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第2話

 領地の実務をこなしながら、やはり”離縁”のことを考えてしまう。


 旦那様が頭を床につきながら”離縁したい、王都のクララという女性とともにこれからの生涯を過ごしていきたい”と言ってきた時のことを考えていた。女性は旦那様を想い、気立てが良く、頭がいい。この侯爵夫人の仕事はできると言ってきたときはショックだった。私の気持ちは愛人より軽いのか。愛していたのに、愛しているから領地が悲惨なときもお義母様と一緒に頑張っていたのに。そして私の仕事はそんな楽な仕事と思っていたのか。一朝一夕でできる簡単な仕事で、平民の愛人は簡単にできると思っている旦那様の気持ちを知った。


 ぼーっと階段を降りていた時に階段から落ち、頭を打った。


「奥様!!」


 その時に私は前世の記憶を思い出した。私は主人のDVで頭を打ち亡くなったようだ。学生時代や恋人同士の時は優しかった。結婚してからもお互いを思いやり楽しく夫婦生活を過ごしていた。もうそろそろ子供を作ろうかという時に、主人の会社が倒産した。そこからおかしくなってしまった。主人は高学歴エリートの部類。そんな彼が選んだ会社が倒産した。彼にとっては挫折感を味わったのだろう。年功序列、終身雇用と言われた時代だ。倒産で転職なんて屈辱だったのだろう。それから言い合いや、時折りお酒を飲むと手が出るようになった。翌日は謝られ、許してしまう自分がいた。あの日も主人がお酒を飲み酩酊した状態で口論。仕事のことについて話をし逆上して殴られた。倒れた方向にボードがあり、角に頭を打ちつけた衝撃。私はその時亡くなったのか?


 今の私は、 ケイトリン コリンズ ランザフォート

 ランザフォート侯爵夫人


 旦那様はロイド ルディス フォン ランザフォート


 前世の記憶を思い出した今、別の女性に心を寄せている男に用はない。愛してもらおうと頑張っていた自分を哀れとともに健気に思う。愛してくれず、別の女性と結婚したいと思っている男。時折、泣くケイトリン。今までよく頑張ったわ。私の意思とは違う感情が心にあるが、もうケイトリン、終わりにしましょう。前を向いて、自分の人生を歩きましょう。冷たい言い方だけど、領民は当主のあの旦那様と愛人に任せましょう。


 領民のことが心配だけど、私はいままで1人で領地を立て直してきたが、愛し合う2人で寄り添い合いながら、やっていけるでしょう。もう旦那様を思う気持ちに疲れた。


 ケイトリン、前を向こう。


 それからすぐ、私は実家に連絡をとり、状況を話し離縁する方向で旦那様の周辺調査をした。両親や兄、兄嫁は離縁することに賛成だった。旦那様の王都での生活を知っていたため、早く離縁して欲しかったということがわかった。家族に心配をかけていたなんて知らなかった。そして家族の後押しもあり、離縁責務は旦那様にあり、慰謝料を貰い受けようと証拠を集めた。


 不貞があるかどうかはわからないが、領地に帰らず愛人に領民の税金で、高価なプレゼントや生活費、劇など様々な豪遊生活をしていることがわかった。それだけでも有責になるであろうと父の弁護人が言う。当主の役目もせずに愛人と遊んで暮らしているなんて。


 平民のクララ?さんが侯爵夫人になった後の義務や侯爵領の侯爵夫人のやるべき責務をマニュアルではないが、亡くなった義母から受け継いだものを束ねた。侯爵夫人としての仕事だけは引き継いでおかないといけない。代々引き継がれた侯爵夫人の役割。優秀な方ということだからできるだろう。私は旦那様に愛してもらえるように頑張ったが、クララさんはどんな困難でも愛する人のために頑張れるだろう。その違いは大きい。結局私は愛して貰えなかったのだから。


 この国の貴族の離縁は、離縁後すぐ再婚はできず、教会が決めた期間、半年から1年ぐらいあけ再婚できるらしい。離縁前に赤ちゃんが出来ている可能性も考慮してのことだった。再婚前のその期間に平民のクララさんは貴族としての教育と侯爵夫人としての教育を施し、晴れて夫婦になることとなる。


 王都にいる旦那様に離縁のサインをすることとクララさんへの引き継ぎがあるので2人でお越しいただくよう手紙を出した。


 クララさんはどんな聡明な方なのだろう。旦那様が傾倒し結婚したいと思われている女性だ。


 旦那様はこの領地の状況を把握していて一緒に復興していこうと思う女性だ。侯爵夫人となるに相応しい方なのだろう。二人で頑張ってもらいたい。それが今の私の願いだった。


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