第8話
私はその後伯爵領地に移り住んだ。離縁後、社交界に顔を出したくないし、つわりがあるので、精神的に良くないと思い、伯爵領へ行った。
私とロイド様の離縁と、クララ様との再婚話が尾ひれをつけて噂されているらしい。もちろん、ロイド様とクララ様がルメニエール信仰に反した行為をしているのではないかという噂である。妻を領地に残し、王都で一緒に過ごし、二人で腕を組み、観劇や買い物などを目撃している者も多い。ルメニエール信仰のこの国では、愛人を持つことも許していない。平民の愛人のための離縁。それほどまでにすばらしい平民の女性なのかと噂された。話のタネになると思いお茶会の誘いをしようと画策する者もいた。こうして社交界のうわさも広がっていった。
両親や兄夫婦は社交界があるので王都にいる。私は伯爵領に行き、予算管理と収支報告書の作成をしていた。なんで私が収支報告しなければいけないのよ。酷いわよね。収支報告の書式を作ったのは私。特許も出した。それにより業務がスムーズに行うことができるようになったが、しかし出戻りの私に仕事を任せるなんてひどいわ。
「お嬢様、あまり仕事ばかりしているとお体に触ります。お茶にいたしませんか?料理長がお嬢様に教えていただいたお菓子が美味しくできるようになったと言っておりました」
「まぁ、楽しみだわ」
私は仕事の傍ら料理もしている。つわりで食べられないことが多いので、食べられるレシピを考えている。少しでも栄養のある料理。もしくはゼリーみたいなものやスムージーなどもいいわね。今後の妊婦さんの助けになるような商品も考えてていこう。
伯爵領は東の海に近い領地。侯爵領は南の海。海は海でも気温が違う。東の海は荒波という感じだ。逆に侯爵領の海は南、通常は穏やかな青い海。台風のような大きな雨風がくると被害が多くなる場所。
東の海も魚介類、海藻類が豊富だった。前世の記憶を思いだしてから、貝殻を使った農耕肥料などを手掛けた。だから、侯爵領の農業の立て直しに役立ったことが一番うれしかった。侯爵領でもそれらの肥料を作り販路とした。
東の海の生態を調べていくと天草があった。寒天が作れた。これで、栄養ゼリーを作る。果物はもちろん煮凝りで食べられるように創作料理を考えた。
妊婦向けの食事レシピは役に立った。王国中に広がり、作り方の講習も大盛況である。
王都の社交時期が終わり、兄の嫁であり友達のキャシーと私は伯爵領にいる。お互い安定期になりお腹がだいぶ大きくなった。お互い大変なのでマタニティー腹巻きを作成し、お腹の重さの負担軽減と冷え予防対策をした。2人でマタニティライフを満喫していた。もちろんキャシーにも商品開発を手伝ってもらっているわよ。
しばらくは穏やかに過ごしていた。
私は伯爵領でのんびり?商品開発の案を考えながら妊活生活を送っている。学園時代に友人であり、兄嫁のキャシーと、仕事の合間にお茶を楽しんでいる。
妊婦に安心のカフェイン抜きのお茶を抽出に成功。領内の妊婦を集めて、意見交換会や新米ママパパ講習などを行っている。もちろん子供を持つ家庭の相談も聞いている。明るい家庭生活を目指している。一人で抱え込まず、相談できる環境を構築している。それが未来に繋がると思っている。
領内の女性で働きたいが子供がいるため働くことが出来ないという悩みを聞き、託児施設などを創設した。そこで預かっている間、読み書きや計算などを教えた。そのことが反響を及ぼし、学校を作ることになった。もちろん、託児施設も常設した学校だ。あとはそれぞれの職業に特化した職業訓練施設も開設。希望はするがいざ職業に就いて合わなかったとなった場合、次の就職先が見つからず挫折する若者などのために訓練所で自分に合った職業を探してもらう一貫だった。挫折は若者に限りではないので、全年齢を対象とした。
うちの伯爵領は活気に溢れといる。向上心溢れる人たちが多かった。伯爵家の性格がみんなそんな感じなので、領民も似てくるのだろうか。伯爵家の人たちもそうだが、商売っ気あふれる領民たちだった。
父宛てに、王都や希望する領地で講習をしてほしいと嘆願書が来ているらしい。あまり馬車で動きまわりたくないけど。講師を育てあげ各地へ派遣しようかしら。まずは子育て支援を定着させるために自分で講師をしないといけないわね。まだお腹が大きくなっていないからばれない程度に活動しましょう。
みんなの相談に乗り、何が不便か、あったらいいなグッズを研究していきましょう。楽しみだわ。