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10.妹

しおらしい亮ちゃんの姿も、可愛いです


屋敷はまだ静まり返っていた。ガレージでもう一度熱いキスを交わし、2人は父と妹を起こさぬように各自の部屋へ行き、服を着替えた。


「お早う、鸞。体、大丈夫か」

「大丈夫、むしろ、幸せ……」

 洗面台で髪を整えていると、いつものように鸞が背中に抱きつき、脇から顔をのぞかせた。鏡に映るその顔には、潜入の疲れだけでなく情事の気怠さも色濃く刻まれていた。目尻に朱が差しているのが何とも艶かしいが、目の下のクマはむしろ痛々しい。

「僕達、やっと繋がれたんだね」

「ああ……私に意気地がなかったばかりに、遠回りをしてしまったな」

「それは言わない約束。ああ、兄上の手を思い出すと……恥ずかしい」

 後ろ手に回してきた腕で腰を引き寄せられ、鸞はすっぽりと孔明の腕の中に収まった。ああ、夢にまで見たこの構図だと頬を赤らめる鸞が孔明を見上げるのを待ったように、カプッと唇を食われてしまった。

「んん……」

 腰砕けになりそうになりながら応じていると、負のオーラを間近に感じ、鸞は咄嗟に孔明から離れた。

 横に、ゾンビのように上体をだらりと下げた亮子が立っていたのである。

「げっ……」

 一応、その姿勢では見えていなかっただろうなぁ、と都合のいい解釈をして、何もなかったように孔明は鏡に向き直り、鸞も作り笑顔をこれでもかと拵えた。

「亮ちゃん、おはよ」

「……兄貴、ごめん。学校、退学になるかも。兄貴も、おいらのせいで、もしかしたら……」

「ん?」

 亮子が兄貴と呼ぶのは孔明だけである。ということは、と鸞が孔明と顔を見合わせるが、孔明自身に思い当たる節はない。

「ちゃんと説明しなさい、亮子」

「何があったの、亮ちゃん」

 亮子は制服のポケットからカプセルを二つ取り出し、鸞に見せた。

 それはまさに昨日、潜入したクラブで押収したあのドラッグカプセルである。

「これって……あんた、これどこで」

 亮子は、先夜の佑月とのクラブ行きの経緯を正直に話した。

 

 あの後は結局、クラブの裏口で志信と別れた後、亮子と佑月はしっかり警官に補導されてしまったのである。

 玄徳が呼び出され、今の今まで事情を聞かれていたということであった。

「じゃ、今帰ってきたってこと? 」

「……父上は、その足で学校関係者と話をするって、六本木署で別れた」

 鸞はファスナー付きのビニール袋をキッチンから持ってきて、亮子が持っていたカプセルをそっと詰めた。

「亮子、おまえは少し休んでいなさい。私もすぐに学校に行ってくる。おまえは何も悪いことをしたわけじゃない、友を心配して付いて行っただけだろう。何も心配しなくていいから」

「そうだよ、今、何か食べるもの作ってあげるからね」

 亮子が鸞の胸に飛び込んで泣いた。

「ごめん、ごめんなさい……いつも、ごめんなさい……父上と鸞の立場にも、迷惑かけたらどうしよう」

「大丈夫、大丈夫だから」

 孔明と目を合わせ、鸞は亮子の髪を撫でた。

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