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第15話 クララ視点

~クララ視点~


 なぜこんなことになってしまったの。あの時、あの男に声さえかけなければこんなことにならなかった。顔の整った綺麗な男性だった。困っていそうだったので声をかけた。それから会うようになった。


 でも既婚者の貴族様だった。毎回プレゼントを持ってきてくれる気前の良い貴族様。きっと裕福な貴族なのだろう。


 傲慢な奥様のことを聞き、慰めていた。この国のルメニエール教というのは既婚者は愛人を持っても、男女関係になってはいけない、という厳しい信仰だった。それを真面目に遂行しているロイド様。


 ただ一緒にいるだけで心が満たされて良いと言ってくれる人だ。ロイド様に気持ちよく過ごしていればプレゼント、ドレス、食事や劇などに連れていってくれた。だから、ここを居心地の良い所と思ってもらおうと気配りをした。


 とうとう奥様が離縁に応じるということで、ロイド様からプロポーズされた。嬉しかった。これで私も貴族になれる。裕福になれると思った。


 私はロイド様と侯爵領に一緒に連れ立った。まぁ、田舎だけど、こちらには度々帰り、いままで通り王都にずっと住めば問題ないと思っていた。ウキウキしていた。


 ふふふっ、私が侯爵夫人よ!


 屋敷に着いて、室内に入ると、とても美しい奥様に目がいく。にこやかに傲慢さが全く見えない。どうしてこの奥様ではなくて、私?


「旦那様離縁いたしましょう。こちらの離縁状にすぐサインしてください。今後のクララ様の侯爵夫人としての教育などは、執事のルーデンスや侍女長のライナや旦那様いえ、ロイド様でできるでしょう。クララ様、今度はあなたが侯爵夫人として、愛する旦那様を支え領地を正常化してください。私のやるべきことは終わりました。あなたは旦那様に愛されているのですから、どんな困難でも乗り越えていけるでしょう。それからロイド様、今まで私の実家の後ろ盾がありましたので融資など受けてもらえましたが、これからはロイド様とクララ様の御二方の信頼で融資などを受けてもらえるように頑張ってくださいね。先の融資などはすでに返済してあるので大丈夫です。これからは御二方の時代です」


 と、にこやかに言われた。えっ、待って、目の前にある束が侯爵夫人としてやるべき仕事。融資?慰謝料?裕福ではないの?この領地。


 貴族としての所作?全く思ってもいなかった数々の出来事。貴族って豪華そうに見えるけど、色々制約があり、私たちよりも大変な仕事をしている。わかるわよ、領民の上に領主がいるという構造は。もっと優雅な生活をしているのではないの?それは裕福な貴族だけだと言われた。この領地は自然災害など数々の災害に見舞われだが、やっと奥様が正常化をはかったということだった。だから今後はロイド様と私が領民を飢えさせないようにしっかりと管理運営をしていかなければならない?え?私そんなことできないわよ。王都の少し大きな商会で働いていただけよ。


 伯爵夫人から貴族としての所作や嗜みなどを朝、朝食から夜までずっとつきっきりで習っていたが、平民の私が伯爵夫人より地位が上になるのを妬んで厳しく講義をしていたと思い、ロイド様に嘆いた。


「伯爵夫人様の抗議が厳しいのです。あの人を辞めさせてください!」


「クララ、貴族のマナーなどは、みんな小さい時からあのように躾けられたのだよ。小さい子があれに耐えているのだから、クララはすぐ侯爵夫人としてのマナーを身につけることができるよ。大丈夫、クララは優秀だからできるよ。そんなクララを見て、みんなの信頼を得ることができるよ」


 あの男はまるっきりわかってない。王都にいる時は裕福な貴族で、私のことを思い、いい男だと思っていた。この領地に来てから、ただの貧乏貴族ではないか!私がこんなに苦労しているのに味方にもなってくれない。何が侯爵夫人よ!なんで私がこんな苦労をしなければいけないの!あの侯爵夫人がやるべき仕事なんてムリよ。まだ数ページしか読めていない。災害が来たらどうするのよ!


 家族親戚からもお金を送るように手紙が来ていた。そのうち領地に移り住んできた。それも侯爵家のツケで飲み食い、宿泊をしているというじゃない。わたしの立場が余計悪くなるじゃないの。災害復旧のための書類を数ページ読んでいると、備蓄品と災害による避難所が設けてあることを知った。あの家族親戚を抑えるために、それを使うしかない。この領地で静かにしてもらわなくては。もう本当に迷惑。でもわたしが侯爵夫人になったら、もう少しお金を使えるようにしなければ。少しばかり贅沢してもいいわよね。


 それなのに、それなのに、なんであんな大きい災害が来るのよ!


 災害の支援を怠ってしまった。あの家族たちに備蓄品を渡してしまった。避難所はうちの家族が住んでいて避難所として機能しなかった。そのために領民からいっそう冷たい目で見られた。


 噂で、ルメニエールに反する行いをしていたのでは?だから厄災が起きたのではと言われるようになってしまった。ロイド様が言っていたルメニエール信仰って何?知らないけど。


 そして、今回不貞による離縁ということで、不貞行為がないか調査。何するの?未婚男女の純潔を重んじるルメニエール教。純潔で不貞行為をしていないとわかる?え?そんな!私、幼馴染と恋人同士だったから純潔ではないわよ。ど、どうすればいいの?ロイド様はルメニエール教に忠実で真面目だから不貞行為はしなかった。でも私は、どうすればいいのよ。


 ああ、バレてしまった。みんなの冷たい視線が突き刺さる。そして移民者だが、それ以降の手続きをしていないことが判明した。両親や親戚は違法移民者だった。どうして、どうしてこうなってしまったの。


 ロイド様の冷たい声と態度。


「君の男性遍歴を教会で証言して欲しい。不法移民者の君とは結婚しない。君はそんな状態で私と結婚しようとしていたのか!騙されたと思いたくはない。純粋な気持ちで私は君と一緒に居られればと思ったが、君の方は違ったのだな」


「私もあなたと一緒にいられればそれでいいと思ったわよ。でもこんな田舎の領地に来て、貧乏貴族なんて言っていなかったじゃないの!あなただって私を騙したじゃないの!私と結婚してくれれば、私はこの国ないられるのよ!結婚してくれるのでしょう!」


「君と結婚なんてしない!未婚女性が貴族と結婚するには純潔が必須だ。君は未婚なのに純潔ではない。托卵の恐れがある。そんな君とは結婚できない!したくない」


 それから家族と教会であったが、罵倒された。


「お前が、お前が貴族なんかを誑かさなければこんなことにならなかった」


「何よ、あんたたちがきちんと申請をしていればこんなことにならなかったのよ!」


 私たちは隣国に強制送還となり、もう二度とこの国から出ることができなかった。


 そうよ、あのお貴族様とは、冷たい視線のままお別れだった。領民たちも冷ややかな視線と罵倒する人もいた。離縁前の方がいい思いをしていた。だから愛していたと思っていたのだろう。


 貴族なんてくそくらえだ!もうこりごりだ。


 あの時、声さえかけなければ・・・。


 でも、私にはこの国で幼馴染が待っていてくれたのでよかったわ。幼馴染と幸せになってやるわ。あはははっ。



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