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君の「本当の自分」「パート2」

ふたりでしごとをはじめてからいままでにかかったじかんは、にじっぷんいじょうではなかった。ぼくののうみそのはんぶんはじぶんのたんとうのしごとをおわらせることにしゅうちゅうしようとしていたいっぽうで、のうみそのもうはんぶんはあのメールについてかんがえずにはいられなかった。


ぼくはちょっとかおをあげて、くぼたさんのAPAのかおにむけてみた。おどろいたことに、かれはぼくをみつめていた。


「く、くぼたさん、なにかわるいことでも?」


「え?な、なにもおきていないよ!ただ…きみがなんふんもノートパソコンのがめんをみつめたまま、なにもかいていないのをふしぎにおもっていただけなんだ…」


「わっ!ご、ごめんね!なんだかちょっとかんがえごとをしてぼんやりしていたみたいで…!きにしないで!これからはしゅうちゅうしてじぶんのたんとうのしごとをつづけるから!」


ふたたびふたりともだまってしまった。そのときをりようして、ぼくはかんがえてみた。「くぼたさんにためしてみたほうがいいのだろうか?」たしかに、まえにもなんどかさそったことがあるけれど、それでも「たまきさんにきいたときみたいに、もういちどきいたらおこられるかな?」


「くぼたさん、ところで…このじゅぎょうがおわったあとのにじかんめのやすみに、すこしじかんあるかな?できれば、ふたりでちょっとだけでもはなせたらうれしいんだ…。いつもクラスのみんなにきいていることなんだけどさ…。お、 おひるじかんのほうがいいかな?」


「もうあんたにはうんざりだよ」。たまきさんにいわれたそのことばをふと思いだし、ぼくはたちまちどきまぎしてしまった。それでも、ぼくははなしつづけた。


「きみをさそったことがあるのはじぶんでもよくわかってるし、きっとまたおなじことばかりきいてうんざりしているかもしれない…。もし、このペアのしごとがおわったあと、もうぼくにこえをかけてほしくないなら、それはちゃんとりかいするから…」


みじかいしずけさのあと、くぼたさんはこたえた。


「わたし、ずっとふしぎにおもっていたんだけど…どうしてきみはそんなことをするの?どうしてわざわざぼくたちひとりひとりにこえをかけてくるの?どうして、ことわられてもまたなんどもさそいにくるの?いったい、なにがそんなにきみをつきうごかしているの?」


くぼたさんのことばはぼくをあぜんとさせた。クラスのだれかに、こんなことをきかれたのははじめてだったから。


「なんだかへんだね…。ここでだれかにそんなことをきかれるのははじめてだ。でも、ぼくにとって、それをせつめいするのはそんなにむずかしいことじゃないんだ。」


ぼくはみぎほほをかきながらくぼたさんにそうこたえ、つづけてせつめいした。


「ぼくらのがくせいせいかつって、なんだかたいくつだとおもわないか…?まいあさおきて、APAにつないでがっこうにしゅっせきする。じゅぎょうちゅうは、ただせんせいのせつめいをきいて、そのあとほとんどいつもひとりでしなきゃいけないしゅくだいをやるだけ。いちにちのじゅぎょうがぜんぶおわると、APAからログアウトして、またおなじことをくりかえす。がっこうにいるあいだ、だれもだれかとはなしをしようともしない。おなじきょうしつをきょうゆうしていても、みんなおたがいにきょうみをもっていないんだ。」


それから、かのじょがぼくのはなしをきいてどんなはんのうをするか、すこしふあんなきもちをいだきながらも、ぼくはすこしほほえんでみせた。


「ぼくがしたいのは、たくさんのひととはなして、たくさんのともだちをつくって、いっしょにすてきなきおくをつくることだけなんだ。それが、このたいくつながくせいせいかつをほんとうにかえるたったひとつのほうほうだとおもうんだ。そうおもわないか?」


くぼたさんのAPAはだまったまま、ぼくのかおをじっとみつめていた。


「たぶん、いまはきみがどうしてまいにちそんなふうにふるまうのか、すこしわかるようなきがする…。ほんとうにやさしいひとなんだね、いちかわくん。それがわかって、なんだかほっとしたよ。」


そのとき、ぼくのからだはかたまってしまった。どういったらいいのかうまくせつめいできなかったけど、くぼたさんのAPAのかおにはとくにひょうじょうはなかったのに、なぜかくぼたさんがむこうがわでほほえんでいるようなかんじがしたんだ。


「きみのともだちとよばれるひとになりたかったけれど、わたしはそのひとにはなれないの…」


「え?」


「ペアのしごとは、つづけるから。」


「ま、まってよ!」


「ビープ」


じゅぎょうのあいだ、くぼたさんはいっさいAPAにつなぐことはなかった。ペアのしごとのていしゅつまであとじゅっぷんしかないとき、かのじょはがっこうのないぶチャットをつうじてじぶんのぶぶんをおくってきた。


そのあとは、ぼくのあたまのなかはごちゃごちゃだった。まだあのメールのことがきになっていたし、くわえて、くぼたさんがAPAからログアウトするまえにいったことばのいみもわからずじまいだった。

ぼくはながいためいきをついた。


「とりあえず、いまはあのメールにしゅうちゅうしたほうがよさそうだ。」


そのご、とうじつのじゅぎょうじかんがおわるまで、めだってたいしたことはおこらなかった。

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