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第17話

 ~~伯爵家コリンズ商会執務室から~



 ケイトリンは新商品や新店舗に向けて報告書や収支報告書を作成していた。


「もうどうして、妊婦の私がこんなに忙しいのよ。誰か労わって」


 一緒に仕事している、これまた兄嫁で親友で妊婦のキャリーがあきれたで私を見ていた。


「何言っているのよ!ケイト、自分自身が仕事を増やすようなことを企画しているからでしょう。私まで手伝っているじゃない。みんな大忙しよ。この前、発売したベビーグッズや妊婦グッズが好評すぎる。あんなに便利なものを作って、そして各地の妊婦、子育てママの特派員にモニターになってもらい、改善点などの報告処理で忙しいわよ。私は、あなたの前世のことを聞いていた時はびっくりしたけど、それにしても次から次へともう!魔道具部門も大忙し、縫製部門も大忙し。そしてぬいぐるみ?ゆるきゃら?よくわからないものを作り出したわね。義弟のランディが怒っていたわよ。商会は旦那様とランディが今、担っているけど、説明や売込みで各地を回っているらしいわよ。もう、売込みのはいかないと言っていたわよ。売り込まなくても、売れるしなんて言っていたわよ」


「ランディ、あの子はまったく、その考えはダメよ!商人はそんな傲慢な考えではだめよ。今度怒らなくては。売り込まなくても消費者の声を聞かないと、より良い商品が作れないわ」


「そうね、消費者の声は聞かないとだめね。ところで、ランザフォート侯爵様、あなたの元旦那様が窮地に陥っているわよ。あの愛人騒ぎに続き、融資関係が芳しくないのよ。そこに目をつけて、あの新興貴族のダメンタール男爵が娘を連れて融資の話を持って行ったらしいわよ。結婚を迫っているらしいわよ」


「娘を連れていって、融資する代わりに娘と結婚しろってこと?私と同じことしようとしているのね。1度目は私、2度目は平民のクララさん、そして今度はダメンタール男爵の娘。あの人女難の相があるのではないの?ダメンタール男爵の娘って、ああー、あの少し強引な感じがする人ね。たしかロイド様を好きで、私をにらみつけていたこともあったわね。ふーん、あの人が。あまり領民思いの人になるようには思えないわね」


「まったく、あなたは。ケイトほどランザフォートの領民思いはいないわよ。でも同情で復縁しようとしないでね。あの男は結婚当初からあなたのことをまったく気遣いもしなかったわよ」


「うーん、房事は優しかったわよ」


「ばっかじゃないの。そんなことでほだされないで。私はあの男を何発も殴りたいんだからね」

キャリーは騎士科だったから強いわね。


「キャリー、心配してくれてありがとう。復縁はしないわよ。あの人だって、今更私と復縁なんて考えないわよ。嫌っていたのだから」

ケイトリンの胸の痛みが広がっていく。どれほど好きだったのか。


「ケイトリン、本当にあの男が好きだったのよ。いつも聞いている私の身になってほしいほどだったわ。あなたがその気持ちに引きずられなければいいにだけどね」


「なるほど、胸の奥底に痛みが走ることがあるのよ。あの人との赤ちゃんを育てることで心の痛みが薄らいでほしいわ。一緒に育てたかったかもしれないけど、あの時のあの人はクララさんに気持ちが向いていたから、あのまま続けていても結局領地、ケイトリン、子供すべて蔑ろにされて、寂しい思いで領地を守っていたでしょうね。私は無理だったか、即離縁を決めたわ。子供は伯爵家みんなで育てたほうが、明るく楽しく暮らせると思ったのよ。お父様は豪快だし、お母様はそんな父を抑え込む強さと明るさがある。お兄様とキャリーがいるし、弟はまあこれから絆を作っていく感じかな。このケイトリンはよく頑張ったと思うわ」


「ケイト、さすが前世が今の年齢より多く生きていたから、しっかりしているわね」


「そんなに違わないわよ。前世30歳だったから。今は20だけどね」


 キャリーはズバズバ本音で言い合える友達だ。すがすがしいほど裏がない。お兄様もキャリーのこの嘘がつけない、裏表なく本音を言う女性として好感を持っていた。いつの間にか恋人同士になっていたとは。お兄様もやるな!


 それにしてもダメンタール男爵とその娘か。お金の出どころが不鮮明な怪しい人たちだ。その金でランザフォート侯爵領の復興はすごく嫌だ。侯爵領をどうするつもりなのか心配だ。領民が今も苦労しているだろう。それなのに、あの人たちを受け入れざる負えない状況なんて。


 数日考えて、決めた!ランザフォート侯爵領の復興支援へ行ってこよう。


 ケイトリンの両親コリンズ伯爵夫妻と兄夫妻はダメンタール男爵親子が噂に拍車をかけるような話をしていることを聞き、ケイトリンの元夫であるランザフォート侯爵を哀れんだ。


「ダメンタール男爵に目をつけられるとはな。あの娘はロイド殿の容姿に夢中みたいだから、婚姻を迫っているらしいな」


「ケイトリンはこの話を知っているのか?」


「すみません、お義父様。この前伝えました。ケイトは領民のことを誰よりも心配しているので後々噂を聞いて心を痛めるより、伝えたほうがいいと判断しました。よりは戻さないと言ってましたが、こればかりはどうなるかわかりません。あの子の気持ち次第ですから」


「そうか、キャリーすまないな。あの子の気持ち次第だ。あの子が決めたことを我々は助けていこう」


家族皆、ケイトリンの今後の動向を見守っていくことにした。


 その後、ケイトリンからタウンハウスにいる父宛てに手紙が来た。


「やはり、ケイトリンはランザフォートに向かうことに決めたようだ。我々は、ダメンタールの動向を調べようではないか。男爵はここ最近、はぶりが良すぎる。きな臭いことに手を染めている可能性が高い。男爵の娘はロイド殿を好んでいるのだろうがな。ランザフォートのあの地形を使って取引に使おうとしていた可能性がある。スレイドタス公爵やティアドレイス伯爵を中心に組織する公安部も男爵の動向を調べている。向かう前にしっぽをつかみたいな。我々も影を使い、男爵周辺の捜査をしよう。公安部に協力しようではないか。さて忙しくなるぞ」


「「はい!」」





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