汰介の過去6 <中学生編4>
目覚めたのは、家の布団の上だった。
全て何か悪い夢だったのだろう。夢の中とはいえバカなことをしてしまったものだ。
時間を見ようと横に目をやると、そこには時計ではなく、水色の毛の少年が眠っていた。
「は!?」
思わず大声を上げてしまった。久しぶりに出した声だから喉が痛い。
咳き込んだ声のせいか、その少年———「フロウ」は目を覚ました。
「気が付いたかい?いろいろ聞きたいことが山積みなんだけど」
フロウは微笑んだ。優しい表情をしていたが、目だけが笑っていない。
「まず、このロープ。天井からぶら下げて、何をするつもりだった?」
「…」
「じゃあ、質問を変えよう。『どうしてこんなバカなことを?』」
「…」
「まさか理由もなく命を断とうとしたなんて言わないよね?」
「…」
「目なんか閉じて寝てるふりしたって誤魔化されないよ。自分の言葉で話してくれよ。」
「…」
「それともあれか?ボクすらも学校の奴らと同じってことか?」
「…ッ」
「君はボクのことも嫌いになっちゃったのか」
「…ッそんなわけない!」
「…じゃあ、なぜ答えない?」
「自分が情けないからだよ…たかが他人の言葉でここまで病んで…」
「たかがとは言うけど。言葉なんて一番強い武器さ。大丈夫、ボクは君を笑わない。ゆっくりでいいから、話して。」
昔からそうだ。フロウは一度聞こうとしたことは完全に聞くまで絶対引き下がらない。
「実は———
正直、もう消えてしまったらみんな幸せになるんじゃないかと思ってさ。」
「というと?」
「そのままの意味だよ。みんなに嫌われてる。学校の人間にも、親にも。」
僕の両親は、僕が引き篭もり出した日に喧嘩になって、そこから口も聞いていない。食事は持ってきてくれるが、あきらかな残飯ばかり。
「その『皆』に僕は含まれてないんだよね?」
「え?」
「…少し外すよ」
彼は突然部屋から出た。