汰介の過去4 <中学生編2>
その日の放課後。
僕は保健室からまっすぐ下駄箱へと向かった。
ばったりと会った同級生からの視線は、今までとは打って変わってとても冷たいものだった。
気まずくて話しかけられなかった。視線はつま先に落として、なるべく目を合わせないように歩いた。
途中で聞こえた言葉で、僕はあの冷たい視線の全貌を知ることになる。
結論から言うと、担任のせいだった。
彼女は「僕が”無理をして友達と付き合っている”」というニュアンスの伝え方をしたらしく、同級生たちは皆「騙されていた」と感じたらしい。
しかし、僕はそれを聞いてもなお知らないふりをしていた。どれだけ指差してひそひそと聴こえても。
ずっと下を向いて歩いていると、必ず起こりうること。僕は頭に何かが当たるのを感じた。
目線を上げると、そこにはかつて一緒に笑い合った同級生がいた。
もっとも、今はこちらを恨んだように睨みつけている。
無視して通り過ぎようとすると、彼が口を開いた。
「なぁ。」
僕が足を止めると、彼はこちらに顔を向けると、
「お前もう無理しなくていいよ。」
ニヤニヤしながらそう言った。
「無理してみんなに会うぐらいならもう学校なんかこなきゃいいじゃん」
「正直目障りなんだよね、おまえいっつもうるさいし。この際だから言うけどお前嫌われまくってんよw」
——え。
今になって考えればこんなのはいじめっ子の典型例なのだが、当時の僕はこれを鵜呑みにした。
そこから先、その日のことはまた覚えていない。晩御飯の時に流れたニュースで少年が二人重傷で見つかったと聞いたぐらいだ。