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日本国は手を抜けない  作者: 大鏡路地
軍備再編
13/24

日本国は手を抜けない(13)

 第二次インドシナ戦争、またはベトナム戦争と呼ばれるそれが終結すると同時に、日本国は大規模な軍備再編に着手した。

 と言うのも、如何せん海上自衛隊の水上打撃部隊の主力である戦艦「やまと」「むさし」「しなの」は、絶対的な大戦艦だとは言っても戦時急造艦の類いであって、就役から二〇年余りが経過した今となっては急速な老朽化の進行は否めず、特に機関部はしばしば蒸気漏れなどの不具合を頻発していた。「ながと」に至っては艦齢四〇を超えており、幾ら物もちが良いとは言えども流石に限界だった。

 加えて、現在の海上自衛隊の空母機動部隊を構成する、米国から供与された元エセックス級四隻も安心と安定の米国製(しかも大規模改装済み)とは言え戦時急造艦であり、艦齢三〇を超える頃には機関の耐用年数を迎える見込みであって、以後は指数関数的に維持コストとドック入りの日数が増加することは明白である。

 従って、これら超大型艦艇八隻の代艦建造が近々に必要となるのだが、そして高度経済成長が続き、更に第二次世界大戦には負けたものの、その後の三度の戦争ではいずれも活躍し国民からの信頼を取り戻した、帝國海軍改め海上自衛隊の戦力を整備することに民意も否やは無かったし、今の日本国の国力であれば、その(同時)建造は十分に可能であった。

 故に昭和四十一年(西暦一九六六年)の第三次防衛力整備計画に於いて策定された、これらの艦艇の代艦は、概ね以下の様な規格が定められた。


・戦艦と空母で概ね同一設計の船体を採用する。

・船体は水線部に於いて全長二百六十メートル、全幅三十八メートル以内に収めるものとする。

・戦艦は四十五口径四十六センチ砲三連装三基九門とし、防御は枢要部に於いて米国製五〇口径十六インチ砲に耐えるものとする。また対空防御については米国製ターター誘導弾を装備するものとする。

・空母は飛行甲板長二百八十一メートル、全幅七〇メートル以内とし、着艦帯は重量四〇トンの機体の着艦に対応する強度を与える。エレベーターは全て左右の舷側に計三基設け、五〇トンの耐荷重量を与える。防御は枢要部を格納甲板に於いて一トン爆弾の直撃を食い止められれば良いものとする。


 要するに大和型から装甲をある程度削減し、また艦種に応じてその配置を変えた同一規格の船体を使用して戦艦と空母を造る、と言ったに等しい。

 そしてこの規模の艦を、翌年から毎年一隻ずつ、戦艦と空母を交互に建造し、建造開始から数えて三年半から四年程度で戦力化し旧式艦を淘汰し、建造技術維持の為、二〇〜二十五年程度の運用後に順次後継艦に譲っていくという計画だった。

 ハッキリ言って途轍もなく贅沢な計画である。特に艦齢二〇〜二十五年程度で退役という辺りが。式年遷宮かよ。

 それは兎も角として、戦艦に対空誘導弾を載せるだなんて、主砲射撃で誘導弾のアンテナなり発射機を爆砕しそう……と思ったそこの貴方。その懸念は勿論、米海軍もキッチリ指摘しているので安心されたい。

 それに対する自衛隊の回答は、


「小さいから壊れるんでしょ?

 発射機が露出してるから壊れるんでしょ?

 逆に考えれば良い……レーダーが大きければ、発射機が装甲の下にあれば良いんだ、と」


 そういう問題ではないと思われるのだが、彼らは至って真面目に兵部省防衛装備庁が開発したとあるシステム二つを示したのである。

 亀甲状の防爆カバーに覆われた、地上配備用の巨大な固定面フェイズド・アレイ・レーダー。

 そして後にVLSと略される、装甲カバーの下にミサイル弾庫を持つ垂直発射システムの実用品。

 更に示された新型戦艦の設計図上では、主砲発砲の爆風を避ける様に、高い艦橋の上に装備されたイルミネーター群。

 いずれも大味ではあったが、先進水上ミサイル・システム(ASMS)、後のイージス・システムの一部として開発中のそれが目指しているものの、ほぼ完成形がそこにあったのである。

 米海軍当局者は「良心的」な利用料を払って、それらの利用権を取得。ASMSに反映して小型化・分散ネットワーク化を推し進め、イージス・システムとして結実させ、逆に海上自衛隊はターター・システムの製造権を取得してソリッド・ステート化し、独自開発した対空(対弾道弾)大型レーダーと連接させターターDとして結実させるのであるが、それはまた後の時代の話である。

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