巫女ノ婚姻
ひやりと突き抜けるような寒空のもと
りんと張り詰め凍った湖面
そのまんなかに少女がひとり
しんと鎮まったふゆのくうきに
ふわり、ふわりと色香がただよう
りんとひとつ鈴音をひびかせ
少女の世界は遠のいてゆく
そしてひゅるりと彼が舞い降りた
なりひびく鈴の音のもと
少女の舞はつづいてゆく
彼のけだるげな視線にさらされ
少女の舞はすすんでゆく
見届けのむらびとすら意識のそとへ
いつしか舞ははげしくなり
少女は彼に思いを馳せる
いつか夢で救われた
わたしだけのいとしきかみさま
どうかわたしのじごくを終わらせておくれ
ひとのことわりでつくられた修行のひびを
いつかゆめでなんどもみた
かれのうでのなかで
ばさりと少女はつばさをひろげる
それをみせつけ誘うように
夫に甘えるためだけの仕草
ひとでなくなったものの証
あつい、あつい彼からの視線
新しく増えた己のからだに
じわり、じわりとにじんでゆく視線
少女はかいらくにぞわりと
からだをあからめた
舞の終わりは彼しか見れぬ
彼のほかには見せてはならぬ
つばさをふりみだしおどるなんて
なんてはしたない
それでも少女はまいつづける
にじんだ汗をそのままに
羞恥で顔をあからめながら
かみさまの視線をかんじながら
嗚呼どうか、どうかわたしのかみさま
わたしのすべてをうけとっておくれ
そしてまいはしずかになってゆき
しまいに少女はかおをつばさでかくす
しゅるりとちかづいたかみさまは
ふるふるとわななくそのつばさに
そっとくちづけを落とし
了承の意をしめし
そしていちじんのかぜがふぶいて
このはなしはそれでおしまい
起立!きをつけ!礼!
ごちそうさまでした!!!