第21話
ダメンタールは焦っていた。なぜ元妻で、あのコリンズ伯爵令嬢が出しゃばってきたのか。ああ、この男をやはり手放したくないのか。だがこの男は娘の旦那になるのは確実だ。そしてゆくゆくは私が侯爵の位を譲り受ければよいだけだ。
「これは、失礼しました。ロイド殿。しかし、元奥様との関係をここではっきりしていただきたいですね!今後こちらは融資をする側ですからね」
「私は、私はケイトリンと復縁がしたいと思っています。しかし、私はあの方の信頼を自ら手放し、軽蔑されている状態ですから、今後信頼回復に尽していこうと思っています。ですから、今までも言っていましたが、この融資話は無かったことにしていただきたい。私はずっとあなたの申し出を断っていました。それを聞かなかったのはダメンタール男爵あなたです」
「なんですと!ロイド殿、あなたのためにどれだけ私が工面しているか、わかっているのか!あなたの領地をより良くするために、人、物資の流れの拠点にしようと頑張っているのですよ!」
ダメンタール男爵は真っ赤な顔をして、抗議してきた。
「そうですわ、ロイド様。そして貴方は私の旦那様です。そして私の虜になるのですよ。私がいないと寂しくなってしまう状況になるのですよ、うふふ。私と離れられない愛し合う2人になるのですよ、楽しみですわ」
体をロイド様に寄せようとしている姿が怖いと誰もが思った。
「私はそんなことを頼んではいない!なぜ勝手にそんなことを画作しているのだ!ダメンタール男爵殿」
「ロイド殿、後悔しても知りませんぞ!これからこの土地は裕福になるのですぞ!この領地は私が手がける商売の中心になるのですぞ!」
「ダメンタール男爵。その商売の中心になるというのはどんな商売ですか?そんなにうまい商売があるのですか?」
「おっ!ロイド殿、私の商売に興味が出ましたか。あはははっ、共同経営者としてこれから紹介していきましょう。この領地にとって有益な話ですぞ!」
そこにスレイドタス公爵率いる公安部が入ってきた。
「そこまでだ!ダメンタール。その有益な話とやらをゆっくりと聞きたいものだ。薬物違法取引並びに奴隷売買の疑いで逮捕する。すでにブツは押収してある。王都に連行する。娘のターニャ、奴隷売買の疑いで同じく連行する。そなたに関わる全てのものが本日取り押さえられた。もう言い逃れはできないぞ」
娘のターニャを盾に突き飛ばし、ダメンタール1人で逃げようとしたが、拘束魔法で動けないようになった。
「私を盾に逃げようなんて、クソ親父」
「うるさい、たまには父親の役に立て!穀潰しめ!」
2人で言い合いが展開しているが、うるさいので魔法で喋れないようにした。
「こ、これは?いったい?」
ことの状況がわかっていないロイド様は入ってきた公安部のスレイドタス公爵を見た。
「すまなかった、ランザフォート侯爵。自然な形でダメンタールと対応していただきたかったのだ。そして何かしらボロを出してほしいと願っていた。まさに自分から暴露したものだった。事前に言わずすまなかった」
それからダメンタール男爵の悪事が説明された。
「まさかこの領地を拠点に、そんなことをしようとしていたなんて!なんてことだ」
「ケイトリン嬢に感謝するのだな。あの子は領民の全てを覚えているから、知らない領民がいることに不信を持ったようだ。それからその不審者を見張り、違法物資を押収できたということだ。恐ろしいものだ。ここを拠点にこの国に薬物を蔓延させようとしていたなんて。我が国は違法薬物は禁止だ。君も巻き込まれなくて本当によかった」
「ケイトリンが」
ロイド様は座って、頭を抱えていた。
「まだまだ復旧は大変だろうが、領主として頑張りたまえ」
「は、はい、ありがとうございました」
ダメンタール親子や領民になりすまし住んでいた連絡係などを引き連れて、王都へ連行されていった。これから処遇が決まる。この領地が違法薬物の拠点にならずに済んだケイトリンの洞察力と領民への思いの強さを知った。
私はケイトリンを・・・・




