主催の夜会に愛人を連れて参加する二人は、公爵という立場とその妻という立場にいるから何をしても良いと思っているのだろう、と見た限りでは判断します。ですから陛下にお任せします」


 五歳まで母は比較的公爵家に居ましたが、最低限の会話をしていたかどうか。褒めてもらいたい、抱きしめてもらいたい。そんな子が親に思うことすら与えられた記憶がありません。

 そういえば。考えてみますと私は友人も居なくて、親しくしていたのはディオ様だけだったからか、胸の内を話すことも難しいことを今、知りました。

 学園に通えれば良かったのですが、貴族の子息子女は必ず通う必要がある、というわけでは無かったので通っていません。

 勉強は、公爵家に派遣されてきた国内の有名な家庭教師や登城して王子妃教育を王家から頼まれた夫人に教わっていました。

 令嬢たちのお茶会に参加することは多々ありましたが、友人は出来ませんでした。幼い頃から高位貴族のお茶会に参加している皆さまと、全く参加して来なかった私には壁が出来ていたもので。成長してからのお茶会では当たり障りのない会話しか出来なくて、友人が作れなかったことを思い出します。


 子どもの頃のお茶会って父か母に連れられて参加するものです。慣れれば一人で侍女や護衛をつけて行くことは可能ですが、デビューは必ず親が付き添うものです。招待状が来ても付き添ってくれる親が居ないので、参加したことが有りません。

 王子妃教育をしてくださっている夫人が、お茶会の参加について尋ねてくださり、参加したことがないと答えた私に、顔色を変えて夫人がデビューに付き添ってくださいました。その時初めて、両親以外の方が付き添ってくれても良いことを知りました。

 通常なら五歳か六歳辺りでデビューを済ませておくお茶会デビュー。私は九歳の時でした。

 もう同い年の令嬢方は友人グループが出来上がっていて、私は輪に入れませんでした。

 そして年上から嫌われていました。ディオ様の婚約者だと判明していましたから。陰で嫌味を言われ、同い年の令嬢方もそこに混ざり、年下の方達にもやがて広がっていきました。

 友人が出来るわけが無かったですね……。


 でも教育係の夫人が、どんなに辛いことがあっても感情を出さず、微笑みを浮かべて乗り越えなさい、と叱咤してくださったおかげで、今があります。


 ディオ様が他のご令嬢方と仲良くしていても、微笑みを浮かべて乗り越えようと必死でした。愛されることが無かったとしても、婚約者は私なのだ、とそれが矜持でした。

 今はディオ様のお気持ちが分かったことで、心から婚約者は私だと誇りに思います。


 思考がズレました。

 今は両親の処遇について、です。陛下には私の考えは伝わったでしょうか。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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